トウキョウ侵入2
翌朝タクヤは早めに目が覚めた。
二人はまだ寝ているようだ。
窓から外を覗いてみるが特に珍しいものは見えない。
ベッドに腰かけ考える。
刑務所か、その前に裁判とかがあるんだろうな、親にはそこで会うことになるのかな、なんか申し訳ないな、誘った二人にもな。
後悔ばかりが頭をよぎる。でも捕まったのは仕方がない、どうせ何もなく帰ったところでいつもと同じ毎日が待っているだけだ。
刑務所に入るのも悪くないだろうと前向きの頭に切り替えようとしていた。
二人がようやく目を覚ましたようだ。
シンゴがタクヤに気づいたようだ。
「おはよう、早いね」
「まあな、すぐ寝たからな」
ツヨシはまだ寝ぼけているようでボーっとしている。
「おい、ツヨシ起きたか?」
タクヤはツヨシに声をかけた。
「うーん、だいじょうぶだよ」
「何がだいじょうぶだ、起きろ!たぶん奴らが起こしにくるはずだから」
タクヤはそう言うと靴を履き軽く伸びをした。
シンゴも同じように靴を履き体を動かした。
「なあ腹減ったな、食い物もってるか?」
タクヤは二人に言うが首を振っている。
「バッグは持っていかれたし何もないよ、ポケットに入れていたお菓子も取られたし」
ツヨシは体をパンパン叩いてアピールした。
「そうか、飯は出ると思うか?」
「出るんじゃないかな、刑務所は三食あるって聞くよ」
そんな話をしていると突然ドアの鍵がを開ける音がしたので、三人は身構えた。
入ってきたのは昨日の外人と兵士が二人だった。
「おはよう皆さん、朝ご飯の時間だけど先にトイレに行きたい?それとも食後にするかい」
タクヤが「後にする」と言った。
「そうか、じゃあ食堂に行きますか」
そう言うと兵士が三人を立たせ、先に行く外人の後を付いて歩いた。
食堂にはテーブルがいくつか並んでいて、その一つに日本人の男が一人で食べていた。
三人はそのテーブルに連れて行かされ座らされた。
男はパンをちぎりながら目の前に座る三人を見た。
口にパンを頬張りながら言う。
「はじめまして、僕はツトムといいいます。日本人だから安心してください。
まあトウキョウでの日本側の責任者という立場だけど、別に国の人間ではないな。
どちらかというと党の人間になるのか、役人と一般人の間のような役割をしている。
だから別に権力もないし誰かに命令できる人間じゃないよ。
つまり緊張するような人間じゃないからリラックスして」
ツトムと名乗る男はそう言うと再びパンをちぎって口に入れる。
三人の食事が運ばれてきた。
パンとスープと目玉焼き、それにサラダとウインナーが付いている。横にはペットボトルに入った水が置かれた。
「さあ、まずは腹が減っているだろうから食べようか」
ツトムは三人に食事を勧める。三人は返事をせずに黙って食べ始める。
「食べながらでいいから聞いてくれ、質問は食後にな。
君たちはトウキョウに無断で侵入した違法入国者という扱いになる。
ここは日本だけど外国だからね。
正確には連合国統括支配地になる。
それでね、めんどくさいことだけど戦場という認識のエリアでもあるんだ。
だからアメリカ軍兵士が独断で行動し捕縛できる。
そのことに日本はタッチできないけど、捕まった人間の保護はできるんだ。
だからこうして食事ができるわけなんだけど。
でも君たちの扱いはアメリカ軍が握っているから覚悟はしておいてね。
例えば暴れたりしたら大変なことになる。
向こうは英語でしか警告しないからね、聞き取れなくて反応できなかったら即撃たれるよ。
もちろん死んでしまうけど、だからと言って日本が引き取るわけじゃないからトウキョウのどこかに埋められるか東京湾に捨てられるか。
実は君たちが最初のケースになるから実績がないんだよね、どうするのかな僕も知らない」
三人は話が進むにつれて手が止まってしまった。
「ほらほら、食事を続けて!」ツトムは食事を勧めた。
「知っているとは思うけど、トウキョウは全国の死刑囚と無期刑を集めている。
目的は死刑の廃止とトウキョウの復興作業のためなんだけど、君らにも期限付きで加わってもらおうと考えている」
ツトムはコーヒーを一口含み三人を見据える。
「つまり囚人たちと一緒に暮らすということ。了解?」
三人は首を縦に振った。
「昼前に合流して、囚人の昼飯の時に紹介するからそのつもりで。
あとで専用の作業着を渡すから着替えておいてね。
私物は特にたいして持っていなかったね、バッグなんかは返しておくよ。
そうそう、ちゃんと金は出るからね。でも衣食住があって買い物に使うことも無いので、日給は千円にしている。
日本の刑務所に比べたら破格の好待遇だよ。
さて食べ終わったようなので質問を受け付けようかな」
ツトムは三人の顔を見渡した。
真ん中に座っているタクヤが恐る恐る手を挙げた。
「ハイ、君どうぞ。名前はなんて言うのかな?」
「タクヤと言います。あの今回は僕がこの二人を誘ってついて来ただけなんで、二人は帰してもらえないでしょうか。僕はここに残りますから」
シンゴとツヨシはタクヤの顔を見て驚いた顔をした。
「何言ってんだよ俺も残るよ!」シンゴが言い。
「僕も残るよ、一緒にいようよ」ツヨシが言う。
それをみたツトムは言う。
「なかなか絆が強くいい友達じゃないか、でも残念ながら三人とも帰れません。
いっとくけど囚人と違って一生ここにいるわけじゃないよ、さっきも言ったように期限がるあるからね。
一応期間は一年だけど、更新もできる。ここでの生活が気に入ったら何年でも可能だから」
ツトムと言う日本人はそう言ったが、最低でも一年ということだ。
どうせ帰って居場所が無い三人はお互いの顔を確認して言う。
「「「よろしくお願いします」」」
「わかった、作業は体力仕事だけど悪い経験じゃないと思うよ。僕もたまに様子を見に来るから。
じゃあ、僕はこれで。次の仕事もあるから、隣のテーブルで食べているピーターの指示に従ってね、それじゃあ」
ツトムは席を立ってピーターに声をかけて食堂を出て行った。
三人は食事中のピーターを見やった。
それに気づいたピーターはちょっと気まずそうな顔をして食事を続けた。
タクヤは二人に話しかけた。
「なあほんとにいいのか、もっと強くお願いしたら帰してもらったかもしれないんだぞ」
「大丈夫だよ、タクヤを残して千葉に帰ってもつまらないし心配だしな」
シンゴはそう言い。
「なんかトウキョウに住むなんてワクワクするね!」
ツヨシは相変わらずちょっとズレたことを言っていた。
三人は再びピーターが食べ終えるのをじっと見つめはじめる。
ピーターは少し食べるのを早めたように見えた。




