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ソロ探索者、ダンジョンに潜る  作者: 西校


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1話

 

 5年前のある日、後に『大災害』と呼ばれる出来事が起き世界は激変した。


 世界各地に現れたダンジョン、そこから溢れ出すモンスター達、最初は混乱していた国々もそれぞれがモンスターの対策に打ち出し混乱を収束させていった。

 

 その対策の一つが探索者制度だ。ダンジョン内でモンスターをある程度倒してしまえば、ダンジョンから溢れ出ることを防げることが発覚した。そして、民間人でも、ダンジョンに入れるようになり、そこで倒したモンスターの素材などを政府が買い取るという制度ができた。

 

 ピピピピ


 春休みの朝、目覚まし時計の音が部屋に響き俺は目を覚ます。ベッドから起き上がり身支度を済ませて、リビングに降りる。


 リビングを見渡しても誰もいない。それも当然だ、俺は一人で暮らしている。両親は5年前の大災害で他界したからだ。共働きだった両親の職場がダンジョンが出現した場所に近かったのが原因で二人共モンスターに殺された。悲しくなかったと言えば嘘になるが、両親とはあまり仲が良くなかったからあまり悲しみを感じなかった。


 1年前までは母方の祖父に面倒を見てもらっていたが、その祖父も他界し、現在では祖父や両親の遺産を使い暮らしている。


 これまでの出来事の思いを馳せながら、朝ごはんの支度を始める。朝はやる気が出ないから食パンと目玉焼きで済ませる。朝ごはんの支度を終え食卓に並べ、食事を始める。


 テレビをつける。


「モンスターの生態はまだまだわからないことだらけで・・・・・・・」


 朝のニュース番組では、モンスターの生態について特集をしている。5年前の大災害では、このモンスターによって多くの死者が生み出された。中には銃が効かない個体もいるらしい。


「やっぱり、自衛の手段は欲しいな」


 そんな、独り言を呟きながら洗い物を済ませる。今日は、探索者になるためにダンジョンに向かう。


 探索者になる目的は自衛の手段が欲しいのと、単純にお金が欲しいからだ。頼れる親戚もいない俺は自分で稼がなくてはならない。両親や祖父の遺産があるとはいえ、急に必要になるかもしれない。


 そういう時のためにも、お金を貯めておきたい。


 戸締りの確認を済ませて、玄関で靴を履き外に出る。


「いってきます」


 習慣付いたあいさつ済ませ扉の鍵を閉め、ダンジョンに向かう。家からダンジョンは、少し距離があったが電車に乗ればすぐに着いた。


「ここが、ギルドか」


 もう少しで、探索者になれると思うと思わず、独り言を呟いてしまう。今日は平日だからか、人が少ない。


 ギルドとは、探索者のサポートや管理をするために国が運営している施設で素材の買取りや武器の販売などもここでやっている。


 まずは、受付の人に話しかけないと。


「あの、すみません」


「はい、探索者になりにこられた方ですか?」


「そうです」


「では、こちらに名前と年齢と住所と電話番号をご記入ください」


 そう言って受付の人が渡してきた用紙を受け取り記入をした。


「書けました」


 受付の人に記入した用紙を渡す。受付の人は、受け取った用紙に目を通す。


「はい、確認できました。では次に、本人か確認できるものをお持ちですか?」


「はい、これで大丈夫ですか?」


 そう言って、マイナンバーカードをカバンの中から取り出す。


「はい、問題ないですよ。では、お預かりします」


 受付の人は手元にあった機械にカードを読み込ませている。少し時間が経った頃、受付の人が顔を上げる。


「ありがとうございました。こちらお返し致します。では、最後にこちらをお読みいただき、ご理解いただけましたら、サインをお願いいたします」


 そう言って受付の人は、もう一枚紙を渡してくる。そこに書いてある事を要約すれば、命に関しては自己責任、ダンジョンで問題を起こせば処罰される、政府の作戦に協力してもらうことがあるかもしれない、という事だった。

 用紙に書かれてあった事を理解し、サインをして受付の人に返す。


「はい、ありがとうございます。案内する者が参りますのであちらに座ってお待ちください」


 受付の人は病院の待合室のような場所を指差す。


「わかりました。ありがとうございました」


 礼を言い終え、受付の人に差し示された場所に向かい近くの椅子に腰掛け、スマホを触り時間を潰す。10分ぐらい経ったころ、急に話しかけられる。顔を上げると綺麗な20才程の女性が立っていた。


「失礼します。冬野礼司(ふゆのれいじ)様でお間違いないでしょうか?」


「はい、間違いないです」


「そうですか、私は今から案内をさせて頂く川崎麻美(かわさきあさみ)と申します」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 急に話しかけられ、困惑しながらも返事を返す。


「では、案内いたしますので付いてきてください」


 そう言って歩き出した川崎さんについていき、施設の案内をしてもらう。


「まず、こちらが販売課になります。冬野さんは、今日は武器をお持ちになってきておりますか?」


「いえ、ここで買えると聞いたので」


「はい、可能ですよ。折角なら今から購入なさいますか?」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 近くにあった初心者におすすめと紹介されているナイフと槍のセットを手に取る。値段は結構するが、貯金していたお金を使えば余裕で買える金額だ。とりあえず、これにするか。もし合わなかったら変えればいい。


 あと、初心者セットと書かれたプロテクター1式が入っているセットも買っておこう。これで、お金も結構使った。まあ、必要経費だろう。会計を済ませ、ナイフは腰のホルスターに、槍は背中に背負い川崎さんの所へ行く。


「お待たせして、すみません」


「いえ、お気になさらないでください」


 川崎さんは、笑顔で答えてくれる。おそらく、営業スマイルだろう。


「それでは、施設の紹介を再開いたしますね」


「はい、よろしくお願いします」


「次に、あちらが買取課です。ダンジョンで倒したモンスターが落とした物などの買取を行ってくれます」


 市役所のような窓口が沢山並んでいる。


「最後にダンジョンの案内をいたします。ダンジョンに入られた方は、稀にスキルを得る事はご存知ですか?」


「はい、知っています」

 少し緊張する。目の前には大きな門のような物がある。ここがダンジョンの入り口だろう。


「では、ダンジョンに入っていきます。入ってすぐは安全地帯なのでご安心ください」


 川崎さんと共に門を潜って行く。


 さっきまで浴びていた人工の光とは逆に自然の光が俺の目を焼き、暖かい風が頬を撫でる。門を潜った先には、草原が広がっていた。上を見ればどこまでも続いてそうな青空。すごいな、少し感動した。


「冬野様、よろしいでしょうか?」


 目の前の景色に呆けていた俺に川崎さんが話しかけてくる。


「はい、なんですか」


「スキルを確認する方法はご存知ですか」


「知ってます。事前にネットで調べてきましたから」


 よし、確認するか。


「ステータス」


 すると、視界に半透明なウィンドウが表示された。


【名前】 冬野 礼司 Lv 1

【称号】

【スキル】『影操作』『鑑定』


 マジか、スキルが二つも。


「あの、冬野様。スキルがある方が少ないので、そんなにお気になさらないでください。それにLv5になれば誰でもスキルを得ることができますし」


 川崎さんは呆けている俺の様子を勘違いして、励ましの言葉をかけてくれる。


「あはは、ありがとうございます。そういえば、スキルを複数貰った人っているんですか?」


 さりげなく川崎さんに聞いてみる。


「記録されている限りだとそのような事例は無かったと思いますが。どうかなさいましたか?」


「いえ、少し気になっただけです」


 このことが、バレたら面倒くさいな。隠しておこう。


「それでは、案内はここまでとさせていただきます。冬野様、お気をつけて」


「ありがとうございました。頑張ります」


 川崎さんが門を潜るのを見送り、歩き出す。とりあえず、周りに人がいないところでスキルを試したい。


 人気のない場所に移動し、スキルを発動する。発動するには念じるだけでいいらしい。


 発動:『影操作』


「うお!」


 俺が立っている地面が()()()。いや、動いていたのは地面ではなく影の部分だ。


 なるほど、影を物理的に干渉できるようにできるのか。・・・・・・・だが、これだけか?いくら動かそうとしても影は少し蠢くだけ。まあ、スキルは使い続ければ成長するらしいし、これからだろう。それに、全く使えないわけではないし。


 よし次は、鑑定を使ってみよう。とりあえず、近くの草を見てみよう。


 発動:『鑑定』


 目の前に半透明のウィンドウが出現する。


《草》


 は?これだけ?何度か鑑定してみよう


《草》

《草》

《草》


 なんか、笑われてるみたいでむかついてきたな。


 よし、今後に期待‼︎


 スキルの検証も済んだことだし、モンスターを倒してみよう。事前に調べた感じだと、ここら辺で出現するモンスターは確か、コボルトだったと思う。一匹でいる個体を探してみよう。


 少しの時間、探索しているとコボルトを一体見つける。モンスターに鑑定した場合どうなるか確認してみよう。


 発動:『鑑定』


 《コボルト》

 

 予想通りの鑑定結果を確認し、草に身を隠しながらコボルトに近づいて行き、完全に背後を取る。そして、手に持った槍をコボルトの心臓目掛けて突き刺す。


「ギャう!」


 コボルトは驚きながらも、何が起きたか確認しようとしている。


 抵抗しようとしているコボルトに対して俺はさらに槍に力を込める。ボキッと手に嫌な感触が伝わるが手の力を緩めない。少しすればコボルトは力尽きぐったりと倒れる。


「はぁー」


 コボルトが確実に死んだことを確認し、大きく息を吐き気を緩める。少し時間が経つとコボルトの死体が光の粒子となって消えて行く。元々コボルトの死体があった場所には、コボルトの歯が落ちている。それを拾い上げ、観察して見る。


「これが、ドロップアイテムか」


 これをギルドで買い取ってもらえるらしい。一応鑑定してみよう。


 発動:『鑑定』


 《コボルトの歯》


「まあ、だよね」


 ガサリという、誰かが草を踏み慣らしこちらに近づいている音が聞こえる。即座に気を引き締めて音のする方を見ていると、コボルトがこっちに来ている。さっき倒したコボルトの仲間だろうか。隠れる場所を探すが、そんな事をしていたらコボルトに見つかってしまった。


 コボルトはこちらに走って向かってくる。

 落ち着け、相手とは少し距離がある。スキルを使ってみよう。


 発動:『影操作』


 走ってくるコボルトの足元の影を動かして前向きに転倒させる。


 ぶっつけ本番でやってみたが、思ったより上手くいくもんだな。


 転倒したコボルトの頭に穂先を向け、槍を突き刺す。突き刺されたコボルトは体をビクンと一度、痙攣させ起き上がってこない。少し時間が経ち死体が光の粒子に変わり、コボルトの歯が出現する。


 疲れた、今日のところはこれで終わりにしよう。初めてにしては良い成果だろう。そういえば、人型の生き物を殺したのにそこまで感情が動かなかったな。そんな事を考えながらギルドに向け、歩き出す。


 少し、歩いた頃。どこからか戦闘音が聞こえてきた。少し気になるな。見てみるか。あたりを見渡せる少し高い場所に行き、音が聞こえる方向を持ってきていた双眼鏡で観察してみる。誰かがコボルト10匹に囲まれ戦っている。俺は少し考える。


 よし、無視しよう。


 ダンジョン内での命は自己責任だし、俺が助けに行ってもミイラ取りがミイラになるだけなように思える。


 助けを呼ぼうにも、ギルドはそういったことをやってない。俺にできることはないな。


 そもそも、なんで10匹もコボルトに囲まれているんだ?まあ、いいや。


 再び、ギルドに向かって足を進める。


 ◇

 

 無事、何事もなくギルドにつくことができた。


 コボルトの歯を買い取ってもらうために買取課の窓口に向かう。


「すみません、買取をお願いしたいんですけど」


「では、売却したい物をカウンターの上にお乗せください」


 その言葉に従いコボルトの歯を二個カウンターの上に乗せる。


「お預かりします。確認してきますので、少々お待ちください」


 そう言って窓口の人は、奥の方に消えて行き、数分して帰ってきた。


「コボルトが二匹で400円になります」


 お金を受け取る。コボルト一匹で200円か命をかけた値段にしては安い気がするがこんなものか。そんなことを考えながら外に出る。


 ふと確かめたいことがあるのを思い出し、すれ違う男性向けて鑑定を発動する。


 発動:『鑑定』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・何も起きない。やはり人を鑑定することはできないようだ。しかし、使い続ければ鑑定できるようになるかもしれない。要検証だな。後は帰りながら街中のものを鑑定し続けよう。成長するかもしれない。


 ◇


 無事、家に帰ることができ安心する。急に今まで溜まっていた疲れが押し寄せる。


 寝室に向かう。


 着替えることも忘れ、そのままベッドに倒れ寝てしまった


『影操作』

・スキルの名前の通り、影を操る事ができるスキル。

・影の形を変えれたり、影を実体化させる事などができる。

・主人公がコボルトを転倒させれたのは影を少しだけ実体化し動かして、コボルトの足場を不安定にしたから。

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文章がスッと頭の中に入ってきて想像しやすいです! 三点リーダーは「・・・」この表記ではなく、「……」のように二つで一つとして扱うと、もっと読みやすくなるかと思います。せっかく素晴らしい文章なので、でき…
>なんか、笑われてるみたいでむかついてきたな 大草原不可避 影と鑑定とか勝ち確スキルだよ、やったね! 成長させたらエグい性能になるんだろうね
影を揺らしたら何で転倒するの 急に足元が不安定になるってなに?物理的な効果があるの? そしてそれを使う主人公の心理も分からん スキルを持ってたら使い方が分かるタイプのスキルなのか、試してみようと思った…
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