birthday
「くろのす、たんじょうび、おめでと」
ベッドの中。不意に、あいがそう呟く。今日は3月20日、私の―――メタな事を言うと、作者の―――誕生日だ。
誕生日とは言っても、確証も自覚も無い。そもそも私が生まれた頃は日付なんて概念は確実に無かっただろう。因みに、誕生日は太陽暦の1年の周期を辿って私の自我の覚醒を基準に決めたが、もしかしたら自我の覚醒より前から存在していたかもしれない。って言うか、そっちの方が可能性としては高い。それに、長生きし過ぎた弊害なのか、誕生日が来てもあまり実感が沸かない。
…けど。
「…ありがと」
悪い気分ではない。誰かに何かを祝われるのは。
自分にとって無意味でも、自分で自分に価値を見出す事が出来なくても。相手が自分に意味を、価値を、見出してくれている気がして。
それに。
今日はあいの、あいへの気持ちを実感して、理解して、受け止めてから、初めての誕生日だ。家族とか仲間とか、特別な人なら皆そうだけど。特に、好きな人に祝われて、嬉しくない訳が無い。
今年の誕生日は、いつもより特別な日になりそう。
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