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模試の結果やべぇ。
12〜2月は受験前なんで更新停止か隔日になります。
「…。」
カプセル型のVR機器から身体を起こし、しばし沈黙。隣の部屋から物音がしますね。どうやら十華もログアウトしているようです。
「…。」
幸い所持金は前回のデスペナの影響で10000トゥル程、要するに借金も同額。
「…問題は原因ですね。」
恐らくエイブラハムが最後に使っていた〈アルス・マグナ〉とやらが関係しているんでしょうが…。
「アルス・マグナ…大いなる術…改宗…んー?」
リアルでのアルス・マグナから攻められればと思いましたが、流石に厳しいですか。
とりあえず、〈アルス・マグナ〉によって引き起こされたと思しき現象はアミュレットと同じくデスペナの増加。
「…いえ、『BYV抑制剤』の効果の線もありますか。」
吐き気とショゴス化解除が効果だと思っていましたが、デスペナ増加もこちらの効果で〈アルス・マグナ〉はただの攻撃だった可能もありますね。
まぁ、どちらだったとしても起きた現象に変わりはありません。
デスペナ増加となるとアミュレットと同じく外神、旧支配者とその眷族からの影響の緩和ということになりますが…それだとおかしな事があります。
ショゴスは外神、旧支配者、眷族のどれにも当てはまりませんし、事実アミュレットを着けているからと言ってショゴス化出来なかったり吐き気がしたりもしません。
「となると別の理由ですか。」
抑制、抑制、抑制…。
BYVが何の略なのかわかればいいんですが、どうも厳しそうです。
「…よし、諦めましょう!」
考えて分かるような問題ではなさそうですし、何より…
「十華ー!明日から学校なの分かってるー?」
「ぬわーっ!嫌なこと思い出させないでよお姉ちゃん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と言うわけで今日は9月2日、今日から学校再開です。
「うぅ…眠い…。」
「あれだけ言ったのに宿題を済ませておかないからでしょ。」
「だってぇ…。」
「だっても何もない。」
まぁ、十華が宿題をやっておらず夜中まで奮闘するのは小学校からの風物詩みたいなものですけどね。
「お姉ちゃんも手伝ってくれてもいいじゃん!私のこと置いて寝ちゃうし!」
「そんなことより私のお肌の方が大事だもん。」
それを聞いた十華はワザとらしくショックを受けたような体を装って言います。
「あっ、今そんなことって言った!妹の苦しみをそんなことってバッサリ切り捨てた!」
「自業自得でしょ。」
「正論やめてよ言い返せないじゃん。」
むしろ何故言い返せると思った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…おはよ。」
教室に入ると舞香が挨拶をしてきました。十華同様眠そうにしていますが…こちらはゲーム、というかモンスタのやりすぎでしょう。
「おはよう、舞香。ゲームはほどほどにね?」
「…ん、わかってる。」
あ、舞香には昨日のエイブラハムのことは伝えておきますかね。いえ、どうせ放課後に他のメンバーにも伝える予定ではありますが。
「舞香、カクカクシカジカ。」
「…これこれうまうま。」
「いあいあくとぅるふ。」
「…召喚しないで。」
ナイスツッコミ。でも乗ってきた舞香にも責任はあると思いますよ?
「それでどう思う?」
「…なにが?」
「え、今言ったこと。」
「…伝わるわけ、ない。」
そんなバカな。親友の考えの1つも読み取れないんですか、酷いですね。
「私と舞香の仲なら何かふわっとした感じでも伝わるかな、って。」
「…百音の頭がふわっとしてる事しか、伝わらなかった。」
なんかさらっと暴言吐かれたんですが。いえ、御巫山戯はここまでにして真面目に伝えましょう。
「…って事なんだけどどう思う?」
一通り昨日の出来事を伝えた私は、再度舞香に意見を求めます。
「…借金、ざまぁって思う。」
「オイ。」
「…冗談。とはいえ、BYVが何か分からないと、なんとも。」
「だよねぇ…。」
やっぱり舞香も分かりませんでしたか。となるとまた特攻でも仕掛けますかね?実験も1しかできていない上に今なら所持トゥルは0、というよりマイナスですからね。ログイン不可も学校に行っている時間に被せればそこまで気になりませんし。
それはそうと…
「舞香なら何か分かるかも、って思ってたけど、期待した私がバカだった。」
「…。」
「ちょ、舞香さん?グーはダメだと思うんですよ、グーは。」
「…問答、無用。」
「がふっ、きゅう。」
「…あくは、ほろびた。」
アルス・マグナの「マグナ」とマグナ・カルタ、フォッサマグナの「マグナ」が同じだと気づいた時めっちゃびっくりした記憶がある。