5話
ピピピピ
昨日セットしていた目覚まし時計の音が寝室に鳴り響き、意識が覚醒する。
昨日の疲れは完全に体から消え去っている。冬場特有の布団の魅惑に打ち勝ち体を起こす。
閉じ切っているカーテンを開け、朝日を体いっぱいに浴びる。気持ちいい朝だ。
いつもの様に朝食を作り、食べ始める
「いただきます」
朝食を食べながら、影操作を発動させる。昨日より実体化することができたが、まだ実践で使うことはできない。ご飯を食べながらスキルを鍛える。
「ごちそうさまでした」
朝食を食べ終え、さっそくダンジョンに行く準備をする。今日は、懐中電灯を持っていこう。
探索道具を準備し、靴を履き玄関の扉を開ける。
「いってきます」
恒例の挨拶を済ませて、ダンジョンに向かう。駅に着き、電車に乗りながら今日初めて行くエリアの情報をスマホで調べる。どうやらそのエリアは森林のエリアと呼ばれているらしい、一応道のような物があるらしいが迷うかもしれない、ギルドでダンジョンで使えるコンパスと地図が販売されているようだ。買っておこう。
出現するモンスターはゴブリンと獣系のモンスターらしい、ゴブリンは複数でいることが多いらしいから注意しておこう。
ダンジョンの最寄り駅に着き、再びダンジョンに向かう。
ギルドに着き、販売部でコンパスと地図と昼ごはんを買い、鞄に入れる。
ダンジョンに入るために窓口で申請をする。昨日の鈴木さんはいないようだ。
「探索申請をお願いします」
「かしこまりました。身分証の提示をお願いします」
身分証を渡す。窓口の人は手元の機械にスキャンさせている。
「手続きの方、完了いたしました。身分証をお返しします」
「ありがとうございます」
すごく事務的だな。まあ、そっちの方がいいけど。
身分証を受け取り、ダンジョンに入る。今日は、初めてのエリアだし気を引き締めていこう。
地図を確認しながら森林エリアを目指す。草原のエリアを横断しながら歩き、少しすれば森が見えてきた。もっと不気味な雰囲気かと思っていたが、とても神秘的な雰囲気を放っている。例えるなら、妖精が住んでそうな森だ。まあ、いるのがゴブリンだしな。
そんなことを考えていたら、あっという間に森の入り口に辿り着いた。槍を握っている手を無意識に強く握る。焦らず行こう。
意を決して森に入る。中に入ってみれば、外から見た様子と変わらない。
上を見れば木々の間から射す木漏れ日、風が吹き木々がざわざわと騒ぎ立てる。ここがダンジョンでもなけばハンモックでも使って、昼寝したくなるような景色だ。それに、これならスキルも問題なく発動するだろう。
ガサッ
何かがこっちに来る。
緩んでいた気を一気に引き締めて、音が聞こえてきた方に槍の刃先を向ける。
さっきまでは小さかったはずの葉が擦れる音が大きく感じる。
数秒経ち、こっちに向かって来ていた奴の正体が露わになる
イノシシだ。ただのイノシシに見える。
そのイノシシは俺の姿を確認するや否や、体当たりを仕掛けてくる。
少し呆けていたが、気を持ち直しスキルを発動する。
発動:『影操作』
イノシシの進行方向の影を動かす。イノシシを不安定な足場を走らせ転倒させることに成功する。よし。
イノシシは頭から土に突っ込み止まる。
今がチャンスだ。転けているイノシシの心臓に槍を突き立てる。イノシシは体を少しの間痙攣させ動かなくなる。
フゥ
初めての相手にしては中々手際が良かっただろと自画自賛する。
イノシシのドロップアイテムを確認すると、毛皮が落ちていた。鑑定してみよう。
発動:『鑑定』
《ワイルドボアの毛皮。通常のイノシシの毛皮とそこまで差異はない》
さっきのモンスター、ワイルドボアっていうのか。イノシシの方が呼びやすいしこれからもイノシシと呼ぼう。
毛皮をカバンに入れ再び歩き出す。次はゴブリンを見つけたい。
こんな広い森でゴブリンが見つかるか不安だったが、案外早く見つけることができた。しかも周囲を見渡す限り1匹だ。
まずは鑑定だ
発動:『鑑定』
《ゴブリン。力はコボルトと対して変わらないが、稀に武器を持った個体がいる》
目の前のゴブリンは武器なんて持ってないが、武器を持った個体がいるのか。気をつけておこう
音を立てずゴブリンの背後に近づく、そのまま喉に槍を突き刺す。
「ゴフッ」
ゴブリンは声を出そうにも喉が潰されていて声を出せないでいる。暴れようとしているゴブリンの体を槍ごと持ち上げ動きを封じる。少しの間空中でジタバタしていたが、直ぐに四肢がだらんとなり力尽きる。
よし、静かに殺せたな。これからは他に仲間が居なそうならこうやって殺そう。
槍に刺さっている死体が光の粒子になって消え、ドロップアイテムが現れる。
ゴブリンの耳が落ちている。うわぁ触りたくないなぁ。
念の為持ってきていたビニール袋を使いゴブリンの耳を回収する。これは一体いくらになるんだろう。
お腹空いたな。
腕時計を確認するとちょうど昼時だった。いい時間だし、買っておいた昼ごはんを食べよう。一回森を出て草原エリアに行こう。見晴らしがいい方がモンスターの接近に気付けていい。
草原エリアでご飯を食べ始める。おにぎりが何個か入っている弁当だ。味も中々悪くない。
そういえば、ゴブリンを持ち上げた時少し軽く感じたな。レベルアップした影響だろうか。
そうだ、ステータスの確認しておこう。
「ステータス」
【名前】冬野礼司 Lv6
【称号】
【スキル】『影操作』『鑑定』『回復』
おお! レベルが上がってる。新しいモンスターを倒したからか? よくわからないな。
「ごちそうさまでした」
動いてお腹が空いていたからあっという間に完食できた。
探索を再開しよう。
再び森林エリアに入る。
それから、1匹でいるゴブリンを3匹程倒すことができた。初めてのエリアでこれだけできれば上出来だろう。今日はここで終わろう。
ギルドに向かう。
ギルドに向かう途中、高校生ぐらいの探索者がちらほらいる。やっぱり高校生になったから探索者になる奴は多いのだろうか。
見ればパーティを組んでいる奴らが多くないがいる。
「仲間か・・・・・・・・」
俺には無理だな。他人に命を預けるより自分が強くなって強いモンスターを倒した方が良いと思ってしまう。
色々なことを考えていれば、気づけばギルドについていた。
買取をしてもらおう。
「合わせて、3,200円になります」
内訳としては、ゴブリン4匹で1,200円、イノシシ1匹で2,000円らしい、イノシシが高いのは毛皮の値段と報奨金を合わせた額だかららしい。
やる気が出てきた。明日からも頑張っていこう。




