世代交代
「…そうか」
齢92になる雇い主が、そう呟く。
「今まで、よく頑張ってくれた」
本当は、嫌なのだろう。ボク達は、此処の最古株で、一番の稼ぎ手だ。
「アメとユキが、後釜になりたいと言っていました。ボク達が居座り続けるのも不健全かと思い…それと、少々、疲れてしまったので」
「分かってるさ、お前たちのことを何年見てきたと思ってる?半世紀以上だぞ。俺の事は気にすんな、お前達の進みたい道に進めばいい。ははっ、本当に見た目変わってねぇなぁ」
ボスの鼻には、酸素チューブが繋がっている。電子音が、一定のテンポを刻む。もうあまり長くないだろう。
それでも、纏う雰囲気は今でも変わっていなかった。
「なあ、進みたい道に進めとは言ったが…良かったら、うちの教育係にならないか?」
「「教育係?」」
「ああ。うちには、若いのがいっぱい居る。そいつらに、お前たちの技を少しでも教えてやってほしいんだ。勿論、バイトという形になるから、給料もちゃんと出る。流石に今までよりは少ないがな」
「「…喜んで」」
そう言うと、ボスは笑って、頭を撫でてくれた。
昔からそうだった。ボク達がその日の仕事を終えた時、いつもより面倒な仕事から帰ってきた時、ボスはいつもボク達の頭を撫でてくれた。
「…大きくなったな」
1分くらい、頭を撫でられ続けた。
きっとこれが、最後になるだろう。
「別で1つバイトを掛け持ちする予定なので、毎日は来れませんが…可能な限り、来るようにしますね」
「…ありがとう。組織の後のことは孫娘に任せている。ガサツなところはあるが、いいヤツだから…」
「「あ…!」」
「…いかん、眠くなってきた。そろそろ迎えが来たかな。アイツのこと、時々で良いから面倒見てやってくれ…」
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「…お忙しい中、祖父の葬式に来て下さり、有難う御座います」
「ぜーんぜん気にしないで!ボク達が忙しいのって基本的にバイト掛け持ちしてるからだからさー」
「親しい人間の死は、いつまで経っても慣れないものだねぇ…」




