番外編 復讐
この物語は、某666文字作家様への復讐作品であります。(だから、666文字で書いた!)
いつものネコにゃんではありませんが、軽く読み流していただければ幸いです。
暑い夏の夜。
彼は、ついに家を飛び出した。
心がやけにざわついて、じっとしていられない。臭覚を刺激する、えもいわれない匂い。そして、甘く啼く声。それらが、彼を呼んでいた。
今まで、経験したこともない高ぶり。
その昂揚感に支配されて、彼は大きな声で鳴く。
甲高い声が、それに答えた。
年に数度は訪れるはずの、その季節。
それを、彼は初めて経験する事となる。
彼の名は「ネコにゃん」と言った。
生後一年程の猫だ。とても精悍な顔つきとバランスのとれた体躯を持つ、美しい猫。
初めての発情期は、彼をとても興奮させた。
いつにない攻撃性に目覚めた彼に、敵はいない。並み居る雄どもを蹴散らせば、雌たちは甘い声で彼をいざない、受け入れた。
「なんと、素晴らしい」「この世は天国」。眦を下げて、彼は悦に入る。
自分はどんな雄より強く、そして雌にもてもて。
いつもの、どこぞのお猿やアライグマやハムスターに馬鹿にされている自分とは、違う。
これが、大人の猫というものなのだ。それを、実感する。
雌たちの流し目に応え、その時期を楽しんだ。
悲劇が起きたのは、二か月後。
言い出したのが誰なのかは解らない。
ただ、彼のことを誰かが「歩く猥褻物」と呼んだ。それが悲劇の始まりだった。
愛猫を抱いた飼い主達の苦情が相次ぎ、それに辟易した主人が、ついに決断したのだ。
彼の主人は、ゲージに彼を入れた。
「ごめんね、ネコにゃん」
「という、夢を見たにゃん」
ネコにゃんの言葉に、大笑いをする、仲間たち。
「大丈夫。玉抜きにされる程の甲斐性はあんたにゃない」
酷く心に突き刺さる言葉に、それでも安心している彼だった。
今回の事は、これぐらいで勘弁してやるわ。(上から目線)
ワタクシの復讐劇に、全く関係ないのに読んでいただけた方には、心からお詫びを申し上げます。