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琥珀色の怪

これは、執筆仲間のとある女性の誕生日を祝って描かれた物語である。

でも、ひどいオチなので誰の誕生日を祝ってのものなのかは書きたくないのである。

その女性に、一言。これからも素晴らしい作品を残して下さい。

「うううううううぁぁぁぁぁぁ!」

 という絶叫に、ネコにゃんはびっくりして飛び起きたにゃん。

 って、まだ夜中にゃん。ネコにゃん、都会のネコだから、夜は寝る時間にゃん。

 おっと、しまった。

 我が輩はネコにゃんだにゃん。

 名前がネコにゃんっていうんだにゃん。

 今日も飼い主である香穂里さんの脇の下に潜り込んで、寝ていたにゃん。

 香穂里さんの脇の下はとっても、寝心地が良いにゃん。でも、香穂里さんはときどき「暑っくるしい!」と言ってネコにゃんをつまみ上げるにゃん。

 でも、ネコにゃん負けないにゃん。

 そういう時は、両腕をつきだして、ネコのおっぱいもみもみ攻撃をするにゃん。

 これは、ネコだけに許された特権にゃーん。他の人は絶対に真似したら駄目にゃん。


 でも、夜中に目を覚ましたら、香穂里さんはいないにゃん。さては、さっきの悲鳴は香穂里さんに何か?

 我が輩は、香穂里さんのピンチを察して立ち上がったにゃん。

「うああああぁぁぁぁぁ」

 香穂里さんは、キッチンでずっと悲鳴を上げていたにゃん。

 我が輩がすり寄ると、一点を指さしたにゃん。

 琥珀色の……推定五センチメートルぐらいの長さを持つ。あれは、間違いなくゴキブリにゃん! あぶら臭いので、ネコにゃんちょっと苦手にゃん……。

「……て」

 香穂里さんが何か言ったにゃん。

 「やっつけて」って言ったらしいにゃん。ネコにゃん……いや、我が輩はゴキブリなど怖くはにゃいが、補食したくもないにゃん……。

「いいから、やっつけて!」

 香穂里さんの命令は、絶対にゃん。

 てゆか、我が輩の言葉は香穂里さんには通じないのに……どうして、嫌がっているのが解ったのだろう?

 きっと、香穂里さんと我が輩の間が一歩近づいた証拠にゃん。

 我が輩は、ゴキブリに掴みかかったにゃん。

 でも、彼奴は卑怯にも空を飛びやがった。

 しかし、宙を飛ぶものはいつか必ず、どこかに着地する。琥珀色の彼奴は、でかかった。そう長く飛んで居られるわけがないにゃん。

 ほら、もう低空飛行だにゃん。

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 というわけで、それは香穂里さんの黒髪の中に着地したにゃん。


「で」

 いつもの神社で、自称「黄猿」の蘭たんが冷たい声で言ったにゃん。

「追い出されたと」

「香穂里さん、へたくそって言ったにゃん」

 追い出された事より何より、その言葉に我が輩はすっかり意気消沈してしまったにゃん。

「狩りが下手なんだから、仕方ないさね」

 蘭たんは、メスだから男心が解らないにゃん!!

「ネコにゃんが可哀想でちゅー」

 と、擁護の言葉を投げかけてくれたのは、家出中ハムスターのカジュブー。今日もまるまるとしていて、実に美味しそうなんだにゃん。

「だから、ヨダレはやめましょう」

 と、いつものように我が輩の顔をゴシゴシしてくれるのは、野良アライグマのサッキー。温厚そうに見えて、実は一番クセモノなのじゃないかと、最近になって、ネコにゃんは思うにゃん。

「取りあえず、事件解決の為には……訓練あるのみです!」

「え? 訓練?」

 何となくわくわくとして、聞き返したにゃん。

 と、怪力猿の蘭たんが背後に転がっていた電柱に手を伸ばしたので、我が輩はよくない妄想を止めたにゃん。止めたのに蘭たん、どうしてそんな冷たい目でネコにゃんをみるにゃん?



 かくして、我が輩とゴキブリの戦いは始まったにゃん。

 でも、彼奴は素早い。だから、我が輩はまずスピードを身につけないといけないと言われたにゃん。

 この訓練に協力してくれたのは、蘭たん。我が輩の周りで、ずっとネコじゃらしを振り回してくれたにゃん。我が輩の周りで揺れるネコじゃらしに、必死になって飛びつくにゃん。

 我が輩は、右左と翻弄されて……全然捕まえられないにゃん!

「鈍くさい仔猫って、端から見てるとカワイイでちゅー」

 ちらっとそちらを見ると、カジュブーがサッキーと談笑していたにゃん。真剣さが足りないにゃん!

 でも、わきわきと手を動かすカジュブーを見ていると喉が鳴るにゃん……駄目にゃん。カジュブーは大切な仲間にゃん!

 やっと蘭たんのネコじゃらしを奪い取るのに成功したのは、訓練開始から三時間後だったにゃん。

「飽きた」

 と言って、蘭たんがネコじゃらしを捨てた瞬間を狙ったにゃん! 我が輩の作戦勝ちにゃん。えっへん。



「じゃあ、いよいよ本番ですね」

 と、サッキーが連れて来たのはとある飲食店街のゴミ置き場。蘭たんは、「あたしは疲れた。パス」ととっとと帰ってしまったにゃん。

「ネコにゃんは、ここで一晩敵と戦い、敵の戦術を身体で覚えるのです! では、私はこれで」

「サッキー、ネコにゃんを見捨ててどこに行く?」

「夜に備えて、寝ます。さすがに飽きました」

 そういえば、アライグマは夜行性にゃん……それにしても、冷たいにゃん。

「大丈夫。僕が見てるでちゅー」

 手をわきわきとさせながらカジュブーが言う。

 ううう。ネコにゃん、いつもいつもカジュブーを見る度に「美味そう」だとか「いつか喰う」とか思っていた事を心から後悔したにゃん。

 カジュブーこそ、本当の友達にゃん。

「いざと言う時、ネコにゃんの攻撃をかわすシミュレーションに……いや、こっちの話でちゅー」

 友達を疑うのはいけにゃい事だが、何となく、カジュブーも一筋縄ではいかない性格のような気がして来たにゃん……。



 夕日が傾きかける頃から、やがて夜がとっぷりと暮れるまで我が輩の訓練は続いたにゃん。ゴミと汚物にまみれて、我が輩は闘った。

 そして、朝日が目に染みる頃、ネコにゃん、ついにやったにゃん!

 カジュブーが目に涙を浮かべて拍手をくれたにゃん。やっぱり、カジュブーは一番の友達にゃん!

 そちらに駆け寄った我が輩から、カジュブーするりと身をかわす。

 その身のこなしに内心では感嘆しつつも、ネコにゃんは怒ってしまったにゃん! カジュブー、失礼にゃん! 喜びを一緒に分かち合いたかっただけにゃん!

「ネコにゃん、臭いでちゅー」

 そうか。こんな身体では香穂里さんに会いに行けない。

 我が輩は、慌てて毛繕いをしたにゃん。

 そして、カジュブーに見送られながら、戦利品を加えて香穂里さんの家に戻ったにゃん。

 香穂里さんは、まだ寝ている。我が輩の事を心配して、寝るのが遅かったのだろうにゃー。

 我が輩は戦利品をとりあえず脇において、香穂里さんを起こす事にしたにゃん。肉球でほっぺをつんつんしても、むにゅーってしても起きないので、今度はほっぺをぺろぺろ嘗めてみたにゃん。

 ほっぺから、鼻へ、そして唇へ。

 ネコが普通にする行動にゃん! 深い意味はないにゃん!

「うーん」

 と、香穂里さんが目を覚ます。

「おはよ、ネコにゃん。夕べは何処に行っていたの?」

 よくぞ、聞いてくれたにゃん!

 というわけで、我が輩は脇に……いや、香穂里さんの顔の真横によけておいた戦利品を口にくわえ、香穂里さんの目の前にぶら下げたにゃん。

 香穂里さんは、しばらく不思議そうにそれを見ていたと思ったら、どんどんと顔色が悪くなっていったにゃん。

 我が輩の口もと見ていたかと思うと、そっと自分の口を押さえたにゃん。


 そして………。

というわけで、前にも増して酷いオチに……。

私、本当にネコ好きなんです。信じてください……。

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