【06】 悪夢の後
あれ?
なんだっけ?
なんだか、夢を見てたような気がするけど……。
「う〜〜ん」
真菜はベットの中で、一つ大きくノビをした。
こう言うのって、なんか気持ちが悪い。思い出せそうで、思い出せない。奥歯にものが挟まった感じ。
「ま。いっか」
枕元のデジタル時計を確認して、ぎょっとする。
AM 8:00
「えっ? うそっ!」
完璧遅刻! 今日、終業式なのにっ!
慌てて二段ベットの下段から飛び起きて、上段の留美を起こそうと覗き込んだ。
「あれ?」
留美がいない。
「ひっどいなぁ! 起こしてくれればいいのにっ!」
ぶーたれながらあたふたと、濃紺の制服のジャンバースカートを着込んで、ブレザーと鞄を掴んで廊下に飛び出す。
「お母さん! お母さん! 何で起こしてくれないのよっ!?」
大声を上げながら、階段を小走りに数段駆け下りて、何故か足が止まった。
あれ? 何だろう、この既視感。
毎日上がり下りしている階段だから、可笑しくは無いけど、何だか、ドキドキした。
嫌な胸騒ぎがする――。
イクナ。
イッテハ、イケナイ。
心のどこかで、声がした。
ちりちりと皮膚が粟立つような恐怖感がわき上がって来る。
その恐怖感で、思わず吐き気がしてえずいた。
「少し、遊んでやれ」
どこからともなく耳に届いた低い掠れた嫌な声に、真菜はいやいやをするように首を振った。
嫌。
「恨むなら、親父を恨むんだな」
嫌!
「へぇ。バージンか。こいつはいいや」
「嫌ぁあぁあぁっ!!」
真菜は、その自分の叫び声で目を覚ました。
そこは、病院のベットの上で、運ばれてから既に丸一日が経っていた。
病室を尋ねて来た刑事の口から、父と母が死んだこと。
そして、妹の留美が行方不明だと言うことを知らされた。
何故か、涙は出なかった――。