甘いものはウマい
甘いものは、うまい。
ただ甘いだけなのに、うまい。
何かをトッピングしてあれば、さらにうまい。
何の気なしに手をのばしても、だいたいうまい。
いいお値段がしたら、そうとううまい。
甘いものは…とにかく、ウマイのだ。
もぐっと口に入れると、ふわっと広がる、甘い味。
舌の上で甘いものが踊れば、たちまち夢気分になる。
甘いものは、まさに…神。
砂糖を加えることで、甘いものという物体へと変容する素朴な食材。
もともと甘さを持つ、恵まれた食材もある。
甘いものがもたらす…満足という至福。
甘いというだけで満足していた時代を経て、食感や香りにも気を配る常識へとたどり着き。
とにかく甘ければいいという誤った考え方を乗り越え、食材に相応しい甘さを追求し、神の領域へと近づき。
甘いものは、すべて…ウマい。
甘いものは、すべて…貴い。
だが……、しかし。
甘いものは、甘ければいいものではない。
甘いものは、甘いだけで絶賛されるものではないのだ。
甘いものは、『甘くておいしいいもの』として存在しているからこそ…神なのだ。
甘いもの、ああ、甘いもの。
甘いもの…、ああ…、甘いもの……。
腹が減ったら、まず甘いもの。
凹んだら、とりあえず甘いもの。
手軽に食べるなら、まず甘いもの。
気になるのは、やっぱり甘いもの。
なんだかんだで最後に選ぶのは、たぶん甘いもの。
ケーキに、クッキー、プリン。
キャンディに、アンパンに、ちょっぴり酸っぱいグミ。
チョコレートに、ジャムに、ココア。
アイスクリームに、クレープ、パンケーキ。
ハニーナンに、ハチミツピザ、練乳たっぷりのかき氷。
バウムクーヘンに、ドーナツ、フルーツ。
饅頭に、カステラ、タイ焼き。
食べれば食べるほどにハマってゆく、甘いものの世界。
甘いもの…、甘いもの。
甘いものは、本当に…ウマい。
……この仕事が終わったら、絶対に甘いもの、食べるんだ。
決意を胸に、仕事に取り組む私であったが。
買い置きしてあったはずのクッキーは、空き箱がゴミ箱に突っ込まれてて。
いざという時に食べようと思っていたみかん缶は、どこにも見当たらず。
冷凍庫のアイスの箱は、中身が一つも入ってない。
ジャムも、はちみつも、チョコソースもすっからかん。
さいふの中もからっぽで、近所のコンビニで買い食いする事もかなわない。
すっかり甘い口になっていた私は、ココアに砂糖を追加してごぶりごぶりと飲み干し…。
人の財産を食い散らかした旦那に制裁を与えるため、部屋をノックしたのだった。




