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第7話 ディオスの直感 ☆

「ねぇディオス? この辺で一旦休憩した方がいいんじゃない? ほら……出血もすごいし」

「……おう、そうだな」


 C級ダンジョンを離脱したディオスたちは、休憩のために手頃な場所で腰を下ろした。

 ディオスは血で染まった袖をまくる。


「おいアリアン、回復」

「かしこまりました」


 回復魔法を傍目(はため)に、傷口を――血を、デリータに見られなくてよかったとディオスは思う。

 

 パーティから追い出した結果がこれなどと思われたら、腹が立ってどうしようもないのだろう。

 

 一息ついて、テュアが開口した。


「……ねぇ、ダンジョンでの戦い、いつもと違うくなかった? なんかこう、やりにくいっていうか……」

「テュアさんもそうでしたか。実はわたくしもまったく同じことを考えておりました……なぜなんでしょう?」


 回復を終えたアリアンが座り直して答える。ディオスも続けた。


「立ち回りだって特に大きなミスはなかったよな? そら盾役たてやくが変わったんだから多少のぎこちなさは残ってるけどよ」

「ご、ごめん。僕が不甲斐ふがいないばかりに……!」


 新しくパーティに加入した盾役が申し訳なさそうに謝罪する。


 するとアリアンは彼に慈愛じあいを込めた微笑びしょうを向けて、


「あなたさまが気を病む必要はございませんよ。まだ盾役としてパーティに合流した初日ですし、この違和いわも日にちをるにつれて徐々に解消されていくでしょうから」

「そうね。少なくとも前の盾役――大仰おおぎょうな名ばかりのスキルで大した活躍もできなかったデリータなんかよりも数十倍は動けてると思うわ。ディオスもそう思うでしょ?」

「……ああ、そうだな。初日なんかこんなもんだろ」


 口にするディオスだが、腹の中はそう穏やかではない。


 彼はそれを見せないように、ぶっきらぼうに言って立ち上がった。


「そろそろギルドに戻るぞ。あのダンジョンのモンスター狂暴化は……ブルームレイの野郎が思ってるよりも相当危険だって報告しねぇと」


 いや、本当はそんな報告などどうでもいい。


 それよりもディオスが気になっているのは、盾役の無能っぷりだ。

 デリータの完全上位互換であるにもかかわらず、正直なところ――奴よりも盾役としての機能は遥かに劣っている。


 Cランクまで上りつめたディオスの直感は薄々気づこうとしていた。これが加入初日ならではの違和だとか、チームワークのつたなさだとか、そんな言葉でつくろえるほどの話ではないと。


 だが、そう認めるのは嫌だった。信じるのも絶対にお断りだった。


 歩き出す直前、ディオスはメンバーに背を向けて問う。


「……なぁ、Cランクの俺らが苦戦してるんだ。あの無能が――デリータのクズが苦戦しない訳がないよな?」


 テュアとアリアンがさも当たり前のように答えた。


「そりゃそうでしょ。ディオス、彼が無能であることはあなたがよく知っているはずだわ」

「ええ、きっと先の顔合わせが……わたくしたちの最後の顔合わせになってしまったことでしょう」


 ディオスは胸を撫でおろし、嫌な想像を踏み潰すように歩き出した。


「……だよな。帰るぞ」

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