憐れ、プレーン。
すまない、プレーン。本当にすまない。ギャグキャラ√確定だ。
コロナ達「深淵より」がリンカーネーションモンスター「暴聖のエイブラハム」を討伐した頃。
デュオクレの闘技場では、第2回公式イベント「殿上人の暇潰し」の決勝がおこなわれていた。
決勝カードはプレーンvsブラックサバス。
賭けの倍率を見るに、プレーンが微有利といった感じだ。
『おーっと!プレーン選手、一体いくつのスキルを持っていると言うのか!実に十数種ものスキルを使い、ブラックサバス選手の絨毯爆撃を凌いだーっ!』
『うーん、まさか1ヶ月でここまでのプレイヤーが出るとは…。運営としても予想外でした。』
テンション高くプレーンとブラックサバスの戦闘を実況するのは赤羽 友里。Mongrel Stacker運営の1人だ。
それに続いてボヤいているようにも取れるセリフを吐いたのは友里の上司にしてMongrel Stackerの副開発責任者、本堂 光希である。
元々の予定では世界観に沿って闘技場の職員NPCが実況をする予定だったが、運営がやった方が何かと都合がいいだろうということで2人が実況・解説をすることとなったのだ。
開発責任者曰く「世界観も大事だけど、これは遊戯。楽しめなくちゃ、意味がない。」とのこと。
そんなわけで2人は世界観を無視してモンスタ世界に顕現したのだった。
『しかしブラックサバス選手も負けてはいません!巧みな杖捌きでプレーン選手の接近を妨げつつ、着実に魔法の照準を合わせています!』
『彼女もすごいですね。手のひらの口を使った三重詠唱もさることながら、近接戦であのプレーン選手に引けを取らない奮闘ぶりです。』
試合開始から15分。
戦いは佳境を迎えていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いい加減当たって下さい!【爆劇】!」「【爆壁】!」「【爆渦】!」
「はっ、その程度当たるかってんだ!〈回避〉〈無穴の穴抜け(ゴーストルール)〉!」
ロールプレイバレ…というか性別バレ以降、面倒臭くなったのか今更遅いと思ったのかロールプレイをやめたブラックサバス。
彼女が放った攻撃を、見たプレーンは退路を塞いでいる焔の壁に向けて飛び込んだ。一見自殺にも見える行為だが、プレーンは何事もなかったかのように壁の向こうへと抜けてくる。
「はっはー!壁を使ったのは失敗だったな、魔導師!」
「【爆轟陣】!」
「ぬぉぉおお!?」
壁を突破してブラックサバスへと突撃したプレーンだったが、彼女を囲うように突如出現した焔に飛び退く。
「避けられるのくらい想定してましたよ!これで終わりです、【氷結界】!」「【氷転火】!」「【火葬天壊】!」
ブラックサバスを中心に展開された氷の領域が、次の瞬間焔へと転じる。広範囲に広がる焔はまるで空をも覆わんといった勢いでプレーンを飲み込もうとする。
「ふん、この程度で俺が───
『はい?…えぇ!?コロナさん達、リンカーネーションシナリオクリアしたんですか!?』
『はぁ!?いや、これは予想外とかそう言う次元じゃないんですが…。』
───んああぁぁあっ!!??!?」
回避のため新たなスキルを起動しようとしたプレーンの耳に、あまりにもあんまりなタイミングであまりにもあんまりな内容の会話が届いた。
その結果、
「あ、やべっ、ちょ、まっ、ぐわああっ!」
『おーっと、なんだか爆弾情報に気を取られている間に試合が終わったーっ!』
『いや、ちゃんと実況しなさい。』
プレーンが衝撃の情報に気を取られ、人1人に対して盛大すぎるほどの火葬がおこなわれた。ここに、第2回公式イベント優勝者がブラックサバスに決まる。
そして、一拍遅れてワールドアナウンスが流れた。
『プレイヤーの皆様にお知らせします。リンカーネーションモンスター「暴聖のエイブラハム」の討伐を確認しました。討伐参加者はコロナ、トーカ、ぺぺ、マイカ、ラピス、ロンチーノの6名です。』
『万を超える妄執は朽ち果て、落陽が近づく。』
『リンカーネーションシナリオ「千昼一昼物語」を開始します。Mongrel Stackerの全プレイヤーは自動的に本シナリオに参加します。』
『日没は近い。探索者よ、天の火に抗え。』
闘技場は大混乱となった。
明日は掲示板。
そういえば、所謂「世界の真理書」も書かねば。