ep.6♡可愛らしい先客
目の前の二人は喧嘩をやめないし紅茶はなかなか冷めないしで、あたしは取り敢えず目の前のクッキーに手を伸ばすことにした。
モシャモシャ
「…ん?」
モシャモシャ
あたしが手を伸ばした先には、先客がいた。クッキーの並べられた大きな皿の淵に腰掛けるようにして、無心にクッキーを食べている。
ネズミ…いや、ヤマネ?
むしゃむしゃとクッキーを口いっぱいに頬張る姿がとてつもなく可愛らしい。
そのふわふわの産毛に触りたくて、あたしの手がわきわきと動いた。
バチリ
「あ…」
目が合った。くりっくりだなぁ…じゃなくて。
逃げられると思ったけど、ヤマネらしき動物はクッキーを抱えたままあたしの目の前にちょこちょこと歩いてきた。
こてん、と首を傾げる。
か、可愛い…!
あたしはそっと、ヤマネの頭を撫でてみた。
気持ち良さそうに目を細める。
同じように体やふさふさの尻尾を撫でていったら、ヤマネらしきものは突然ゴロンと仰向けになった。
お腹丸出しの状態であたしを見つめる大きな瞳。
欲望に耐えきれずあたしは思う存分ヤマネらしきもののお腹を撫で回した。
「ああああー!!ちょっとクレミー!アリスに媚び売らないでくれる?動物の姿でなんて反則!」
「そうですよ、貴方という人はいつもいつもそうやって…」
あたしは小さなヤマネらしき動物に説教し始める二人を呆然と見つめた。
何言ってんだこいつら。
っていうか、喧嘩終わったの気づかなかった…
説教を食らった小さいのは、とてとてと歩いてあたしの膝に乗ってきた。
「よーしよし。怖かったね。かわいそうに………え?」
掌サイズだったヤマネのような動物は、少しずつ伸びて伸びて、あっという間に少年へと変貌した。
…ふさふさの耳と尻尾付きの。
あたしの膝に跨って、胸にすりすりと頭を押し付ける。
「ん~。アリスぅ~」
待って待って。
…誰だこれ。