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小さな陛下と最後の妖精  作者: 久浪
『陛下と護衛』
22/30

第1話 戻り、微笑む関係


続編として別に作っていたのですが、まとめます。

二年前に戴冠式を終え、正式に王となったばかりのリディアの新たな日常。











 長く、夢の中でしか見ることが出来なかった光景がある。

 とても安心するその笑顔を見られなかった人がいる。

 誰よりも何よりも側にいて欲しかった人が、いる。




   ◇




 朝、侍女に起こされて目が覚める。

 中々自分で起きられないことは変わっておらず、枕に埋めたくなる目覚めていない頭を、懸命に枕から引き剥がすことから一日は始まるのだ。

 顔を洗い、拭き、身につけた薄いサラサラとした寝間着からドレスへ着替える。最初は窮屈なばかりだった身体を締め付けるドレスには、今は毎日身につけるものなので慣れた。ふと窮屈だな、と思うことは避けられないのは元の育ちが残っているからだろう。


 寝ぼけ眼気味のままに鏡の前に促されて座ると、寝ている間に乱れた髪を丁寧に丁寧に櫛梳られ、肩を越え腰ほどにまで伸びたストロベリーブロンドの髪は極上の艶やかさを取り戻していく。

 されるがままに身支度を整えられていく間に覚めてきた目が見つめた鏡には、仕上げに化粧を施された顔をもってようやく完成した姿。


 地位上完璧な装いになるためにかけられる時間は、侍女たちが何人がかりであれ短くない時間を要する。


「さ、出来ました」


 侍女の中で最も長い付き合いにして侍女たちをまとめる立場にある女性と鏡越しに顔を合わせて言われたことで、椅子から立ち上がる。

 夜には引かれ窓を覆うカーテンは起きるより先に――もしくは覚醒しきる前に――左右に分けられまとめられて太陽の光を室内に取り込んでいる。どうも外はそれなりに晴れているようだ、と予想しながらもいつまでもぼーっと外を眺めているわけにもいかない。

 時間は有限だ、とリディアが今まで知りもせず考えもしなかったことを言ったのは誰だったろう。マナーを教えてくれていた老婦人だったか、他の教師の誰かだったか。宰相はそんなことは言わない気がする。


 そんなことを考えることは止めにして身支度を終えたリディアがその部屋から出ると、すでにその場にはリディアを待っていた姿が。

 最も近くで身を守る役目を負う護衛の姿。


「おはようございます、陛下」

「おはよう、グレン」


 柔らかそうな黒い髪。黒曜石に似た輝きの、けれど冷たい印象は全く受けず柔らかい輝きを秘めた瞳。軍服の男性が立ちその柔和な笑顔を向けられて、リディアは微笑んだ。







 ――国のどこにでもあるような小さな村に住んでいたが十一のときに王の子どもとして王宮に連れて来られ、何年にも及び様々な教育を受けていたリディアはとうとう二年前に戴冠式を行い正式に国の王位についた。

 一方一年前、理由あって六年間眠っていたグレン・ハウザーが目覚めリディアの護衛に戻ってきた。








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