未来へ
大竹は東北道と東名道が接続し首都高の徐灰整備が完了したことで、久しぶりに仙台と八戸の実家に帰ろうと考えた。
大竹の仕事は連合国との折衝が主な仕事だが、最初の懸案である交通の目途が立ったことで次の段階に移っている。
道路網が出来れば工事車両の通行が可能になり予てからの計画である原発の建設と放射性廃棄物の永久保管工事が始まる。
現在は建設が可能な場所の選定と調査が行われている。廃棄物は地下鉄の大江戸線を中心に坑道と駅ホームを利用するために設計をしている。
原発は最低でも二〇基は作るので、四カ所を予定している。
建設地が決まれば周辺の建物の取り壊しを始めなけらばならない。
実際の建設が始まるのは二年後を目標にしている。
廃棄物の保管はそれより早く完成させる。福島の浪江や周辺に放置されているもの、青森の六ケ所村のリサイクル施設にある使用済み燃料はできるだけ早く搬出しなけらばならない。
保管施設は日本の原発からだけでなく、世界の核のゴミを受け入れることになっている。
もちろん有料なので日本と連合国の重要な外貨獲得の手段になる。
支払いは国単位ではな、依頼してきた国が崩壊したりで支払い不能になった時の予防策として、一旦は国連に資金を拠出して財団をつくっておく。日本はそこから保管料を得ることになる。
もし国内問題などで支払いが滞るようなことになれば、国連からの制裁を受けることになる。
特に原発主体の国にしてみれば、日本の施設が破綻することは自国の原発政策に大きく影響を与える。
ただしトウキョウは連合国の管理下にある。つまり常任理事国が管理していることと同じなので、背くような国は現れないだろうという確かな思惑があるゆえにだが。
保管施設利用料金は日本と連合国とで等分になる。
だから世界のエネルギー政策に強い影響力ももっているが、それは等分というより統合なので中東の産油国への対抗という面でも大きな連合となっている。
これまではアメリカ、ロシア、中国がそれぞれの都合であったものを日本が軸としてまとまっている。
地球温暖化は環境改善という面より産油国に対しての圧力というパワーバランスだったが、これからの石油はエネルギーよりプラスチックなどの副産物利用が主流になるかもしれない。
産出量は減るだろうが副産物なので燃料としての石油は安価になることが予想される。
その代わりプラスチックは高騰するだろう。すると木材などの自然原料が多く使われるようになり、森林が資源として見直され増えることも予想される。
森林が増えれば大気の酸素が増え炭素が減り、水を貯え水を放出する。
雨が多くなり砂漠化が止まり、人類が住める土地が広がる。
当然、人口が増えるが耕作地も増えるので問題ない。
太古のクロマニヨン人の大移動のようなことがトウキョウが原因で遠い未来を変えることになるかもしれない。
大竹が生きているうちは見ることのない未来だが、そうなっていると確信している。
最初は日本が滅びたことで満足したが、いろいろな想定を積み重ねているとトウキョウと連合国の存在は地球の未来まで影響を与える結論になった。
だがしかし順調にいく前提での話でもある。
それこそ災害が何度も起きてしまうと計画が破綻する可能性もある。
しかし一人の愚痴から始まった何のことない話が「大竹」という人間がいて、大竹を中心に集まった人間関係がこんなことになるとは誰が想像しただろうか。
関わった本人たちもそうなるとは思っていなかったはずだ。
それが災害と東京と大竹の化学反応の結果だということなど予想すらできない。
この時代に生まれ揃った奇跡というものである。
大竹はたまに思う。
人間が生まれてきたことの意味なんて神でさえわからないだろう。
無駄な時間、うまくいかない人生、ついていないのは自分だけなのかと思ってしまうが、どこか知らないところで自分の存在が影響しているということを。
自分という存在があるかないかで世界が変わるということ。
ただ毎日生きているから明日も生きるだけのことが大事なことなんだと。
生きてきた証なんてそういうもんだろうと。




