番外編 SFなのだ!(前編)
番外編だにゃん。
くどいようであるが、我が輩はネコにゃんだにゃん。
さて、今回はいつものネコにゃんとは違うのだ。
何故なら……この物語は、SFなのだにゃん!
「機長、間もなく惑星ポンポコリンに到達するよ」
操縦士である蘭た……蘭子の声に、我が輩は頷く。
我が輩の目の前には――いな、眼前のスクリーンには、緑なす美しい惑星の姿が映し出されていたにゃん。
それは、我々が旅立った、あの惑星にどこか似た……。
「スペースシップ「信楽」は、これよりポンポコリンに着陸するにゃん!」
我ながら、とても明快であり、かつ緊張感に欠ける命令であることは自分でも解っているにゃん。
でも、機長がネコにゃんなんだから、ある意味仕方ないにゃん。
そのネコにゃ……我が輩たちが「動物移住計画」に賛同し、更にスペースシップの機長に至るまでの長い長い経歴は、とりあえず省略するにゃん。
何故ならそれは、以前に提出した報告書に……え? 報告書が出てにゃい? おかしいにゃん。友人の白ヤギさんに代筆を頼んだ筈だにゃん。
え? 白ヤギさんったら書かずに食べた? 書類不備で出航してしまっているし、何度かの警告もぶっちぎってしまったから、二度と地球には戻れにゃい?
困ったにゃん。そんな事は、聞いてなかったにゃん!
ネコにゃん、二度と香穂里さんに会えなくなってしまったにゃん! 二度と、香穂里さんにぎゅーってしてもらうことも無くなってしまったにゃん……。
なーんて、ネコにゃんは知っているにゃん。この物語は番外編にゃん。
というわけで、運悪く書類不備になってしまったものの、地球に住まう全ての者たちの希望を背負い、我ら「信楽」は出航したにゃん。
動物たちの楽園を探して。
それから、どれぐらい経ったのだろう。「信楽」はついに惑星「(仮称)ポンポコリン」を発見したにゃん。
ちなみに、この仮称に特別な意味はないにゃん。「信楽」が目指した惑星なので、なんとなく「たぬき」を連想しただけにゃん。
もっと格好良い名前にしておけば良かったとは思ったけど、後の祭りにゃーん。
「では、点呼を取るにゃん」
我が輩の命令のまま、「信楽」乗務員全員が一列に並ぶ。……と、いってもネコにゃんを入れて四匹だけなんだにゃん。信楽は限界までコストを下げて作られた、極端に小型のスペースシップなのだにゃん。
「いち」
先頭を切ったのは、サッキー。我が輩にとっては頭脳とも呼べるアライグマにゃん。
「に」
これは、お猿の蘭たん。
我が輩にとっては、両前足後ろ足に等しい。つまり――考える意外のすべてをこなしてくれる大切なお猿にゃん。
「さん」
最後に、ハムスターのカジュブー。「信楽」のマスコット的存在であり、我が輩の親友であり、それとこれは内緒だけど、非常食だにゃん。
そんな非常事態が訪れない事を、ネコにゃんは心から祈っているにゃん。
「みんな揃っているね。じゃあ行くよ!」
ネコにゃんがしみじみとカジュブーの行く末を案じている間に、猿が動いた。
蘭たん、抜け駆けは卑怯にゃー!
「蘭子さん、ちゃんと装備を調えてから行かないと……」
と、サッキーが声をかける間にも、蘭たんは搭乗口に向かっているにゃん。
ネコにゃん、負けていられないにゃん! 一番乗りは、機長でないと……。
「聞けよ、ちょっとは!」
ダッシュするネコにゃんの目の前に、何かがちらっと映ったにゃん。でも、気がついた時にはもう遅いにゃん。ネコにゃんは急に止まれないにゃん。
かくして、サッキーが差し出した足に引っかかったネコにゃん、思いっきり転がって壁に頭をぶつけてしまったにゃん。
くう、ポンポコリンには地球と同じぐらいの重力があるらしい。かなりのダメージにゃん……。
「どんくさいネコってやっぱり可愛いでちゅー」
腹をかかえてげらげら笑う、カジュブー。この場で喰ってやろうかとちょっと思ったにゃん。
その時にゃん!
「おわぁ!」
絹をさくような――というよりは、さかった雄猫のような悲鳴が搭乗口付近から響いたにゃん!
厳しい表情になって声のした方向に走る、サッキー。慌ててネコにゃんも後を追ったにゃん。
惑星ポンポコリン。
我が輩はついに、そこに降り立った。
「信楽」が着陸したのは、砂漠。
見晴らしが良い筈の、その場所で。
サッキーとカジュブー、三匹で必死になって目をこらして探したけれど。先に降りた筈の蘭たんの姿はどこにもなかったにゃん……。
――続くにゃん