9話
森林エリアに着いた。そうだ、知恵のイヤリングを装備しておこう。
さて、ゴブリンを探すか。
ゴブリンを探し回り少しすれば簡単に見つかった。倒す前に鑑定してみよう。
発動:『鑑定』
《ゴブリン。力はコボルトと対して変わらないが、稀に武器を持った個体がいる。コボルトより知能が高く、戦闘中に逃げ出す個体もいるだろう》
なるほど。そこまで有益な情報はなかったな。まあ、そこまで期待してなかったが。
鑑定結果を確かめ、用済みとなったゴブリンを素早く片付ける。最初の頃は少し苦戦していたのに今ではただの作業と化していることに気づき少し感慨深い。着々と力はついていっているんだろう。
ドロップアイテムを回収していると、2体のゴブリンがこっちに向かってくる。ちょうど複数の敵と戦ってみたかったからちょうど良い。
向こうのゴブリン達もこちらに気づいた。
「ゴブ!」
二匹のうち一匹が合図を出し、同時に襲い掛かってくる。
発動:『影操作』『投擲』
走ってきている一匹の足下の影を操作し、転ばす。これで少しの間動けないだろう。もう一匹にはナイフを投げ牽制する。
ナイフは運良く、ゴブリンの眼球に突き刺さる。すごい痛がっている。
痛みで動きを止めている間に距離を詰め、心臓に槍を突き刺す。もう一匹のゴブリンに目を向けるが、まだ地面に這いつくばっている。まだ、時間があるな。
余裕を持って、ゴブリンに刺さっている槍を引き抜き、うつ伏せに倒れているゴブリンにトドメを刺す。
暫くすれば、ゴブリンの耳が二つ地面に転がっている。
結構余裕で倒せたな。まあ、三匹同時はまだ難しそうだし、これからもなるべく一匹でいる奴を狙っていこう。
数時間後
十数匹のゴブリンを倒すことができた。大収穫だ。疲れたしここら辺で今日は切り上げよう。
ギルドに足を進める。
森林エリアを出て草原エリアを歩いている。
ドタドタドタ
向こう側から、誰かが走ってくる。どうしたんだろうか?
「そこの人、お願いします。助けてください!」
は?
よく見ればそいつの背後にはコボルトが三匹一緒に走ってきている。その三匹も俺の事を見つけてるだろう。隠れる事ができない。
クソ!!どうする!!!
コボルト三匹ぐらいなら倒すことはできる。でも、敵かもしれない奴の前で自分のスキルを晒したくない。どうする・・・・・・・・・・・・。よし、投擲だけを使って倒そう。
一番後ろのコボルトの足に向け、ナイフを投げる。
発動:『投擲』
問題なく足に刺さり、そのコボルトはバランスを崩して転ぶ。
二匹はまだこっちに走ってきているが問題ない。
槍の射程に入った瞬間、一匹目を槍で突き刺し、二匹目をナイフで仕留めた。レベルアップして得た身体能力の恩恵が役立ち、コボルトの動きが遅く感じる。
最後の一匹は、足の怪我のせいで上手く移動できていない。コボルトから槍を引き抜き、最後の一匹にトドメを刺した。
後の問題は後ろで俺のことを見ている、奴だけだ。どうするか、このまま黙って去るか。そうしよう。
ドロップアイテムとナイフを回収し、再びギルドに向けて歩き出す。
「あの!ありがとうございました!!」
チッ、そう上手くはいかないか。返事をしないのも余計に面倒になりそうだし無難な返事して、適当に切り上げよう。
「いえ、お気になさらないでください」
「あの、良ければ何かお礼をさせてください」
「いえそんな、そこまでのことをはしてませんので。では、失礼します」
これで大丈夫だろ。再びギルドに向かって歩き出す。
「あの!!」
何か覚悟を決めたような声で声をかけられる。嫌な予感がする。
「私とパーティーを組んでくれませんか!?」
コイツどういう頭してたら、この状況でそんな言葉が吐けるんだ。俺がおかしいのか?
俺はさっきコイツにモンスタートレイン紛いのことをされたよな。仲間になんてなるわけないだろう。
「ごめんなさい。今はソロの探索に集中したいので」
自分でもちょっと文法おかしいなと思うが、まあニュアンスは伝わっただろう。
「私、白鳳女学院の四条楓と言います」
聞いてねぇよ。なんでコイツ急に自己紹介始めてんだ。というか、白鳳女学院って日本屈指のお嬢様学校じゃなかったか?ということは、コイツいいとこのお嬢様か、なんでダンジョンなんかにいるんだ?金持ちの道楽か?よく見れば、装備も高級そうなものばかりだな。
「は、はあ、なんで四条さんは俺とパーティーを組みたいんですか?」
「その、元々ダンジョンにはストレス発散も兼ねてきてたんですが、パーティーを組んでみるのも悪くないかな、なんて」
やっぱり、金持ちの道楽じゃねぇか。
「えっと、俺は男ですし、女友達をダンジョンに誘ってみたらいかがですか?」
「それは、そうなんですが」
「それに、まだ俺は仲間と一緒に戦う自信がありませんので。予定がありますので、あらためて失礼します」
何か言われそうだったから、足早にギルドに向かう。
もう、会いませんように。




