第12話 見えないならいっそ脱いどきますね③
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 17歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 17歳
人工魔眼持ちの少女。無意識に『天理逆行』引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 17歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派でツンデレ。面倒見がよく悠斗と水月をいつも気にかけている。魔眼持ちのようだが……?
◆十文字 かれん 自称20歳
戒めの使徒。創世六位『人間の創造主』。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた。立場によって性格を切り替えている。
◆煌々 輝夜 自称14歳
戒めの使徒。創世一位『光の創造主』。かれんと一緒に暮らしている。恥ずかしがりやだが戦うと結構強い。
◆アルミラージ 自称15歳
戒めの使徒。創世五位『動物の創造主』。通称「あーちゃん」。しゃべる珍獣ウサギ。基本役に立たない。そしてエロい。
◆ナムタル
モヤモヤを部下に持つ男。人間ではなさそうだが、素性や目的は不明。
【名前のみ判明している戒めの使徒】
◆レックス・ウォラーレ 創世二位『空の創造主』
◆クラルス・マグノリア 創世三位『自然の創造主』
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位『天体の創造主』
◆ニール・サンクトゥス 創世七位『??の創造主』
「なるほどなるほど~、魔力子でできた体だと普通の人には見えないから、見えるようにしてあげたいと」
「かれんと二人だと出来そうにないからね、あーちゃんにも手伝って欲しいの」
「あ~それぐらいならボク一人でもできるよ?」
「ホントか⁉」
「でもなー、さっきいっぱい走ったから疲れちゃったし……」
「そこを何とか頼むよ!」
悠斗が手を合わせて何度も頼み込むが、あーちゃんは一向に聞き入れようとしない。
それを見かねて、腕を組んだ莉奈がわざとらしく独り言をつぶやく。
「残念だなぁ~どうしようかなぁ~。その子今……『服』、着てないのよねぇ~チラッ」
「行く‼」
(え、ちょろ……おれあんだけ頼んだのに⁉)
真剣に頼み込んだのがバカみたいに思えたが、とりあえずやる気を出したあーちゃんを連れ、一行は兎神神社を後にした。
◇
「みんなおかえり!」
よっぽど寂しかったのか、悠斗が玄関のドアを開けた途端に水月が出迎えてくれた。
「ごめんな、ちょっと時間かかっちまった」
「ううん、ところであーちゃんは?」
「はい! あーちゃんだよ!」
輝夜があーちゃんを両手で持ち上げて水月の目の前に近づけた。
「……このウサギが?」
「うん!」
「この……わなわな震えてるウサギが⁉」
水月を見た途端、あーちゃんは信じられないものを目の当たりにしたと言わんばかりに体を震わせていた。
「服……着て……る……⁉ 騙された……」
「しゃべった⁉」
「騙してなんかないわよ? ほら、水月は服じゃなくてベッドシーツ巻いてるだけなんだから」
悠斗はあーちゃんの気持ちも分からなくはなかったが、そんな事よりも本来の目的を達成しなければならない。
「じゃあ頼んでいいか? あーちゃん」
「しょうがないなぁ~、でも成功したら……」
あーちゃんが水月を見て目を光らせた。
「その胸で抱かれてあげますね~ッ‼」
「こいつ……言うと思ったよ……」
「──いいよ」
「「いいの⁉」」
悠斗とあーちゃんが同時に水月の顔を覗き込んだ。
あーちゃんを見る水月の瞳からは哀れみが感じられる。
「あーちゃんはこんな事ばっか言ってるやつなんだぞ?」
「今日はウサギ鍋ができるね♪ だから──その前にいい夢、見させてあげる」
「おお……ふ。いいだろう、その胸の中で死ねるならボクは本望だ……‼」
「欲望に命がけだな」
「で、一体どうやるんだ?」
「やり方は簡単だよ。ボクと水月が手を繋ぐだけでいい」
あーちゃんは何か準備するわけでもなく、水月に手を握ってもらい呪文を唱え始めた。
「あやしきていをもつひとよ──われは汝にほんのていを与ふ」
「何て言ってるんだ?」
それは古語のようで、悠斗には意味が分からなかった。
すると輝夜がこっそり耳打ちをする。
「不思議な体を持つ人よ──私はあなたに本物の体を与える……かな」
あーちゃんから浮かび上がる青い光が、手を伝って水月の全身を包み込んでいく。
「はい、終わったよ。どお?」
「────」
見える見えないの違いで言えば、元々見えている悠斗達には何も変わらない。
だが、どこか儚さを漂わせていた水月に明らかな存在感が宿った。
「ありがとう……あーちゃん」
水月自身も身体の変化を実感できたのか、その感覚にしばらく浸っているようだ。
「戒めの使途って……こんなに性格変わる人ばっかりなの……?」
兎神神社でさんざん追いかけまわされた莉奈が、ため息まじりに言葉を漏らした。
「まあね~、ボクみたいに長く真面目に生きてると、疲れちゃうんだよ」
「いや、お前はめちゃくちゃ人生楽しそうだけどな?」
「どこかで聞いたようなセリフね」
「想えば永かった……もう思い残す事は何もない──」
急にあーちゃんが感傷に浸り始めた。
「では約束通りその胸で……ってアレ?」
輝夜がひょいっとあーちゃんを抱きかかえて玄関へ向かう。
「じゃあみんなまたねーっ!」
「待って! まだご褒美が!」
「輝夜ちゃん、あーちゃん、ありがとね~‼」
輝夜とじたばたするあーちゃんを、水月は大手を振って見送った。
◇
翌日の夕方、悠斗だけが家に帰ってきた。
「あれ? 莉奈は一緒じゃないの?」
「ああ、自分の家で用事済ませてからこっち来るって言ってたぞ」
「そっか……ちゃんとした体になったから皆でお散歩したかったんだけどなぁ……」
「んじゃ、莉奈には用事済んだら合流できるよう連絡入れとくから、飯食ったら先に散歩行くか?」
「ん~莉奈に悪い気もするけど……」
「莉奈もそれぐらいの事気にしたりする奴じゃないから」
「じゃあ、行こっか!」
水月は嬉しそうに笑って夕食の準備を始めた。
◆
「あぁ……そこにいたかぁ……七瀬水月────」




