第34話 旅立ちはいつも突然ですよね③
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆アルミラージ 自称十五歳
戒めの使徒。創世五位〝動物の創造主〟。しゃべる珍獣ウサギでとにかくエロい。通称あーちゃん。
◆九条 玲奈 十五歳
莉奈の妹。旅先のドイツから急遽帰国した。
◆セバスチャン 六十歳
九条家の執事。とりあえず強い。
◆ニール・サンクトゥス 目測二十代
戒めの使徒。創世七位〝??の創造主〟。まだ謎が多い。
◆ナムタル
〝冥界クルヌギア〟の首相。
【名前のみ判明している戒めの使徒】
◆レックス・ウォラーレ 創世二位〝空の創造主〟
◆クラルス・マグノリア 創世三位〝自然の創造主〟
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
西暦二〇七〇年、イタリア。
ここ、ローマのように多くの歴史的建造物を残す都市は、街の景観を重要視する。その為、都市は地上ではなく地下へ向けて発展していった。地上ではコロッセオやパンテオン神殿といった遺跡が当時の栄華を今に伝え、人々は地下で繁栄を謳歌する。
地下開発が始まった当初、計画が頓挫することは決して少なくなかった。
ローマの大地を掘り進めるとすぐ何かしらの遺跡にぶち当たるので、計画変更や中止を余儀なくされてしまう。
そういった経緯で、浅い層に造られた地下都市は入り組んだダンジョンのようになってしまった。直線でいいはずの通路が遺跡を避けてコの字型に曲がっていたり、進んだ先が何もない行き止まりだったりと散々な出来である。それなりの深さまで掘ってようやく計画通り開発が進むようになったのだ。
「すげえええええ‼」
悠斗が思わず叫び声をあげた。水月と莉奈も二人して「ほぇー」と声を漏らしながら辺りを見回している。
ここはローマの地下都市──通称〝痴情の楽園〟の地下三十階。これは誤字でもなんでもなく、イタリアの観光ガイドにも〝痴情〟と書かれている。
この呼称は、地下に落ちた〝地上の楽園〟から始まり、落ちた楽園、堕ちた楽園、痴情によって堕ちた楽園、そして一周回って意味違いの〝痴情の楽園〟で定着した。
実際に痴情がもつれまくっているかはさておき、悠斗達が感嘆しているのは地下を歩く人々と、今いる場所に対してだ。
「テレビとかネットで見ただけで実感なかったけど、ホントにすごい人気あんのな」
一体何が人気なのか。
それはズバリ──日本のオタクコンテンツ。
二〇七〇年ともなれば、八〇歳のお年寄りでさえ若い頃からオタク文化が大好きな世代だ。地下都市では多くの若者がブレザーやセーラー服、学ランを着て出歩き、私服だと逆に浮いてしまう。
だから現役高校生の悠斗達三人は、半信半疑で高校の制服を着てローマを訪れた。ちなみに水月は莉奈と同じ制服を入手して着用している。
そしてもう一つ、悠斗達を驚かせたのは彼らが今いる場所、新しく爆誕した観光名所だ。その名も〝カミエシ地下大聖堂〟──ふざけた名だが本気である。
遥か頭上にそびえる天井に、堂々と描かれた神絵師たちのイラスト。それは正にルネサンスを代表する芸術作品の一つ──ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画と並べても遜色ない素晴らしさだ。
こうなると日本語もかなり浸透していて、『トウトイ!』とか『マジテンシ!』といった簡単な単語が地下大聖堂の中で響き渡っている。その勢いで日本語はついに世界標準語となってしまっていた。
「よーし! じゃあじゃあ~早速調査を始めるよーっ。観光に来たんじゃないんだからね~!」
かれんが観光に来たとしか思えないテンションで声を張り上げた。
「みんな作戦は憶えてるかなー? ハイ! 水月ちゃん!」
「えっと、地下で新たに発見された遺跡がないか訊きまくる」
「そのとーり!」
ハイテンションなかれんと会話しているせいか、水月のテンションが低いように見えてしまう。
「じゃーあ、二手に分かれて行動しよっか! 私と輝夜の二人、それと悠斗達三人でいくよぉ~」
組み分けが決まり、グラヴィクスを発見すべくそれぞれ逆方向へと歩き出した。
そして少し離れた物陰からその様子を伺う者が一人。
戒めの使徒、ルーナ・クレアーレがそこにいた。
「占いの通りじゃ……変わっておらんのぉ、かれん──」




