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ステータス


 手伝うのは別に良いとしても、この世界が本当にゲームの世界なのかという疑問は残る。


 私がやっていたゲームは、『アストラルレベリオン』。勇者がいて、魔王がいて、カミがいる。

 最初主人公一行の勇者は、魔王と対立していた。魔王率いる魔族は、各地に侵攻。『大魔力結晶』のある町を支配し、大魔力結晶を集めて町を破壊。世界中の人々を恐怖に陥れた。

 大魔力結晶ていうのは、この世界の町の礎になるエネルギーの源だ。そこから溢れる魔力を利用して、人々は火や水を生み出す。それが無くなれば、町はインフラを無くして衰退する事となる。一応代わりに小さめの『魔力結晶』ていうのもあるんだけど、こっちは大魔力結晶と違って取り出せるエネルギーは小さい。小さめの村は大魔力結晶がないから魔力結晶の方を利用しているけど、規模の大きな町を魔力結晶で補うのは無理だ。


 話がずれたけど、という訳で大魔力結晶を集める魔王は、世界中の人々にとって悪の存在だったのです。


 でも魔王が大魔力結晶を集めていたのには理由があって、それは異世界からカミと呼ばれる侵略者がやってこようとしていたからなんだ。魔王は予言や、実際に大きな力を持つ者が接近している事を察知して、対策を練っていた。その対策に大魔力結晶が必要だった。


 物語中盤でついに魔王が危惧していた侵略者がやってきて、カミがこの世界に出現する。主人公達は圧倒的な力を持つカミに、為す術もなく敗北。


 あ、この時のカミが、ゲームで私が倒した負けイベントのカミです。


 絶体絶命に陥った主人公達だけど、そこになんと魔王が援軍として登場。大魔力結晶を利用した巨大なビーム兵器をカミに向かってぶっぱなった。でもカミはそれくらいじゃ死ななかった。だけどビームによってカミが出て来た異世界へ繋がる穴に、押し込む事が出来た。世界からカミを追い出す事に成功し、穴は塞がれめでたしめでたし。


 ではなく、その時を遅らせる事に成功しただけだった。


 結局、大魔力結晶が足りなかったのだ。主人公達一行が邪魔してたからね。だからカミを倒す事が出来なかった。


 その後は和解して、勇者と魔王が協力して再び来るであろうカミに対する対抗策を考えていく事となる。


 ラスボスのカミは、『大魔力結晶ビーム(仮)』を食らった事によって弱体化しており、元のカミとは比べ物にならいくらい弱かった。イベント上は勿論かなりの強敵だったけど、戦闘じゃ元のカミと比べると笑っちゃうくらいに弱くて、笑っちゃう。

 そんな弱いラスボスを世界中の皆で一生懸命協力して倒して、本当のめでたしめでたしとなる訳だ。


『何か聞きたそうな顔をしてるにゃー。特別に答えたげよっか?』

「……ラスボスのカミと、私が倒したカミは別物?」

『同じだよん』

「弱かった」

『君がそう感じるのは、ゲームだからさ。ゲームには盛り上げるための演出やプレイヤーを感動させるための演技が必要になる。ボクは大魔結晶を利用した超高密度の攻撃をうけ、次にやってきたら怪我を負って弱体化していた。熱い展開だろう?』

「つまり、演技だった?世界は、侵略者に負けたの?」

『そもそもゲームで描かれていた物語は、この世界であったかもしれない可能性の一つだ。でも大筋でゲームと同じようにこの世界も進んでいたよ。重要なのは、物語上で絶対にあってはいけないイレギュラーな出来事を世界にもたらさない事だ。君は絶対に倒せないはずのボクを、倒してしまった。そのせいで世界が進むべき運命が破壊され、この世界そのものの基礎を改変してしまった。だから責任取ってボクを手伝ってちょって話』


 カミがそう言って、ウィンクをしてきた。

 無表情で仮面みたいな顔してるのに、ウィンクは出来るんだな。不気味だ。


『んじゃとりあえずステータス画面開いてみよっか。ほれほれ、どうした。やってみー』


 と、カミが両指で四角の形を空中に作ってジェスチャーしてくる。


 運命がどうのこうのって言ってたけど、カミって結局は侵略者なんだよね。侵略者に協力して復活させても良いものなだろうか。


「……そんな事急に言われても、分からない」


 とりあえず、細かい事を考えるのはやめておこう。

 今の混乱した状況では、まともに考えられそうにない。状況整理が出来るくらいの情報と、ここが本当にゲームの中の異世界だという実感が欲しい。


『簡単だよー。頭の中で、ステータス画面出ろって思うだけ』

「……」


 言われて思ってみたら、本当に出た。


 名前:ヒメノ

 種族:魔族

 レベル:3


 HP:184 / 184

 MP:312 / 312


 私の目の前に浮かび上がった画面に、こんなステータス画面が出ている。

 うーん……弱い。アストラルレベリオン略して『アスレベ』では、せっかくカンストまで育てたのにまた最初からって事か。いやレベル上げだけなら割と簡単なんだけどね。それに付随するスキルやら魔法やら装備やらがこのゲームでは重要になって来る。


『ぷっ。弱。なにこれ、ボクが用意した器はレベル40からのツヨツヨスタートだったのに……。魔王の娘だって言うから期待してたけど、こんなんでこの洞窟を生き残れるの?』


 私のステータス画面を、私の顔にくっつける勢いで横に並べて覗き込んで来るカミに、若干イラついた。くっついてると言っても、横並びになっているだけで触れられている感触はない。


「……魔王の娘?」

『そうだよー。君のその身体は、魔王と呼ばれし存在の子だ。君がカミを倒したせいで、色々変わっちゃったんだよー。詳しくは長くなるから今はやめておこっか。というか記憶があるから分かるだろう?』

「……」


 確かに、分かる。

 アスレベの魔王と、この身体の持ち主の父親は一致する。

 ゲームの展開通りなら魔王と勇者は協力してカミに対抗するが、この少女の記憶では共闘する事はなかった。勇者がカミを倒してしまったからだ。それによって魔王のカミとの戦いに備えると言う大義名分は失われ、『大魔結晶』を集めるため町を侵略して破壊した魔王は世界中から迫害。魔族は衰退していく事となる。


『とりあえずボクに謝っとこっか。倒してごめんなさいって。絶対に倒しちゃいけない相手なのに変な根性を発揮して倒してごめんなさいって。ほれほれ』


 クネクネと身体を動かしながら、そう促して来るカミ。


 カミは放っておいて、他にも何か見れる物はないかなと頭のなかで探ってみると、ページが変わった。


 習得スキル

 ・魔王の加護

 ・神殺し

 ・ユニーク魔法

 ・魔力噴出

 ・鑑定

 ・アイテムストレージ 


 習得スキル、か。

 頭の中でそれぞれのスキルの説明を求めると、説明文が出て来た。


 魔王の加護 全属性耐性・全属性魔力適性・闇属性攻撃力アップ・闇属性魔法消費MP削減・精神攻撃耐性・即死無効・鑑定無効


 神殺し 神属性を持つ者に対して特攻


 ユニーク魔法 魔法を作り出す事が出来る


 魔力噴出 全身から魔力を溢れ出し全ての行動に魔力を消費し常にMPを消費する状態。代わりに全ての行動に魔力の力を加える事で通常よりも強い力を発する事が出来る。


 アイテムストレージ アイテムを収納しておく事が出来る。ステータス画面から選んで収容、取り出しが出来る。0 / 50


 鑑定 対象としたものを鑑定。対象が生物ならステータス画面を覗く事が出来る。


『魔王の加護は破格の強さだねぇ。でもレベルがこれじゃあなぁ……。神殺しってのは、もしかしてボクを殺したからついたの!?酷い!こんなスキル無くなっちまえ!ユニーク魔法ってのはユニークで面白いスキルだ。所持者の想像力に左右される。でもレベルがこれじゃあなぁ……。魔力噴出は面白いね。本気モードって感じかな。いざって言う時に使えると思う。でもレベルがこれじゃあなぁ……。鑑定は便利そうだね。何にでも使えそう。だけど鑑定阻害っていうスキルもあるから、それ持ちには通用しない。でも相手のプライベートを覗くみたいで、ドキドキするね。アイテムストレージは、まさに物語の主人公だけの特権て感じの力だ。でもこの世界じゃ運び屋とか、商人が割と習得してたりする。この世界の人々もまた、スキルを得てスキルで生活しているんだ。でも君のレベルはやっぱり低いなぁ……』


 私の代わりに、各スキルの事をカミが説明してくれた。

 でもいちいちレベルの事を嘆くのが、やっぱりウザい。


『習得している魔法も見せてよ。早く早く』


 はいはい。言われた通りに頭の中で考えてみると、やっぱりページが変わって出て来た。


 習得魔法

 ・炎獄

 ・氷華

 ・風結

 ・土轟

 ・雷鳴

 ・水月

 ・闇夜

 ・聖鐘


『……コレは面白い魔法だねぇ』

「覚えてる魔法は、コレだけ?いや、レベル3にしては多い方……?」


 それにしても、いずれもゲームの中にはなかった魔法だ。

 そもそもスキル一覧もゲームではなかった物ばかり。鑑定やらストレージはあったけどね。

 でも加護やら神殺しやらのスキルは見た事がない。あっても○○耐性とかって感じ。


『君のユニーク魔法のスキルが関係しているのさ。君は自分が思い描いた魔法を発動させる事が出来る。例えば炎獄の魔法を発動させるとしよう。すると魔力が炎に適した状態になり、その後君が思い描く魔法の名を呟けば、炎の魔法が発動すると言う訳だ。例えば、火の玉が敵に向かって飛んでいくのイメージしながら、炎獄・火球と呟いたとする。すると、火球が出現して敵に向かって飛んで行って、ドカーン!だ』

「それは最強?」

『そうでもない。術者の創造力に影響されるから、創造力のない者がこの力を持っていても宝の持ち腐れだ。君はどうかな?やってみないと分からないね。そして例えば世界を破滅に導くような魔法を創造したとしよう。魔法の実現には膨大なMPを必要とする。ボクが軽く計算すると、必要となる消費MPはおおよそ80万だ。君のMPは?』

「312……」

『ぷっ。ざっこ。てな訳で、創造する魔法は自分のMPに準じた物じゃないと、発動できないよん。まー確かに強いスキルではあるけどね。魔王の加護のスキルのおかげで全属性の魔法が使える君にとって、魔法を覚えたりせずに自分が思い描くだけでどんな魔法でも使えちゃう訳だし。凄く強いと思う。ホントに。レベルさえともなえば。ぷっ』


 いちいちレベルの事をバカにして来る。

 確かにレベル3は雑魚だけど、そこまで言うか?自分が苦し紛れに手で掴んで、勝手に連れて来ておいてこの扱い。しかもこれから手伝ってもらおうって言う相手に対して、失礼じゃなかろうか。


「それで、私はこれからどうすれば?」

『お。やる気だねぇ、ヒメノちゃーん。いいよこのカミが、導いてあげるよん。まずこの洞窟の名は、『ガ・リグレ』。たぶんゲームには出て来なかったけど、合ってるよね。レベルは大体70代くらいの超つよい魔物がうじゃうじゃの、生物にとっては地獄みたいな地だ。君はその洞窟の奥深くにいる』

「……オワタ」

『まぁ低いレベルのは30代くらいのもいるから……なんとかなるよ、きっと。うん。まずは低レベルの魔物を倒してレベル上げをしよー!おー!』

「……」


 私のレベルは、3だ。30代のレベルでも10倍のレベル差があり、格上である。

 どう勝てと言うのだ。


『んで、んでー、レベルを上げたらー、この洞窟内をうろついてるボクの魂を持つ魔物──神獣と呼ばれる存在を倒してちょ』

「いきなりボス戦?」

『うん。本来ならどっかで強くなってからつよーい仲間を作ったり、防具を揃えたりしてから挑戦すべきなんだろうけど、丁度この洞窟にいるんだよね。君が入っている器がたまたまここにあったのは、偶然じゃなくて運命だと思う。だからついでに倒しちゃってよ。よろしくねん』


 私に向かって投げキッスをしてくるカミに腹が立つ。


『とりあえずの目標は、この洞窟内で生き残る事。レベルを上げる事。あとはそこに転がってるガイコツの上にかかっているぼろきれを拾って、服にしたらどうかにゃー。いつまでも裸はさすがに嫌っしょ』


 カミが指さした方向をみると、確かに骸骨が転がっていた。長い間そこに放置され続けて風化して、ボロボロの布切れしか残っていない。

 その骸骨を見て、私は思った。


 ああ、この骸骨は魔王で、私のこの身体のパパなのだと。


 他にもいくつか転がっている骸骨は、私を最後まで守ってくれた忠臣達だ。

 貴方達が守った少女の魂はなくなり、私が代わりに入っている。申し訳ない。私は魔族の復興とかには興味がなく、貴方たちの望みを叶えてあげられそうにありません。

 でも裸は嫌なので布はもらいますよっと。


 骸骨たちに向かって手を合わせて謝罪してから、私は布切れを回収。それを肌に被せた。着心地は最悪だ。でも裸よりはマシかな。


『あははー。よく似合──る──。あ、そろそろげ──い。────。』


 カミに元々入っていたノイズが、突然大きくなった。声は途切れ途切れになり、段々と不明瞭になって最後は突然消え去ってしまった。

 周囲を見渡すけど、カミの姿はもうどこにもない。

 薄暗い洞窟の中に、いきなり1人切りになってしまう。


 ……心細いけど、いっちょやったるか。


 拳を作って気合をいれ、私は洞窟の奥を睨みつけた。


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