理科室のドア
今回は理科室を舞台に、ドアが閉まります。女子と男子と友達が出てきます。だんだん、このシリーズ、扉を鍵で開けるっていうテーマがそれてきてないかなと思ったりもしますが、温かい目で見守ってくれると幸いです。
今日は、天体観測の日だった。
希望者に理科室を開放し夜が来るのを待ってから、室内に設置した学校の望遠鏡で天体を観ようという催しだった。姫崎は、親友と参加を申し込んだ。泊まり込み前提なので、自前のキャンプセットを持って、姫崎は、とてもウキウキしていた。日が暮れても帰らず夜の学校にいるなんて、まことに非日常である。
数時間後、理科室では、皆で雑魚寝する体制に入った。
「さっき、月が綺麗だったね」
そんな話をしながら皆、寝る体制を整えた。準備は各自が行うよう指示があったので、キャンプの寝袋を持ってくる人が大半だった。寝袋に入った学生が床に雑魚寝するのである。理科室の机は床に固定されているので全員の顔は見えないが。
と、そこにベッドスタイルで1人、完ぺきな装備の奴がいた。コットというアウトドア用品のかなり良いやつだ。
「それ、どこで買ったの?」
「ん?百貨店のトルメノ」
「げ、岡嶋」
「ハイ、皆さん施錠しますよ~。
消灯ですよ~ 」
ガチャン! バチン!!
理科の先生によって、容赦なくドアは施錠され電気も消されたが。なんで岡嶋に姫崎が「げ」と言ったのか?その理由は文化祭の時までさかのぼる。姫崎と岡嶋が教室で鍵を閉められて出られない所をお昼にやっと皆に発見してもらうという事件があった。
その際、文化祭準備で日頃の疲れから爆睡してしまった姫崎は、2度寝を普通にし始めたマイペース男・岡嶋と共に発見されて、あらぬ誤解を受けたのである。確認が甘かった担任のせいなのに、皆の誤解をとくのは大変骨が折れた。
しかも、岡嶋は特に自分から弁解するそぶりもみせなかった。その事が姫崎に余計、不信感を抱かせたのだった。何の縁か、また隣同士で寝る羽目になった。動こうにも、消灯後で何も見えない。
姫崎は大人しく寝ることにした。
「姫崎」
「え?」
「おやすみ」
(!!)
なぜ、岡嶋は挨拶をしたのか。
姫崎は、返事を返さない。というか返せない。
実は、岡嶋は姫崎を嫌いではなかった。
「私もいるんだけど。…ちょっとぉ。」
親友の小さな一言に、誰も返さなかった。
姫崎の親友の子もいました。