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黄色いビー玉
無数のビー玉をテーブルの上に転がした。
無造作に配置されているビー玉の中から、唯一黄色いそれ見つめる。
何色でもいい、たまたまそれが唯一の色だったから目を引いた。
そしてその黄色いビー玉に手を近付け、力を込めて指で弾き飛ばした。
勢いよく転がって行く黄色いビー玉は、やがて青いビー玉とぶつかった。
その青いビー玉は弾き飛ばされ、テーブルの外へと落ちてしまう。
けれどテーブルの上には、他の青いビー玉が無数にあった。
黄色いビー玉が周囲に影響を与えようと、青いビー玉が1つ転がり落ちようと、テーブルの上の光景はほとんど変化が無い。
私の努力は、この黄色いビー玉と同じ。
黄色いビー玉を拾い上げ、青とその他多くの色のビー玉が残るテーブルを見つめる。
私が存在している意味は、あるのだろうか。
黄色が無くなったビー玉の群を見つめ、そう呟いた。