第35話 マシュマロさんも生きてるんですよね①
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
〝神の兵器〟を欲しているようだが、その目的は一体……?
◆アルミラージ 自称十五歳
戒めの使徒。創世五位〝動物の創造主〟。しゃべる珍獣ウサギでとにかくエロい。通称あーちゃん。
◆九条 玲奈 十五歳
莉奈の妹。旅先のドイツから急遽帰国した。
◆セバスチャン 六十歳
九条家の執事。とりあえず強い。
◆ニール・サンクトゥス 目測二十代
戒めの使徒。創世七位〝??の創造主〟。まだ謎が多い。
◆ナムタル
〝冥界クルヌギア〟の首相。
【名前のみ判明している戒めの使徒】
◆レックス・ウォラーレ 創世二位〝空の創造主〟
◆クラルス・マグノリア 創世三位〝自然の創造主〟
かれんと輝夜が聞き込みを始めて四時間が経過した頃──カミエシ地下大聖堂のある三十階から更に地下へと下り、現在二人は地下四十階まで到達していた。
痴情の楽園は大部分が商業施設で占められており、居住区は少ない。
いくら発展しているとは言え、やはり地下に住居を構えようとは考えないものだ。
しかし、それでも居住区が存在するのは何故か──その理由は地下に埋もれている遺跡にある。ここは考古学研究者にとって天国と言える場所だった。
「いやー、思ってたよりもたくさん情報集まったね~」
「うん! 遺跡大好きさんがいっぱいだったね」
ベンチに腰かけて休憩しながら、二人は集めた情報を整理していた。
「この中で一番興味深いのはコレかな? イタリア考古学協会で聞いたやつ」
かれんがタブレットの画面を指差した。
そこには〝ラメド〟と書かれている。
「ずっと昔からある考古学研究の組織で、世界中に拠点があるらしくて? 閉鎖的で何考えてるか分かんなくて、暴力事件に関与してるかも? ──ロクでもない奴らだねぇまったく!」
「かぐやが裁いてあげる!」
「だね~、見つけたら裁いちゃえ!」
「でも全部噂なんだね」
「実態が中々掴めないのかな? じゃーあ、もう少し聞いて回ろっか! そろそろ行ける?」
「あ、ちょっと待ってかれん! あと一個だけマシュマロを……」
だがその時──焦っていたのか、輝夜の手からマシュマロが落っこちて前方へ勢いよく転がっていった。
慌てて拾おうとするも間に合わず、地面に手をついて愕然とする輝夜。
「か、かぐやのマシュマロさん……が……‼」
すると、誰かが足元に転がってきたマシュマロを拾って近づいてきた。
「これは大変じゃ、かわいい輝夜姫が泣きそうになっておるではないか」
「……ルーナ⁉」
突然の再会に、かれんが驚きながらも喜びの声を上げた。
「元気そうじゃな──かれん、輝夜」
「ルーナさんだ! かぐやは元気だよ? 拾ってくれてありがとう!」
輝夜に手のひらを差し出されたルーナは少し戸惑ったように、「まさか食べるのか?」と尋ねる。
「ううん、あとで供養してあげるの」
どうやらマシュマロさんには命があるらしい。
「そうか、相変わらず輝夜は優しい子じゃな。ところでお主らがローマを訪れるとは珍しいが──まさか観光に来たわけではあるまい?」
「んー、簡単に言うとねぇ、ちょっと探してる物があるんだ~」
「ほう? いったい何を探しておるのだ?」
かれんは辺りを警戒してから、そっとルーナに耳打ちする。
「グラヴィクスって知ってる?」
ほんの一瞬だが、それを耳にしたルーナの表情が固まった。
そして心の内を探るように、怪訝な面持ちでかれんに訊きかえす。
「それは……あのグラヴィクスの事を言っておるのか? 妾の記憶では破壊されたと聞いていたが」
「なんかねー破壊されたっていうのがウソだったみたい」
(──旧世界の兵器か。偶然にしては出来過ぎではないかのぉ)
ルーナは少し考え込んでから、二人に提案を持ち掛けた。
「実に興味深い話じゃな。詳しく聞かせてはくれぬか?」
「もちろんだよ! 久しぶりに会ったんだからぁ、ルーナの話も色々聞かせてね!」
「妾の話など聞いても面白くはないぞ?」
ルーナと話すかれんからは、悠斗達には見せる事のない無邪気さが感じられる。
精神体となった時の年齢が近いのもあり、ルーナは女友達と会話しているような感覚でいられる数少ない人物だ。
「さ、輝夜にはローマで評判のマシュマロでも紹介しよう」
「ローマのマシュマロさん⁉ ルーナありがとう!」
隠された思惑に気が付かぬまま、かれん達は地下街へと消えていった。




