家の鍵
今回は、今まで実家暮らしだった主人公が一人暮らしして、3年後に帰省する話です。
家を出るときに様々な物(鍵含む)を置いてきていた主人公が、あることに気づきます。
「準備はできたの?忘れ物はないわね?」
荷物はもう何度も確認したし、ばっちりである。
忘れ物はない。だが、一応念押しでもう一度確認した。
「しばらく戻ってこないんだから、元気でやるのよ?
あ、ほら。これ餞別。 カ・ギ!!!
無事に帰ってこれるようにね。ハイ 」
母は落ち着かない様子でうなづいていたが、姉がカギとやらをくれた。
箱である。手のひらに収まるほどではないが、両手で十分持てるサイズの。
「うん、ありがとう。
じゃあ、行ってきます。」
そして、僕は新たな世界に胸を躍らせ、一歩を踏み出すと同時に…
長年住んでいて親しみしかない家を出たのだった。
ガチャ。
あれから3年、仕事にも慣れ、一人暮らしの生活がすっかり板についた僕だったが、長期休暇になったので地元に帰ることにした。荷物はそう多くない。戻るだけだから、持っていくものはお土産と、そう。姉がくれたカギくらいだ。まだ一度も箱を開けていない。
箱を開けてみた。そこに入っていたのは、テディベアだった。当時置いて出たはずの、昔からの相棒は、今もつぶらな瞳でこちらを見ている。相棒を見るだけで、家族と過ごした楽しい思い出がよみがえってきた。
早く帰りたい。
まさか、今まで相棒もずっと一緒だったとは、心強い。
「あれ?」
相棒の首のリボンには鍵がついていた。
どう見ても、昔使っていた家の鍵である。
「あぁ、いつでも帰れたんだな。」
あえて置いてきた鍵は、
しかし、手元にずっとあったのだ。
家に帰って、早く皆の顔が見たい。
ガチャ!
「 ただいまー!!! 」
帰れないと思っていたのは自分だけで、実はいつでも帰る方法はあった。
ってシチュエーション(何それ?)が好きです。
※ちなみにこのお話は残念ながら実体験ではありません。