【01】 始まり
※ご注意※
直接的な表現は有りませんが、性犯罪が絡みます。苦手な方はご注意下さい。
なお、携帯閲覧を前提に書いていますので、PC閲覧だと改行等が読みにくいかと思いますが、ご了承下さい。
下記の携帯対応サイトで、明サイド・真菜サイド(一人称)を連載中です。宜しかったら覗いて見て下さい。
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=hinata88
「明! 今日は、もう上がっていいぞ!」
-12月21日-
PM7:00
東日新聞社・社会部の山城デスクの野太い声が、定時退社など無縁の騒然とした室内に響き渡った。
工藤明がこの新聞社でバイトを初めて半年。
こんな早い時間に退社を言い渡されるなど、初めての事だ。
「え? いいんですか? まだ、この資料整理、終わってないですよ?」
明は山城デスクの思わぬセリフに、何かミスでもしたのだろうか? と一瞬ギクリとした。
それが顔に出たのか、山城デスクが、記事のチェックをする赤鉛筆の動きは止めずに、明の顔にチラリと視線を走らせると、厳つい顔の口角をニィっと上げた。
「たまには早く帰って、彼女にサービスでもしてやれ」
そう言って、ドアの方にくいっとあごをしゃくった。
明がドアの方に視線を巡らすと、見覚えのある人影が立っていた。
岸辺美里。
明より4つ年上の、25歳。
同じ東日新聞社の出版販売部の社員で、かなりの美人だ。
身長が165センチあるので、ヒールを履くと、175センチの明と並んでも見劣りしない。
スレンダーなボディに、グラマーなスタイル。
後ろで一つに束ねたブラウンのストレートの長い髪は、染めているのではなく、フランス人だったと言う祖母の遺伝だ。
「別に、彼女じゃないですよ」
明は肩をすくめた。
「まあ、いい。とにかく今日は上がれ。あんなすこぶるつきの美人にウロウロされたら、目の毒だ。ほれ。俺の気が変わらんうちにとっとと帰れ!」
「じゃ、お言葉に甘えて、お先に上がらせて頂きます」
「おう。頂け、頂け!」
デスク、その言い方、露骨にスケベですよ?
明は心の中で呟き、「お先にー!」とまだ当分帰れそうもない記者達の非難ごうごうの視線を背中に浴びながら、新聞社を後にした。