8話
ピピピピ
聞き慣れたアラームの音が寝室に鳴り響く。眠たい体を起こし、部屋のカーテンを開ける。
小雨が降っている。そういえば昨日の天気予報で、雨が降るって言っていたような気がする。
今日の探索はどうしようか。確か、ダンジョン内では雨は降らないらしいしスキルの検証もしてみたいし今日もダンジョン行くか。
そうと決まれば、準備しよう。
朝ごはんを作り食卓につきテレビを点ける。
「探索者のスキルは様々な種類があり・・・・・・・・・・・・」
今日は探索者のスキルについてか。どうやら、スキルは大きく分ければ2種類になるらしい。その2種類というのは、常時発動型と任意発動型だ。要は、ゲームでいうところのパッシブとアクティブというやつだ。今のところ俺が持っているスキルは『投擲』以外は任意発動型、アクティブスキルだ。『投擲』は試してみないことにはどんなスキルか、わからない。
これからパッシブスキルを得ることもあるだろう。その時は、慎重に決めよう。
変なスキルを持つと目も当てられない結果になる。極端な例を挙げると、何をとち狂ったのか『ニワトリ頭』というスキルを取ったやつがいたが、その効果が3歩歩けば目的を忘れるという効果だったらしく今後の生活を車椅子ですることになった例があるらしい。なんでそんなスキルを取ろうと思ったんだろうか?
「ごちそうさま」
ご飯を食べ終わり、食器の後片付けをしてダンジョンに行く準備をする。
武器や探索道具、あと今は雨が降っているから傘も持っていこう。
「いってきます」
玄関のとびらを開け、ダンジョンに足を進めた。
数十分後問題なくギルドについた。
そうだ。スキルで投げるためにスローイングナイフを買っておこう。
流石に、販売部に売ってないと思ったが普通にあった。千円で3本のセットが売られている。まあ、このくらいなら買える。
ナイフを買い、探索申請をする。
「探索申請をお願いします」
「ああ、冬野様お久しぶりです。探索申請ですね、身分証をお願いします」
窓口は適当に選んだが、鈴木さんが担当だったのか。
「お久しぶりです。名前覚えていてくれてたんですね。」
「勿論です。探索者様の事を忘れるなんてありえません」
すごいな。ちょっとの間話しただけなのに覚えてるなんて。申請が終わるまで鈴木さんとちょっとした世間話で暇を潰す。
「申請完了しました。こちら身分証お返しします。最近、ソロで探索してらっしゃる探索者様ばかりが行方不明になっていらっしゃいます。どうか、お気をつけて」
ソロの探索者だけが・・・・・・・・・。心に留めておこう。
「わかりました。気をつけます」
鈴木さんにお辞儀をし、ダンジョンに入る。
とりあえず、草原エリアでスキルの検証をしよう。
人がいない所に移動し、辺りを見渡し適当な的になるような木を探す。
あれでいいだろ。良さそうな木を見つけた。
その木から数歩離れ、ナイフを取り出す。
とりあえず、スキルを使って投げてみよう。
事前にネットで調べていた、ナイフの投げ方を見よう見まねで投げる。
発動:『投擲』
思ったより上手くできた。綺麗な軌道で回転しながら、木の幹向かっていきザク、という音をたて木に刺さる。
どうやら、『投擲』スキルは任意発動型のようだ。
今度は、発動せずに投げてみる。
木に当たりはしたが刺さっていない。それに、スキルを使った時よりも威力がない気がする。
スキルが投げ方を修正してくれているのか? どういう仕組みだ?
まあそんな事は考えても仕方ないか。次はモンスターに試してみよう。
ちょうど、コボルトがこっちに歩いてきた。
こっちに気がついていないコボルトの足に向けナイフを放つ。
発動:『投擲』
綺麗な軌道でコボルトに向かっていき、足に命中する。
「バウ!?」
突然の足の痛みに驚いている。足に刺さってはいるが、そこまで傷は深くなさそうだ。やはり、モンスター相手だと牽制にしかならなそうだな。荷物は重くなりそうだが鉄球なんかを使っても良さそうだ。
そんなことを考えながら、足の痛みに困惑しているコボルトにトドメを刺す。
悪くないスキルだ。今後も大いに役立つだろう。
さて、スキルも試したし森林エリアに行くか。
そうして、俺は森林エリアの探索に向かった。




