第10話 見えないならいっそ脱いどきますね①
【登場人物紹介】
◆逢沖 悠斗 17歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。妄想力には自信アリ。
◆七瀬 水月 17歳
人工魔眼持ちの少女。無意識に魔眼で『天理逆行』引き起こし、2070年の世界を再構築した。その後悠斗に助けられ、今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 17歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派でツンデレ。面倒見がよく悠斗と水月をいつも気にかけている。魔眼持ちのようだが……?
◆十文字 かれん 自称20歳
戒めの使徒。創世六位『人間の創造主』。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた。立場によって性格を切り替えており、二重人格と思われがち。
◆煌々 輝夜 自称14歳
戒めの使徒。創世一位『光の創造主』。かれんと一緒に暮らしている。恥ずかしがりやだが戦うと結構強い。
【名前のみ判明している人物】
◆レックス・ウォラーレ
戒めの使徒。創世二位『空の創造主』
◆クラルス・マグノリア
戒めの使徒。創世三位『自然の創造主』
◆ルーナ・クレアーレ
戒めの使徒。創世四位『天体の創造主』
◆アルミラージ
戒めの使徒。創世五位『動物の創造主』
◆ニール・サンクトゥス
戒めの使徒。創世七位『??の創造主』
「おれは厨二。厨二の王なんだ──閃け、おれならできる……!」
悠斗は今、庭に面したベランダで頭を抱え込み、何やらブツブツ言っていた。
「だめだ……考えれば考えるほど浮かばなくなるぅぅぅッ‼」
「そもそも厨二とか黒歴史って何⁉ 語源は⁉ 何が由来なの⁉」
莉奈は真面目に根本を理解しようと調べ始める始末だ。
「いや~ごめんねー、みんなの反応が面白くて遊びすぎちゃったぁ~」
「かれんさん、おれらで遊びすぎじゃない⁉ ほら――水月なんてもうずっと虚空を眺めて魂抜けちゃってるよ⁉」
「ん~真面目にアドバイスするとぉ、自然と心に浮かんでくるような言葉じゃないと意味ないかな~。無理やり考えても心には響かないんだよ」
「自然と……? 心に響く……?」
「かぐやも……かれんもね、戒めの使徒になってすぐの頃はうまくできなかったよ?」
普段口数の少ない輝夜も、皆を励まそうと声を掛けた。
「そうだったね~最初は大変だったんだから! あとはぁ、魔力子を支配する感覚だったり、自分と向き合うことかな!」
「何かだんだん難しくなってきたわね……」
「莉奈ちゃん、そ……そんなに考え込まなくてもいいかなって、かぐやは思う……かな」
「そうそう! 名は体を表すって言うでしょ? 自然体自然体! 今の水月ちゃんみたいに考えるのやめちゃった方がいいかもよ~?」
「そうね……って水月ホントに大丈夫? 戻ってこれる⁉」
本気で心配になったのか、莉奈が水月の肩をゆさゆさ揺らした。
「ところで莉奈ちゃん」
「何?」
かれんが突然、真剣な面持ちで莉奈の瞳を覗き込んだ。
「不思議な赤みを帯びたその瞳、ずっと気になってたんだけど……」
「あ、これね。あたしドイツ人の血が四分の一混ざってるクォーターだから、それでかなって思って。特に気にしてなかったんだけど」
「莉奈ちゃんはもしかすると、受け継いだ血に意識を向けた方がいいかもしれないね……」
それを聞いて、悠斗が納得した様子でつぶやいた。
「そうか、九条マリアさん──莉奈のお母さんの名前、聖母と同じだもんな」
◇
夕方になり、屋敷に帰るかれんと輝夜を皆で見送ったのだが、その際かれんがこっそり悠斗に耳打ちをした。
「悠斗にはもう一個だけアドバイスしてあげる! 魔眼を使いこなす事ができればぁ、水月ちゃんと莉奈ちゃんに……あ~んなことやぁ、こ~んなことだってできちゃうかもよぉ?」
「んな……っ‼ あ~んなことや⁉ こ~んなことまで⁉」
「悠斗ぉー、何やってるのー?」
「あ~悪い、ちょっと使い方のコツをな、訊いてたんだ」
そしてかれんはクスクスと笑いながら悠斗の家を後にした。
夕食後、皆でまったりしながらリビングでくつろいでいると──
(かれんさんがあんな事言ってくるから……)
悠斗もやはり思春期の高校生、気にならない訳がない。
「どうしたの? ユート」
「い、いや? どうもしてないぞ?」
「そお? ならいいけど」
何気に鋭い水月に驚きつつも、感づかれないよう悠斗は平静を装う。
しかし再びそわそわし始め、ソファーに並んで座る二人を横から盗み見た。
(イメージが鮮明なほど、できると強く信じるほど、魔力子はそれに応えてくれる。てことは二人の服を全部消したりできる? できちゃうのか⁉ そんなすばらし──イヤイヤ、最低過ぎるだろそれは)
目を瞑って頭を左右に大きく振り、邪な妄想を追い払う。
ところが、目を開けると妄想はより一層鮮明になり、実際に見ているかのようにはっきりと悠斗の目に映っていた。
あまりの鮮明さに驚き、思わず身を乗り出して目を凝らす。
すると────
「「イヤぁぁぁぁッ‼」」
妄想が悲鳴を上げて、悠斗はようやく理解した。
それは妄想ではなく現実の、一糸纏わぬ水月と莉奈だった。
「ユートぉぉぉ……っ‼ 一体ナニを見たのかな⁉」
「あんたねぇ……っ、使い方のコツってこーゆーことだったわけ……⁉」
莉奈は肝心なところをしっかり隠しつつ、握った手をプルプル震わせていた。
「で、できた……⁉ 言葉にもしてないのに……‼」
「その前に言うことがあるんじゃないのぉ~⁉」
「あぁ……み、見せてくれて──ありがとうございます?」
「違ぁーう‼」
「ぐほぁ‼」
莉奈の容赦ないビンタが悠斗を襲った。
「次やったらプチプチ二重巻きの刑だからね⁉」
「何それ、ちょっとされてみたいかも」
謎の刑に水月が興味を示す。
悠斗は床に倒れ込みつつも、様々な感動で痛みなどどうでもよくなっていた。
「これはいける! 無詠唱による魔力行使、ちょっとカッコいいかも……」




