ナンバープレート
不定期更新です アイデアが浮かんだ時だけ書きます
「そういえば大竹さんは僕らに用事があって来られたんじゃないんですか」
佐倉は大竹と電子タバコの問題の議論を自然にしていたが、この件でこちらから呼んだわけでなく大竹からの面会が偶然重なっただけだった。
「そうそう実はね、旧政権の前時代から続いている常識の一つを改定する提案を持ってきたんだよ」
「どういった内容ですか、人生党の公約に入っていないほどのレアなことでしたら検討の価値がありますが、そんな簡単な話ではないと思うんですが」
大海は大竹の話にそれほど期待していなかった。
「まあ大したことではないんだけどね。車のナンバープレートに関係するすることなんだ」
「「車のナンバー?」」
「そう、ナンバー。ナンバープレートを装着する意味は何だと思う?」
「それは識別でしょう?違反者の特定とか車検や税金のためにとかですよね」
佐倉は常識として当然とばかりに答えた。
「正解!でもそれは刑法と同じようにナンバーがあるからといって違反や無謀運転が減るわけじゃない。
逆にナンバーを付け替えることで逃げることも簡単にできる。盗難車なんてそうだろ。
だからナンバープレートは任意にする。識別はデジタル技術で容易にできる世の中だしね。
レジに買い物かごを置いただけで精算できるんだよ、車にICチップを付けて交差点各所にセンサーを設置すればいい。信号機の中に入れるのが現実的かな。
ちょっと話がずれるけど、お二人はアメ車とか改造車を所有してきたことありますか」
「いえ、無いですね。芸能人の多くは欧州車か国産高級車ばかりだし、趣味で車を乗っている人には旧車やアメ車はいますけど。外ではあまり目立ちたくないと思っている人が多いですから」
「僕は公務員でしたから国産車しか乗っていませんね」
大竹は二人の答えが予想通りだと確認して言う。
「僕は北海道に住んでいた時にフルサイズのアメ車を乗っていたんですよ。最初は八十年代の赤いラングラージープ、次に九十年代の青いフォードのトラック。
北海道の広い道にはアメ車だろうと思ってなんですけど、あんがい道民はアメ車に乗っていないんですよね。
実際に生活してみると、出先の店舗の駐車スペースは日本車サイズですし、ファストフードのドライブスルーも苦労しましたから。
だから同じような車を見かけることがほとんどなかったんですよ。
つまりものすごく目立つ車を運転していたんですが、おかげでより一層安全運転をするようになったんですね。
マナー違反のような些細なことも一切しなくなった模範的なドライバーになったんですよ」
「それがナンバープレートと何か関係が?」
佐倉は大竹の意図が分からなかった。
「つまり、目立つ車派手な車、希少で有名な車、大きなロゴの営業車では違反ができないということです。そういった車にはナンバープレートの装着を免除する。
任意だから装着してもいい。
大衆車で個性が無くてもゴールド免許ならナンバーは任意でいいと思います。
識別はチップで管理できますから問題ないですし。
だからナンバープレートは廃止の方向に向かうかもしれない。
チップはマイナンバーと紐づけするので税金や違反金もスムーズですし、追尾もリアルタイムで所有者が判明して摘発も早くなるでしょうね。
GPSと連動させてもいいかもしれないですね」
「ということは軽自動車の黄色ナンバーや小型バイクのピンクナンバーは廃止にするんですか」
大竹はニコっとした笑顔を佐倉に向けて答えた。
「ナンバーの色は廃止してもいいですね、意味がなくなりますから。でもバイクはサイズと色を好みで変えてもいいかもしれない。個性が出れば安全運転になるだろうし、趣味性も向上して所有欲や大事に乗るかもしれない。
でも暴走族のような安全や環境に配慮しない改造は摘発対象になりますね。
そういったバイクは識別チップを外しているでしょうから、暴走をしていなくても検挙できますけど。暴走中でもレーダー照射や交差点でのチェックですぐ身元も判明できますから」
「でもそれだとバイクの排気量別の免許に影響があるんじゃないですか」
「それは別にナンバープレートで管理することじゃないな、小さい車体に大きなエンジンは積めないし、逆に大きな車体に小さいエンジンもそうだ。
そういった情報もチップとマイナンバーで管理できるから問題ないと思う。
現状でも違反して検挙か職務質問でもしないかぎり免許の確認することないから」
大海は大竹の提案を黙って聞いていたが、ふと思いついたことを言ってみた。
「そのアイデアは車の税金にも使えないですかね。
現状、普通車は3ナンバー、小型は5となっていますけど、軽自動車の規格が小型に寄ってきて5ナンバーの意味が無くなってきているんですよ。
軽より5ナンバーのほうが安全性が高いのに、税金の問題で軽の需要が高いじゃないですか。
戦後すぐのオート三輪の時代でしたら意味があることでしたが、3ナンバーの大きな車が溢れて性能が向上しているのに、軽のカテゴリーは逆にマイナスなのじゃないかと思っているんですよ。
親の世代は高校生でも軽の免許が取れてた時代で価格も安かったですけど、今の軽の新車は小型車と同じかそれ以上しますから。
それだったら、排気量やサイズで税金を決めるのではなく購入価格にすればいいのでは。
高級車を乗れる人は高い税金でも問題ないでしょうが、低所得で中古の安い大型車にも同じ税金というのは矛盾がありますよね。
データ管理ならば販売店が申請すればいいだけで済みますし、まだまだ乗れる車を税金が理由で廃車にする必要もなくなりますし。
そのほうが環境にいいはずですしね」
大竹は大海が言ったことに驚いた。車好きでの間で昔から話題に上るような話をしたからだ。
大海は国産車しか乗らないし元は都民で電車通勤だったはず。
車には興味が無いと思っていたからだ。
「大海さんが突っ込んだ内容を話すとは思いませんでしたね、車に興味があったんですか」
大海は照れたようなしぐさで手を頭にあてる。
「僕はそれほどでもないんですけど、家では奥さんがいつも車を運転しているんですよ。
だから普段からこういうことは耳にしているんです。
といいますか、「どうにかならないの?」と言われていまして。
でもその都度ごまかして考えていなかったんですよ。
大竹さんの提案を聞いて、これだ!と思ったわけです」
「すばらしい、奥さんは車の運転が好きで上手なんですね。
車の法律は少し変なんですよ。
車検も戦後進駐軍のジープ規格を元に決めましたし、ウインカーは手信号でもいいのに点滅速度が遅いと駄目とか、車幅が1ミリでも大きいだけで税金が増えたり、ガラスのヘッドライトでは問題なかったのにプラスチックになってから経年劣化の曇りで光量が低いと駄目とか、最近だと燃費測定ができないと駄目になりましたね。
むしろ今回の提案も全然おかしいことじゃないと思っていますよ。
そのうちトウキョウの原発が全て稼働して電気が余るほど作れるようになれば、化石燃料エンジンは無くなるかもしれません。
電気自動車の税金を走行税としているのも変更が必要ですね。
まあそれは購入税にすることで解決できますか。
火力発電所が存在しているのに電気自動車やソーラー発電を推進している矛盾も解消されるでしょう。
エコ発電は大きな発電所や送電インフラがない土地では有効な技術ですけど、電線がそばにあって電気があるのにソーラーにする意味が未だにわからないですけどね。
パネルや蓄電池の製造に大量の火力発電を使って作ったのに使用するのは電気やガソリンに不自由していない場所で使っている意味がいまだに理解できないのは僕だけですかね」
最後は愚痴のような話になった大竹だった。
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