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奈落の月  作者: れのぺぱ
第二章 痴情の楽園
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第23話 セバスチャン以上セバスチャン以下ですね①

【主な登場人物】

逢沖あいず 悠斗ゆうと 17歳

本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。


七瀬ななせ 水月みずき 17歳

人工魔眼持ちの少女。『天理逆行』引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。


九条くじょう 莉奈りな 17歳

悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。『秘跡の魔眼』の持ち主。


十文字じゅうもんじ かれん 自称20歳

戒めの使徒。創世(そうせい)六位『人間の創造主』。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。


きらきら輝夜かぐや 自称14歳

戒めの使徒。創世一位『光の創造主』。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??


アルミラージ(Almiraj) 自称15歳

戒めの使徒。創世五位『動物の創造主』。しゃべる珍獣ウサギでとにかくエロい。通称あーちゃん。


ニール(Nil)サンクトゥス(Sanctus) 目測20代

戒めの使徒。創世七位『??の創造主』。まだ謎が多い。


◆ナムタル

『冥界クルヌギア』の首相。




【名前のみ判明している戒めの使徒】

レックス(Rex)ウォラーレ(Volare) 創世(そうせい)二位『(そら)の創造主』

クラルス(Carus)マグノリア(Magnolia) 創世三位『自然の創造主』

ルーナ(Luna)クレアーレ(Creare) 創世四位『天体の創造主』

 

 彼は執事のセバスチャン──それ以上でもそれ以下でもない。


 セバスチャンの中のセバスチャン、それがセバスチャンである。


 セバスチャンだから執事なのか、執事だからセバスチャンなのか、それを知る者はいない。というか本人も知らない。



「わたくし、実は幼少の頃より冒険家になるのが夢でした」


 そう語るのは、九条家に三十年仕える執事のセバスチャン。今年で六十歳だ。


「しかし、どう行動しても抑止力によって執事になる道しか進めなかったのです」


「抑止力?」


 首を(かし)げながらも真剣に耳を(かたむ)ける水月(みずき)


「はい。初めて抑止力に干渉されたのは四歳の時でした。隣町の公園まで冒険に行くと、先に遊んでいた子供達の『めいどちょーばーさすしつじごっこ』に巻き込まれて執事に任命されたのです」


「おぉー、楽しそう!」


「ええ、その時は大変夢中になって遊びました。ですがそれ以来、わたくしは(ことごと)く抑止力に阻まれるようになったのです」


「例えば?」


「ある時は──迷い込んだ森で洋館の主人に助けられ、その館で一年間執事をしたり。またある時は! 海で溺れている子供を助けたら、その子がどこかの王室のお姫様で執事兼ボディーガードとして雇われたり……‼」


 口調が次第に熱を帯びてきた。


 自分でも気づいたようで、セバスチャンは一度咳ばらいをする。


「若い頃『私はどうしてセバスチャンなのだ…‼』と本気で悩みました。ですが、今は執事である事と自分の名前に誇りを持っています」


「冒険家は? もう諦めちゃったの?」


「はい、と言いたいところですが……」


 セバスチャンが何か言いかけたタイミングで、部屋のドアが開き悠斗(ゆうと)莉奈(りな)が入ってきた。


「お待たせ、水月」


「セバスチャン、ありがとう。手当してくれて助かったよ」


「いえいえ、お安い御用です。お体の具合はもうよろしいのですか?」


「まだ体中痛いけど、これ以上世話になるのも悪いし」




 二日前の夜、ナムタルとニールの襲撃を逃れた悠斗達は、莉奈の家へと向かった。輝夜(かぐや)を含め誰も治療の心得がなく、セバスチャンを頼る事にしたのだ。


 ニールと戦っていたかれんの方は、夜が明け切った頃ようやく皆と合流し、九条家の一室を借りて翌朝まで眠り続けた。


 今回の件でナムタルとニールについて幾つか判明した事がある。それを共有する為、先程までここに全員で集まり話し合っていた──



     ◆



「──では最後にグラヴィクスの事を話しておこうか。グラヴィクスは旧世界で開発された兵器だ。それが引き起こした事件はあまりにも悲惨でね……すぐに破壊された事が世界に向けて報じられた。だが実際は破壊されず、今もどこかに眠っているらしい」


「その悲惨な事件て一体……?」


 莉奈が固唾(かたず)を呑んで続きを促した。


「私も詳しくは知らないが……グラヴィクスを中心に、半径約二千キロメートル内の全てが跡形もなく潰れたんだ」


「嘘だろ……」


 悠斗はスケールの大きさをそれなりに理解したようだが、水月は明らかにピンときていない様子で首を傾げている。


「半径約二千キロメートルではわかりづらいな。もし直径四千キロメートルの円なら……現在のオーストラリア大陸を軽く覆う事ができる。それぐらいの規模だよ」


 それを聞いた水月が目を見開いて姿勢を正した。


「地上を埋め尽くしていた街並みも、植物も動物も人間も……十七もの国を跨いで全て消えてしまった。残ったのは瓦礫と血肉の海、そしてその中心に無傷で佇むグラヴィクス──それだけだ」




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