表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

番外編 その後のバレンタイン

ネコにゃんは出て来ませんが「バレンタインの陽性」に続く物語になっています。いつまでバレンタインデーを引っ張るのだか(笑)

「と、まあ、そういう理由」

 右手の甲の包帯の理由を聞き、りったんは納得したようだ。

「そっか。災難だったね。で、ネコにゃんは大丈夫だったの?」

「うん。ちゃんと病院に行って、吐かせたから」

 そう、事の起こりは、香穂里が飼っているネコにゃんが、私が持っていたチョコを勝手に食べてしまった事。勿論、好奇心の強い子猫こどもが居る所に、無造作に紙袋を置いておいた私が一番悪いのだけど。

 行き先のないチョコがとんでもない騒動を起こしてしまい、今後はデパ地下の誘惑に負けないことを心したね。

「そういえば、りょう君だっけ? りったんの所の子は?」

「ああ、多分ホットカーペットの上でお昼寝中。まだまだ、はなたれ小僧だから」

 りったんの猫は、雄のマンチカン。

 どんな感じの子かなって検索をかけると、ものすごく愛らしい短足猫の動画が上がっていた。

 子猫って、良いよね。もう、見ているだけで癒される。

 勿論、ネコにゃんも可愛かったんだけど。私の手の甲に爪を立てて、私の心に一生消えない染みを残しやがったから、とりあえずペナルティ1。いや、無造作に紙袋を置いておいた私が悪いのだけれども。

 だから、せめてものお詫びに「マグロのサイコロ チョコレート風」を置いて来た。ネコにゃんのご機嫌が直れば良いのだけれど。

 置いといて。

 心の傷を癒す為にマンチカンの「りょう君」とじゃれあう事を楽しみにしていた私にとって、「お預け」を喰らった状態で。

 だから、りょう君が寝ている部屋に移動することになった。

 ぬくぬく毛布の上で満足そうに眠っている姿は、やっぱり可愛い。人の気配に気づいてか、身を起こし、全身で伸びをする姿なんか、超絶、可愛い!

「まゆまゆって、本当に猫に弱いよねー。満面の笑顔」

 りったんが、呆れたように告げる。

 それは当たっているけど少し違う。可愛いものに弱い。

 猫は、ぶすでも可愛いけどねー。


 お茶を入れ直して来ると言って、席を立とうとしたりったんに、

「りったん。おやつあげて良い?」

 お伺いを立てる。

「良いけど、チョコレートは駄目だよ」

 あげませんって。そもそも、ネコにゃんにだって、あげたわけではないのだから。

 りったんがお茶を取りに行っている間に、鞄から取り出したのは、さっき買った「マグロのサイコロ チョコレート風」。こんなこともあろうかと、余分に買っておいたのだ。

 きらきらの包装紙に個別包装されたそれは、本当に見た目は一口大のチョコレートのようだ。

 包装を取ると、りょう君は飛んできてくれた。

 マグロのサイコロを取る時に、ついでに掌を舐められた。ああ、癒される。

「ただいま。まゆまゆが好きなアールグレイと、りったん手作りのチョコレート」

 ああ、こっちも癒される。

 りったんの生チョコはブランデーの風味豊かな、大人向けな味わい。

「誰かにあげたの?」

「ムフ。内緒」

 あげたんだろうな。りったんの本命が誰なのかは知らないけれども。

 いいなぁ。

 羨ましそうにしていたのが解ったのだろう。

「そういえば、ケンちゃん入院中だっけ?」

「そう。だから、今年はバレンタインデーに参加しない事にしていたんだけど」

 うっかり、誘惑に負けたからネコにゃん騒動になってしまったわけで。

「だったら、まゆまゆ、そのチョコレート風マグロのサイコロ。ケンちゃんに持って行ったら? 可愛くラッピングして。可愛いの、残っているよ」

 いや、それはいくら何でも。

「大丈夫。猫用だから味付けもしていない。糖尿でもきっと大丈夫」

 そういう問題じゃないと思うのだけど。

「ケンちゃんだって、今年はバレンタインデーなんか無いと思っているんでしょ? だったら、こんなサプライズ、喜ぶに決まっているよ!」

 そうだろうか? そうかも知れない。

「うんうん。そうに決まってる! まゆまゆ、GO!」

 そうか。そうだよね。



 どこかおかしいと、心のどこかでは思っていた筈なのに、りったんに押し切られて、変な自信すらつけてしまった自分の愚かしさに気づいたのは、その数時間後の事。


 電話に出たりったんに、どすを利かせた声で告げる。

「ケンちゃんに、お前なんか絶交だって言われたんだけど……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ