"I'm dying to devour more…"5
前回よりさらに短いが…?
「…ま、まぁどうせ助けられなかったということでここはひとつ。」
「…次は、無い。」
「イエッサー!」
「…もう一度正しく。」
「イエスマム!」
全く、細かいことを気にする人ですね。所詮何の関わりもないNPCだと言うのに…。
「…コロナは外道だから、何の関わりもないNPCなんでどうでも良いかも知れないけど、私はなるべく助けたい。」
「ふーん。」
まぁ、考え方は人それぞれですし構いませんが。
そんなことよりクエストです。どうも直接手を下している訳ではなさそうなので、一度怪しい店員に自宅凸仕掛けてみましょう。
「このまま自宅凸が安牌な感じだけど、マイカは何かある?」
「…ん、特には。」
と言うわけで、店長さんに場所聞いてやって来ました怪しい店員の自宅。
「個人情報が~」的な理由で交渉が必要かとも思いましたが、妙にスムーズに聞き出せた辺りクエスト補整が掛かっている気がします。
「つまりこれが正規ルート…!」
「…多分そうだけど、それは言わないお約束。」
マイカに湿気たスナック菓子を見るような目で見られました。
いやまぁ、私が悪いですが。
「ごめんごめん、そんなつもりじゃなかったんだって。…っと、いつまでも門前に立ってても怪しまれるし、一回ノックしてみてよ。」
「…コロナが、するといい。」
「やだよ。見てあれ、明らかに新興宗教の類いの看板があるよ?」
私は表札横に掛けられた看板を指し示します。そこには「ツァト真教本部」の文字が。さらに、そばには「入教者の声」なるポスター付き。
「…痩せたとか食べても太らないとかばっかり。」
「実はスポーツジムだったとか?なんにせよ入りたくはないねぇ。」
うーん、なんというかコテコテの怪しい宗教団体です。教祖を守るためには信者の命くらい簡単に投げ出しそう。
「…よし、進まないし入ろうか!」
「…ん、仕方ない。」
石畳の上を進み、私とマイカはいやいや問題の家の扉をたたきます。直ぐには反応がありませんでしたが、暫くすると「どちら様でしょうか。」と言う声がドア越しに飛んできます。声質的には若い女性の声です。
「どちら様でしょうか?」
「あ、私コロナって言います。こっちは友人のマイカです。外のポスターを見て話を伺いたくて訪ねたんですけど…。」
それを聞いた途端、ドアが勢いよく開きます。やはり若い女性、それもかなりの美人さんです。
「ウガァ・クトゥン・ユフ!素晴らしいわ!ささ、入って頂戴。」
「うがぁ…?」
「…くとぅん?」
「「…ゆふ?」」
「ふふっ、仲が良いのね。口癖みたいなものだから気にしないで。」
「はぁ…。」
うーん、何とも怪しい口癖です。「ウガァ」とか「クトゥ」とかどうにもクトゥルフっぽい。
女性に導かれ、私たちは応接室とおぼしき部屋へと連れていかれました。そこそこ広い部屋で、ある一点を除けば何の変哲もないthe・応接室です。
女性(フィラリィさんと言うらしいです)がお茶を淹れにいった隙に、マイカと情報共有します。
「(ねぇ、アレ何だと思う?)」
「(…強いて言うなら、ヒキガエルとコウモリの合の子。)」
それは、応接室奥の壁際にドンと鎮座していました。全体的なフォルムはマイカの言う通りヒキガエルに似ています。ただ、耳や毛並みはコウモリのそれです。なんにせよ、何とも醜悪な生物の像が飾られていました。
「(と言うかぶっちゃけツァトゥグァだよね?)」
「(…多分、間違いない。)」
ツァトゥグァ、クトゥルフ神話における神格の1柱であり、旧支配者の1つです。その性格は他の神格に比べ温厚であり、遭遇しても2回に1回くらいは食べられません。とはいえやはり神格、矮小な人間と比べればあまりに強大です。
「(壊したら怒られるかな?)」
「(…当たり前。)」
「(だよね…っと戻ってきそうだよ。)」
応接室の扉が開き、フィラリィさんが入ってきます。
「そちらの像にご興味が?」
その目は、怪しく光ってみえました。
「もっと食べたい」ってかなり短いシナリオなんですよね。引き延ばしたかったけど無理そうなので次話で "I'm dying to devour more…"は完結予定です。