26話
あらためて思うが、こういう洞窟には宝箱なんかがあるのが定番なんじゃないのか。
今更だがダンジョンには宝箱なんて物もあるらしい。一度も見た事はないんだが、これは俺の運が悪いのか、それとも、もっと下の階層に行かないと無いのか、どっちなんだろうか。
まあ、ダンジョンを探索していればいずれ見つける機会もあるだろう。
そんな事を考えながら、洞窟エリアを歩く。
敵を避けながら進むのもあり、少し歩みが遅い。あの骸骨ぐらいなら何体相手にしても体力なんて使わなそうだが、命がかかってるんだしこれぐらい慎重になっても良いだろう。
結構な距離を進み出口までもうすぐなところまで来る。
何か、おかしい。さっきから、骸骨が一匹も見当たらない。いつもなら一匹ぐらい出口の周りにも居るはずなのに、今日はそれが一匹もいない。
違和感を感じた俺は出口に向かって走る。違うエリアに入れば、とりあえずは大丈夫だろう。
発動:『危機感知』
まずい!! スキル発動の感覚と共に身体中にものすごい悪寒が走る。早く、洞窟を出るためにスピードを上げる。
目の前が真っ暗になる。
何が起こった? 敵の攻撃か?
とりあえず、すぐに取り出せるようにしていた懐中電灯をつける。
つけるが、スイッチを何度入れても全く反応しない。電池は満タンで、点検もして壊れていないのは確認したはずだ。
どういう事だ。とりあえず、壁の方に寄って壁伝いに移動しよう。
幸い、夜灯の槍のおかげで俺の周りは少し見える。暗闇を優しく照らし続けるってこういうことね、普段では役に立たないけど今の状況ではこの光が頼りだ。
確か、こっちに壁があるはずだ。今の自分の位置を思い出し、周りを警戒しながら壁に歩き出す。
ザッ、ザリッ、ザクッ
横から何かが走ってくる音が聞こえる。モンスターだ。槍を音のした方に構えながら警戒する。
発動:『プロテクション』
『プロテクション』を発動して目の前に壁を作る。
ガンッと音を立てて、何かがぶつかった音が洞窟内に響き渡る。
情報が少ない。今の内に鑑定だ。おそらくモンスターが居るであろう場所に向かって鑑定する。
発動:『鑑定』
《光喰らい。ユニークモンスターの一体で二足歩行する狼のような見た目をしている。周りの光を吸収して自分の周りを暗闇にしてから鋭い爪で獲物を仕留める。目は見えないが異常な程に高い聴覚と嗅覚を用いて獲物の位置を特定する》
よし!! ちゃんと鑑定できた!! 鑑定結果を読むが、またユニークモンスターか!? この短期間で何度出会えば良いんだ!? い、いや落ち着け今はそんな事を考えてる余裕はない。
発動:『気配隠蔽』
これで、とりあえずは見つからないだろう。相手の姿が見えない以上こっちから近づくのは危険か?
まずは、壁に移動しようと再び歩き出す。
「アオーーーーーーーーーーーーン!!」
!?
なんで急に遠吠えを?
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
光喰らいは明らかにこっちに向かって走ってくる。なんで!? 『気配隠蔽』はまだ発動しているはずだ!!
早く『プロテクション』を、
発動:『プロテ「うぐっ!!!」
クソ! 間に合わなかった!! 切り裂かれた脇腹から、すごい痛みが伝わってくる。幸い、周りが少し見えるのもあり一応は反応できたのもあり、傷はそこまで深くない。次の攻撃が来る前に壁の方に走る。まだ『気配隠蔽』の効果は続いてるから、音は出ない。
発動:『回復』
壁に着くと急いで『回復』を使う。いつものように淡い光は出てこないが脇腹から痛みが引いていく。
なにが起こった。確かに『気配隠蔽』は発動していた。俺の位置がわかった理由は直前の遠吠えが関係しているはずだ。考えろ。
・・・・・・・・・・・・・・・エコーロケーション!! いや、だがそれしかあり得ない。まじかよ!! 鑑定結果の異常な聴覚ってこれのことかよ! 説明が足りないんだよ!!
それがわかったなら、少しは準備ができる。次に遠吠えをしたら、カウンターを狙ってみよう。
「アオーーーーーーーーン!!」
きた!! こっちに近づいて来る足音が聞こえる。
今だ!! 槍を前に思いっきり突き刺す。
「ギャウン!?」
突然、反撃されたことに驚いたんだろう。声を上げて、後ずさった音が聞こえた。ざまあみろ、クソ犬が!
しかし、手応えを感じたが傷は浅そうだ。暗闇だから、上手く狙いをつけられない。
どうするか、このまま同じ方法を続けていたらいずれこっちがやられそうだ。作戦を考えないと。
・・・・・・・・・・・やるしかないか。周りの地形を思い出し、角になっている所を探す。
早くしないと、次の遠吠えが来る。確かここら辺だったはずだ。
あった! 角になっているところだ。洞窟の角に立ち、クソ犬が攻撃してくる方向を限定する。この作戦の要は俺の反射神経だ。自分を信じてやるしかない。
「アオーーーーーーーン!!」
遠吠えだ。作戦開始だ。相手に警戒させないためにさっきとおなじ
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
来た、前からクソ犬が走ってくる。作戦通りだ。どんどん、足音が近づいてくる。
まだだ。まだ我慢しろ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、瞬間、俺の視界に獣の爪が映り込む。今だ!!
発動:『プロテクション』
目の前に半透明の壁が現れる。いつもなら盾の役割を持つ壁がいまは拘束具としての役割を果たしている。
クソ犬の爪が俺に当たる寸前で止まっている。ふう、危なかったが、作戦成功だ。
「ガウ!!」
目の前で、クソ犬がプロテクションの壁から抜け出そうと懸命に暴れている。事前にモンスターを拘束できるかの実験をしていたが、怖かったな。
壁が壊れるかもしれないし、早くとどめを刺してしまおう。
槍を強く握り、目の前に拘束されているクソ犬の頭がある位置を夜灯の槍の光を使い確かめて、思いっきり突き刺す。
「ギャウ!?」
光喰らいは驚きの声を出して、さらに暴れるが少しすれば振り回していた腕の勢いは衰えていき、ついにはぐったりと力尽きる。
光喰らいが力尽きると同時に暗闇が晴れ、周りが見えてくる。
やっと倒れてくれたらしい。こんな見た目をしてたのか、思ったよりでかかったな。
しばらくすれば、光喰らいの死体は光の粒子に変わっていきドロップアイテムが現れる。
ドロップアイテムを拾い上げ、確認する。今回のドロップアイテムは指輪のようだ。装飾に黒い宝石のような物がついている。これはどんな効果があるんだろうか。
ドロップアイテムも持ったし、今日は帰ろう。流石に疲れた。
疲れた体をなんとか動かし、ギルドに帰った。




