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トウキョウアーミー

 俺はアメリカ陸軍アーミーの一等兵。

 海兵隊からトウキョウの管理を引き継いで任務に就いたのは半年前だった。

 前任地はアフガニスタンだったが撤退計画があり、一度本国に戻っていたら日本へ行くことになった。

 日本でのアメリカ軍はほとんどが海軍ネイビー空軍エアフォース海兵隊マリーンなので特殊な任務だと予想した。

 到着したのが東京港だったのは驚いた。YOKOSUKAだと思っていたので意外だった。

 任務がトウキョウの警備ということなので一番近い港ということと、物資の補給もそこから行っているからである。

 東京港はアメリカが管理しているが、中国、ロシア、台湾の船舶も入ってきている。

 彼らは主に物資関連と燃料、資材の搬入を分担してやっているようだ。

 アメリカ軍は災害当初からトウキョウで活動してきたので、作戦上の経験値が豊富にありそのまま管理することになったみたいだ。

 俺らの基本的な任務は警備になるが、活動範囲はとても広い。

 重点地域はトウキョウエリアになるが、周辺も担当している。

 日本の軍隊じえいたいはいったん解散して別の組織として再編されるらしい。 

 日本は連合国に支配されているので、国土防衛に関しては連合国が担うが、そもそもの周辺敵国が全て日本を得ているので、いったいどこの国が日本を攻撃するのか。

 現実的に防衛という想定はしていない。

 日本という国を連合国が取り込み、世界のパワーバランスの中心となっている。

 欧州のNATOもロシアが連合国メンバーになっているので事実上の敵国は中東になっている。

 つまり中東という石油利権の国々とその他の国々の対立関係となっている。

 連合国は日本を原子力エネルギーの中心地として、発電から廃棄物保管までをまかなうことにしている。

 ロシアから天然ガス、中国からは希少金属、アメリカからはシェールガスを提供し、中東の石油産業に対抗する仕組みをつくるようだ。

 連合国が警戒しているのはトウキョウに侵入してくる中東関係の工作員などのスパイだ。

 常時監視を衛星とドローンで行っているが、それは敵も承知しているはず。

 その隙を突いてくることを想定しているので監視は怠ることはできない。

 ハッカーなどの危険性もあるが、トウキョウのネット環境は連合国それぞれのサーバーに繋いであり、バックアップも完璧にしている。

 いくつかのネットが断たれたり、データーが漏れたとしても、本当に重要なシステムはネット上には上げない。

 ハードを実際にやり取りしているのだが、トウキョウに各国が常駐しているので可能なことになる。

 よくありがちな身代金目当てのハッカーに対しても、彼らが利用するサーバーは連合国が関わっていることがほとんどなので不可能といっていい。

 つまり要求したとたんに足が付く高リスクな犯罪になった。

 トウキョウを攻撃するには昔ながらのアナログといっていい人間が直接侵入するしか選択肢がないことになる。

 だから俺たち現場の兵士の警戒監視が最重要になっている。

 この半年でトウキョウに無断侵入してきたのは日本人ばかりだった。

 外国人は入国した時点で追跡されているからトウキョウまでは近づくことさえできない。

 最初の頃は警告をしてから対処してきたので、ほとんどの侵入者は戻って行った。

 たぶん好奇心や探検のような肝試し感覚なのだろう。

 中には当たり所が悪く死んでしまう人間もいたようだが、基本的に拘束するということはしないので仕方ない。死体は東京湾に沈めているようだ。

 しかし最近になって拘束することを前提とするようにと変更になった。

 どうも作業員が不足しているようで、補充するためにあえて捕まえるという。

 作業にあたっているのは日本で死刑や無期刑の判決が言い渡された人間らしいが、それでも2百人ほどしかいないようだ。

 灰の除去が進んでいくと当然だが範囲も広がる。

 広がった先では新しく土地を復興するから作業員もいる。

 侵入者を殺すどころか怪我もさせてはいけないことになったが、俺たちはそれをゲームとして楽しむことにした。

 うまく捕縛できれば点数が入り、失敗すれば減点、もしくは罰ゲームというゲーム。

 毎月ごとに競い、結果によっては休暇が増えたり日本の観光地で豪華な旅ができたりなどのご褒美が与えられる。

 俺たちのチームは餌を撒くことで点数を稼ぐ方法を思いついた。

 日本はネット上に侵入情報を都市伝説レベルで流していた。

 俺らもそれに習い、似たようなサイトを立ち上げた。

 内容は俺たちが担当する地域と時間に有利になるような情報を中心にした。

 仲間の知り合いにアイルランド出身の通訳がいるので、彼の協力を得て日本語のページを作ることができた。

 他のチームはそれができないので、俺たちは圧倒的有利に点数を稼ぐことができて毎月のご褒美を独占できていた。

 さすがに疑われ始めたので途中から他のチームにも有利な情報を流してバランスを取り始めた。

 でも俺の任期も残り少なくなってきた。

 今までの任地は死の危険が強く厳しいことばかりだったが、トウキョウは休暇といっていいほどの任務だった。

 トウキョウの外に出れば楽しく美しく美味しいところばかりだったのもうれしかった。

 通常なら前線にいる兵士の余暇なんて楽しむようなものは無い。

 一度は本国に戻り次の任地に向かうことになるが、出来るだけ早くトウキョウに戻りたいと、ここにいる人間は全員が思っている。


 境界ボーダーエリアの警戒任務は週に四度くらいしかない。

 その他の任務は囚人たちの監視と物資補給になる。

 物資補給はトラックの運転なので問題はないが、囚人の監視は戸惑った。

 彼らに英語が通じないので何か指示をしてもポカンとするだけで通じない。

 だからといって反抗的でもなく真面目に作業をしている。

 監視が必要なのかと思ってみたが、彼らは日本では凶悪犯である。

 囚人同士のトラブルがあったときのためらしいが、彼らはそういった気配も感じさせないほど整然と協力しあっている。

 だから俺たちは相棒と散策するだけで一日を過ごしていた。

 つまり退屈な任務だということだ。

 彼らと会話をしようにも言葉が通じない、近くに寄ろうにも作業の邪魔にしかならない。

 これまでの任地では住民と多少なりとも交流はあった。

 しかしここでは何もないことがストレスになっていた。

 敵もいなく攻撃の恐れがないのにストレスがたまるという兵士にはありえないことが起きた。

 そこで俺たちは多少の日本語を覚えることにした。

 まずは挨拶の「こんにちは」「おはようございます」「さようなら」から使ってみた。

 最初こそ彼らは驚いていたが、そのうち向こうから話しかけてくれるようになった。

 そして食後の休憩時間に彼らから日本語と英語を教え合うというコミュニケーションをとるようになった。

 そのうち彼らの中で一番若い奴が料理に関して質問をするようになってきた。

 彼の英語は聞き取るだけでも難しかったが上達が早く、なんと厨房にまで入り手伝うようにまでなった。

 彼は徐灰作業より調理担当として囚人たちの為に日本の料理をつくるので、それが兵士たちの間でも評判が良かった。

 特に「どんもの」と言っている料理は大人気になっている。

 バリエーションが豊富で飽きがこないし、スプーンで食べられる日本食だからだ。

 これは本国に帰って家族に食べさせてあげたいほどと皆が思っていた。

 なんだか彼らが囚人だということを忘れてしまう。

 最初こそ奴隷のようなあつかいとして対応すべきと思っていたが、同じ場所で生活している仲間という意識になっていた。

 やはりもう一度とは言わず何度でもトウキョウを望もう。むしろ軍人生活の全てをトウキョウで終えてもいいかもしれない。

 中東との関係が冷戦となるためにはトウキョウの発展が要になるのだから、世界の平和はここでの俺たちの頑張り次第といってもいいかもしれない。

 俺たちのこれからは仲間(囚人)とトウキョウを復興させるために。

 

 

 

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