婚約破棄したくてもできない!~ヒロインが光属性だった場合~
「俺が本当に愛しているのはお前ではなく、キンバリー・ライトだ。オパール・ブラック、お前との婚約はアレキサンドル・ツァーリの名において――」
しかし、その宣言は途中で阻まれる。
それも意外というか、当たり前の人物によって。
「お待ちになって! キンバリーさんは貴重な光属性の持ち主です! 婚約を破棄することは無意味ですわ!」
てっきり、オパールがヒステリックに泣き叫ぶと思っていたアレキサンドル王子は目をパチクリと瞬かせ、彼女の言葉を頭の中で反芻する。
「どういうことだ、オパール・ブラック?」
「光属性のご婦人は正妃、本妻にはなれませんわ。彼女たちは光属性の子どもを産むために夫を最低五名以上、持たなければなりませんもの。誰かの跡取りを産むという立場に就くことは許されておりませんから」
「何だって?!」
驚くキンバリーと逆ハーメンバーだが、その中で一人だけ飄々とした態度を崩さない人物がいた。
その人物はオパールの言葉を引き継いで、驚いている仲間と愛しい彼女に説明する。
それは楽しそうに、笑顔まで浮かべて。その笑顔は非情にイラッと来るニヤニヤ笑いだった。
「その通り。光属性の男も同様に五名以上の妻を娶らなくてはいけないが、そちらも本妻は定めてはならない。光属性の男以外では光属性の女の夫だけは本妻が必要なので王族同様、一夫多妻を許されている。常識だな」
「!!」
「何故、言わなかった、レッド・ジャスパー」
「誰がどの段階で気付くのか観察しているのが面白そうだったから(笑)」
アレクサンドル王子は一番年上にもかかわらず愉快犯な性格のレッドに大きく溜め息を吐いた。
彼に何を言っても無駄なことは周知の事実だ。
「・・・では、全員が夫になることも?」
ニヤニヤ笑いをしたままレッドが当然とばかりに答える。
「勿論」
その言葉に血の気が引いたキンバリーは叫んだ。
「嫌です! 一人だけで良いです! 全員とだなんてそんな・・・そんな・・・!」
キンバリーが全身全霊をもって拒否するのに対してオパールは真顔で言う。
「しかし、貴女は貴重な光属性をお持ちになのよ、キンバリーさん。この国の為、光属性の持ち主を増やすのは当然のことではなくて?」
歯軋りと共にキンバリーが小声で吐き捨てる。
「・・・てやる。こんな国出て行ってやる」
「他国では光属性を増やすために多夫多妻すら生温いと、光属性を増やす施設まであるんだがなあ」
と、愉快犯レッドは混ぜ繰り返す。
「キンバリー、良かったな。これでいつまでも一緒にいられるな」
「キンバリーちゃん、これからもよろしくね」
「キム。よろしく頼む」
「キンバリー、楽しみだね~♪」
「さあ、覚悟を決めよう、キンバリー」
逆ハーメンバーたちは喜色満面だ。約一名、ニヤニヤ笑いのままだが、愉快犯は無視ということで。
色々あるかもしれないが愛しい彼女を手放さなくても良いのだから。
こうして、ヒロインがいれば良い逆ハーメンバーは幸せになりましたとさ。
その婚約者たち?
逆ハーメンバーと結婚しました。
一人二人なら兎も角、全員、心移したのが婚約者の兄弟だったので外聞を慮った結果、そうなりました。
光属性の婦人の夫の本妻として周囲から敬われ、恋人とその子どもたちと幸せに暮らしたそうです。
「自然界には放射線を含んでいる石(日本で確認されているだけで数十種類)もあるので、拾って帰る時は気を付けるように。体調を崩すこともある」と愉快犯は申しております。
キムライト(kimuraite)だけでなく、キンバリーライトという石もあるとのご指摘を受けました。
キムはキンバリーの愛称だったのでキンバリー・ナイトという名前にしていたのですが、キムライトは日本語版でも英語版でもwikiに項目がなく、英語版の鉱石一覧のリストに掲載されているだけのマイナーな石でした。
光属性が貴重だという設定だったので、一般的ではないキムライトがヒロインの名前の由来だったのも何かの縁を感じます。
作者にそこまで意図できる頭はありませんので。