12話
結局、あれから半魚人を一匹も狩れなかった。というのも、そもそも一匹で行動している半魚人が極端に少ない気がする。たまたま、今日は運が悪かっただけか?
2匹以上と戦うのは流石にまだ、準備が足りない気がする。
うーん、どうするか。もうちょっと探索してみて見つからなかったら帰るか。
数十分後
いた。一匹で行動している奴だ。
戦う前に『影操作』を使い、槍の長さを伸ばす。
発動:『影操作』
槍の穂に影がまとわりつき、形が変わる。これでよし。
どうせ半魚人に奇襲はできない。正面突破だ。
隠れていた草むらから姿を出し走り出す。さっきと同じようにカバンからナイフを取り出し、半魚人の手に投げつける。
発動:『投擲』
「ギィ!?」
腕には刺さったが槍を落としていない。だが、少しのスキはできた。
この隙に、一気に距離を詰める。半魚人は反撃しようとしてくるが、槍を長くした分、こちらの攻撃の方が速く届く。
半魚人の胸を槍が貫き、黒っぽい色の液体が槍を汚す。
それでも、半魚人は最後の抵抗として未だ手に持ったままの槍で攻撃しようとしてくる。
やばい!!
慌てて半魚人を突き飛ばし距離を空ける。
突き飛ばされた半魚人は仰向けに倒れ、そのまま動かなくなった。
しばらくすれば、光の粒子に変化してドロップアイテムを残して消えていった。
よし、怪我なく倒せた。
二匹しか狩ってないが、新しいエリアなのもあって疲れた。今日はもう帰ろう。
静かに息を吐き足を動かす。今朝来た道を思い出しながらギルドに帰る。
草原エリアを歩いていると、前から人が歩いてくる。この前の女じゃないだろうな。姿を確認する。
どうやら違うみたいだ。
向こうから歩いてきたのは、プラチナブロンドの髪色をした女性だった。
十人が見ればその全員が美人と答えるだろうほどその女性は顔が整っている。下手な芸能人より顔がいいだろう。太陽の光に照らされ光り輝く髪、引き込まれそうなほど澄んだ青色の目、それら全てがその女性の美しさを際立たせている。まるで童話に出てくる聖女のような見た目をしている。
そんな女性を見て俺は心底、
気味が悪い
と思った。
そもそも俺は通りすがりの人の容姿を事細かに観察するような人間だったか? ましてや、
ここはダンジョンだ。
こんな危険な場所で俺は綺麗な女性がいたからといって一瞬でも周囲の警戒を怠るような人間だったか?
やはり、気味が悪いな
まるで、強制的にあの女性に意識を持ってかれたようだった。
そういうスキルか? あるかどうかはわからないが『魅了』なんてスキルがあっても不思議じゃない。
だとしたら、気をつけないと。幸い、意識をしっかり持っていれば大丈夫そうだ。
心を落ち着かせ、再びギルドに向かった。
数十分後
ギルドに着き、買取課の窓口に行き買い取ってもらう。
「買取をお願いします」
そう言って、半魚人の鱗を2枚カウンターに乗せる。
「はい、かしこまりました」
窓口の職員は奥に引っ込んでいき、しばらくして帰ってくる。
「こちら深海の影の鱗、二枚で3,000円になります」
一枚1,500円か、ちょっと安い気がするがこんなものか。
お金を受け取り、足早に家に帰った。




