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絵師な彼女の愛は重い  作者: 菊理
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第6話 担当編集は知っている

 

 吹上慎吾、54歳、そして瑞希の担当編集。

編集者としての歴は長く、大ベテランといえる。瑞希と慎吾は約2年くらいの付き合いになる。

 瑞希の書いた小説を見い出し、商業作家の道へと進めた人物。

 そんな彼が、唐突に瑞希に通話をかけて来た。


「それで、どうかしたんですか?」


「……瑞希くん、君はこの後何か予定はあるかい?」


 瑞希の問いには答えず、逆に質問を返してくる。


「?……特にないですけど。」


「じゃあ最初は少し雑談でもしようか。時間があるなら、少しくらい本題に入る前に話すのも良いだろう?」


「まぁ……良いですけど。」


 少し間があってから答える。


「私と話すのは不満かい?それならさっさと本題に入るけど。」


 別に瑞希としては彼と話すのは嫌と言うわけではない。なんならタメになる話をしてくれることもあるし、結構有意義だったりするので、雑談するのは全然アリなのだ。

 ただ何か本題があるのなら、そちら方を話して欲しいと思っているだけだ。


「いや、不満ではないですよ。慎吾さんの話を聞くのは、楽しいですし。」


「おや、嬉しいことを言ってくれるね、もう歳だか、そんな事を言われると思わず心が躍ってしまうよ。」


 心なしか、声色が嬉しそうなものへと変化する。


「そうですか。」


「そういえば瑞希くんは夏休み、何処か行ったかい?」


「それ、答え分かってて聞いてますよね?」


「まぁそうだね。でも、もしかしたらということもあるかもしれないだろう?」


「確かにそうですけど……まぁさっきの答えとしては、友人と2.3回遊びに行ったっきりですよ。後はもうずっと家に居ましたね。」


 夏休み、瑞希はほとんど家にいた。買い物なんかに出掛けることもあったが、それだけである。家に居るときは、執筆したり、本を読んだり、ゲームに誘われれば少しばかりやったり。ただそうして瑞希は夏休みを過ごした。


「あぁやっぱりね。私が言うのもなんだけれど、何処かしら行った方が良い。それか、少なくとも執筆をしない日を設けたりとかね。

君は余りにも色々と事を詰めすぎだ。」

 

「そうですかね?これでも俺は結構休めていると思ってますよ?それに、他には本を読んだりする事くらいしか無いんですよね。」


 あとすることといえば、家事くらいである。


「うーん、瑞希くんがそれで良いなら私から何も言うことはないが、何か有ったら早めに相談してね。個人的なことでも良いからさ、出来る限り力になるから。」


「はい、ありがとうございます。」


 瑞希が礼を言う。

すると、慎吾が思い出したように口を開いた。


「そういえば、もう桜花さんに会ったかい?」


「⁉︎」


「あれ?まだ会ってないのかい?なら今の無しで。」


 なんでこの人は知っているのだろう?

一瞬、驚きのあまり言葉を失う。


「えっ……、なんで、知って……」


 ようやく言葉を絞り出す。


「ん?あぁその反応だと会ったみたいだね。というかびっくりしすぎじゃない?

あとなんで知っているかと言うとだね。

この前彼女と打ち合わせした時に、住所が変わりますって言う連絡が来てね、そこで知ったんだよ。」


 その言葉を聞いて納得がいく。

まさか急にそのことを言われると思わなかったのでびっくりした。

 流石に言い過ぎではあるし、この人に限ってそんなことはないが、一瞬ストーカー?と頭によぎってしまった。多分驚きのあまり頭がおかしくなっていたのかもしれない。

 まぁ何はともあれ納得出来たので言葉を返す。


「なるほど、そうゆうことでしたか。まぁ流石に驚きましたけど。」


「流石に今のは唐突過ぎたかもしれないね。ちょっと反省だね。」


 そういえばと、瑞希が思い出したように話し出す。


「慎吾さん、ちょっと聞こうと思ってた事が有るんですけど良いですか?」


「おっ、なんだい?」


「俺と雪音って結構仲良いと思ってるんですけど。」


「うん、そうだね。」


「今まではまだリアルで会うこともなくて、よく喋るって関係だったけど、これからは変わって行くと思うんですよ。

これって大丈夫ですかね?」


「……別にそれってプライベートだし私がどうこう言う事では無いと思うけど、どうしてだい?」


「いや、俺たちって作家とイラストレーターって言う関係でもあるじゃ無いですか。」


「うん、そうだね。」


「他の作家さんとかに聞くと、そんなに個人的な関わりがある人が少ないらしいんですけど、それってどうなんですかね?」


 瑞希たちの関係は他の人に言わせれば結構珍しく関係だ。だからこそ、こうしてリアルでも関わるようになった今どうなのかなと思った次第である。


「あぁー、成る程そうゆうことね。

確かに君たちのように普段から関わりがあるっていう人たちは珍しいね。でも珍しいってだけでいる人はいる。確かに個人的な関わりがあって、それで仲悪くなって、仕事に支障をきたすなんてことはある。けど稀にあるだけだし、大体そうゆう時はどちらかの性格がちょっとね、って事が多いんだよ。だから大して気にしなくて良いと思うよ?」


「そうですか……」


「うん、それに君たちに限って言えばそんなことは起こんないと思ってるしね。」


「それなら良いんですけど。」


「うん、それじゃあもう良い時間だし本題に入るけどいいかい?」


「はい、大丈夫ですよ。」


「それじゃあこないだ出してくれた原稿のことなんだけど──」


 その後、何時間か話し合って、瑞希の一日は終わりを告げた。

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