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霜を踏み躙るもの18

寝てたら夜だったよ。


=side:永久に不孝をなすものvsラピス=


永久に不孝をなすものは実に数百年ぶりの戸惑いを感じていた。それもそのはず、ラピスは間違いなく偉大な魂(マハトマ)の所持者であり、本来であればちんけな投石程度の攻撃能力しか持たないはずなのだ。そもそもマハトマを有した時点で攻撃をしようという考えは浮かばないのが普通であるし、いわんや敵を撃滅せんとは考えない。


しかし、目の前の少女はまるでそうすることが当然であるかのように自分を屠らんと無数の罠を張り、投石とデバフを駆使してその罠へと追い込んでくる。永久に不孝をなすものが反撃に出ようと触手を伸ばせば視界が不意に閉ざされ、気が付いた時には射程外へと退避されている。


それによしんば攻撃が命中し、致命傷を与えることが出来たとしても……



「〈中治り(ラスト・ラリー)〉」



倒れ伏したラピスの口が不自然に蠢き、言葉を紡ぐ。途端、致命傷に見えた傷がまるでテープを巻き戻すかのように治っていき、息を吹き返す。ぱちくりと眼を瞬かせた後、ラピスは再び杖を構えて永久に不孝をなすものに相対した。


中治り(ラスト・ラリー)〉は、自身のHPの95%以上のダメージを1度に受けた際にそれと同値のHPを回復するパッシブスキルである。喰いしばり系スキルと組み合わせれば非常に強力なスキルであるが、もちろんデメリットや取得条件も存在する。


ともあれ、永久に不孝をなすものは何度倒そうとも起き上がり自身に向かってくる人間に薄ら寒いものを憶えており、自身が本体の分身であり決定打に欠けることも相まってジリ貧の様相を呈していた。


一方ラピス側であるが、彼女もまた永久に不孝をなすものを上手く仕留めることが出来ずにいた。いくつかの罠に嵌めてダメージを加えることは出来ているが、段々と傾向を読まれ回避され始めている。その度に補助魔法や妨害スキルで先んじて回避を封じているのだが、対応してくるのも時間の問題だろう。


それに、MP事情や喰いしばりの残り回数もネックだ。中治りの度に回復したHPと同値のMPを失っているため湯水のごとくMPタンク型アーティファクトを使い潰しているし、装備品によって無理やり増やした喰いしばりもあと数回しか残っていない。一応職業特性として常に10%の確率で喰いしばりが発動するが、頼りになる確率とは言い難いだろう。


結局のところ何処まで行っても攻撃のできないラピスは攻め切ることが出来ず、こちらも同じくジリ貧の様相を呈していた。



「貴様、それだけ死にかけておいて尚も向かってくるとは……いい加減実力に気付いたらどうだ?」



「いやです! 先輩に任されたからには絶対にやりきるし、やり切れるんです!」



しかし、ジリ貧と呼ぶべき状況でもラピスは焦ること無く地道に削り続ける。罠を張り、妨害で嵌め、また罠を張り、時々倒されては起き上がっては罠を張る……。そうして1時間近くが経過した頃。



「ぐ、ぬぅぅううう……」



「ハァ……ハァ……」



遂に勝敗が決した。立っているのもやっとというほどに疲弊したラピスの前で、永久に不孝をなすものが溶けるようにして消えていく。



「や、やった! やっぱり先輩が倒せると言ったら倒せるんです……!」



永久に不孝をなすものとラピスの戦いは、ラピスの勝利で幕を下ろした。永久に不孝をなすものが途中から相手を諦めさせることに意識を向け始めた一方、ラピスは攻めることに徹していた。どちらが勝ってもおかしくないギリギリの戦いであったが故に、初志貫徹を通したラピスに勝利の女神がほほ笑んだのだろう。


それはまさに、コロナを信じたことでつかんだ勝利であった。

例えくすんでいたとして、ましてやそれがメッキでも、輝き照らすに違い無し。

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