☆パンはウマい
パンは、うまい。
ただの粉を練って焼いただけなのに、うまい。
何かを混ぜ込んであれば、さらにうまい。
砂糖がまぶしてあれば、だいたいうまい。
中に具が入っていたら、そうとううまい。
パンは…とにかく、ウマイのだ。
粉を練って食べやすい大きさに成形して焼き、ふこっと仕上がったものをもぐっと口に入れる。
口の中でパン生地がとろけ、咀嚼という至福の時間がもたらされる。
パンそのものの味もウマイが、パン以外の部分もウマイ。
パンと具材が織りなす神秘の融合が、神をも唸らせるウマさを生み出すのだ。
粉を練り、パンという形態にする事で…感動をも生み出す物体へと変容する。
粉があったからこそ、パンという物体は生まれ…至福を味わえるようになったのだ。
減った腹を満たすのは、練られた粉たちの…豪快かつ繊細な合体活劇の賜物といえる。
練られて焼かれるだけで満足していた時代を経て、発酵と共に歩む道を選び。
焼かれて食べられるだけで満足していた時代を乗り越え、具材を抱く運命を受け入れ。
パンとしてこの世に存在しているものは、すべて…ウマい。
パンとしてこの世界で食されているものは、すべて…貴い。
パンは、『パン』として存在しているからこそ…そのウマさは格別なのだ。
パン粉は、パンではないのだ。
パンがゆは、パンではないのだ。
パンケーキは、パンではないのだ。
パン、ああ、パン。
パン…、ああ…、パン……。
腹が減ったら、まずパン。
手軽に食べるなら、やっぱりパン。
トーストに、まるパン、フランスパン。
メロンパンに、アンパン、サンドイッチ。
チョコパンに、ジャムパン、クリームパン。
カレーパンに、フランクツイスト、ベーコンエピ。
ピザパンに、マヨポテトパン、明太フランス。
コッペパンに、バターロール、ハンバーガー。
ホットドッグに、蒸しパンに、チーズボール。
食べれば食べるほどに広がってゆく、パンの可能性。
パンは、本当に…ウマい。
……この仕事が終わったら、絶対にパン、食べるんだ。
決意を胸に、仕事に取り組む私であったが。
買い置きの食パンが、無くなってる。
冷凍しといたディナーロールも、空っぽの袋だけになってる。
ジャムも、はちみつも、バターすらない。
近所のコンビニにむかえば、パンの棚がすっからかん。
ちょっと待て。
こんな事…ある?!
私は、すっからかんの胃袋を抱えたまま……三個入りのお稲荷さんとカップ麺、肉まんにうまい棒、トルティーヤにジャンボプリン、焼き芋アイスもなかにレジ前に置いてあった栗羊羹を買い込み。
とりあえず、腹を満たしたという…話。




