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ロンA

 閑話です 人を殺すシーンがあります

 トウキョウで「ロンA」と呼ばれている男。

 年齢は二十九歳になる平成生まれ。

 幼少時から神童と呼ばれ、先生方を困らせてきた。

 教師は彼を持ち上げて常にリーダーとして扱えばいいと考えた。

 それは小学校から中学、高校まで申し送りされるくらいのことだった。

 それほど彼の成績は優秀だった。

 身長も高く常に上からの目線であったことも彼が違和感なく受け入れられた理由でもあった。

 両親は父が勤務医で母が弁護士ということもあり、周囲の大人たちは何も関与することはなかった。

 いくら彼が多少のわがままでクラスがざわついても教師はおろか誰も叱ることはなかった。

 彼は順調に有名私学を経て有名大学に入学した。

 そこで彼は理系分野に進み、研究室で結果を出し大学院まで進んだ。

 そのまま大学に残ろうかと考えたが助手の給与が不安定なうえに少ないということで担当教授の紹介を受け企業の開発室で働くことになった。

 そこの企業は従来技術の改良進化ではなく製品化されてこなかった技術の開発が主力だった。

 当然だが長期の研究と資金が必要なので、副産物として利用できる技術を使ったもので収益を確保している。むしろその方面が有名な企業だが、伝統的に新開発が社是となっている。

 だから真面目な研究者より少し変人なタイプが重宝される社風がある。

 担当教授は彼も変人と認識されていたので推薦した。

 成績の内容も抜群に優秀なので問題なく採用された。

 ただし彼の変人の種類が異なっていた。

 企業が求めていた変人は当たり前のことはできないけど考えつかないこことができるタイプだった。

 彼は当たり前にできることは高レベルでできる、しかしそれだけだった。

 変人なところは上司が指導してもムッとしてその場を去るとか、イラついて大声を出し暴れるとか、自分の思い通りにならないとキレるタイプだった。

 そのくせ褒めると急に機嫌が良くなるから周囲は扱いに困ってしまった。

 入社半年で彼は開発の主流から外れてしまい、廃棄作業や掃除などの小間使いとしての役目しか与えられなかった。

 当初は気づかなかった彼もさすがにおかしいと思い廊下で上司に問いただすと、


 「君は我が社が必要とする人間ではなかったことが判明したんだよ。

 君はとても優秀なんだけど周囲のみんなと問題ばかり起こす。

 どうにかなんないかと懇願されて徐々に業務を変えてきたんだ。

 しばらくは内緒にして春になる前に転属してもらうように考えていた。

 本当は早急にしたかったが懇意にしている大学に迷惑をかけるからできなくてね。

 教授にそのことを話したら恐縮していたよ。 

 君は研究室では結果を出していたようだけど、それは教授のサポートだったろ。

 つまり指示されたことは完璧以上にできたんだね。

 でもここでは自分で新しいことを思いつかないと駄目なんだ。

 ここでは必要ない。

 でも君は優秀だから違う部署でなら重用されると思うよ。

 だから辛いだろけどしばらく頑張ってくれ」


 と彼に伝えた。

 彼は上司が立ち去ってもそこを動くことはしなかった。

 いや動けなかった。

 こんなことは初めての経験だ。

 生まれて初めては大げさじゃなない。

 だから次に自分が何をすべきかが頭に浮かばない。

 足を動かす手を握ることさえ忘れてしまうくらい動揺していた。

 廊下に一人たたずむ彼に声をかける人間は誰もいなかった。

 立っていることに疲れ自然にしゃがみ込むまでその場に居た。


 外はすでに暗くなっていた。

 彼は部屋に帰ることにした。

 季節は11月末なので寒い空気の中をコートも着ずカバンも持たず歩く。

 道すがら高齢者のグループを見かけた。5人ほどが楽しそうに歩いている。

 彼は思った。

 僕がこんな状況なのは年寄りのせいだ、あいつらが日本を悪くしたんだ。

 おかしな政治家を支持し問題を起こしてもあいまにする。

 「悪い人じゃないから、あの人にもいいところがある」と言っては許す。

 日本が悪くなったから僕は馬鹿にされたんだ。

 学生までは認められていた。

 大人になって認められいないのは大人が悪いからだ。

 僕は馬鹿にされたことは一度もなかったんだ。

 バカな政治家を支持する年寄りがいなくなれば社会は良くなる。

 僕も認められるはずだ。

 きっとそうだ。


 彼は高齢者のグループに近寄りいきなり殴り倒した。

 一人が倒れるとまた一人。

 倒れているところを足で蹴り続ける、全員を蹴り続ける。

 身長が高い彼は非力に見えるが大きさに勝るものはない。

 五人が動かなくなったのを確認してその場を去った。

 しばらく歩いていると警察官に囲まれ拘束された。

 彼は逮捕され起訴された。

 罪状は殺人罪。五人は亡くなっていた。

 見ず知らずの高齢者を蹴り殺す大量殺人。

 前代未聞の事件が起きた。マスコミは勤め先や大学、はては小学校まで調べ上げ報道した。

 彼がどういった子供だったか、どういう人間だったか。

 内容は同情できるものは一つも無かった。

 彼は稀に見る狂気の殺人犯として扱われた。




 弁護士から状況を知らされ驚いた。

 僕は凶悪じゃない、むしろ正義を執行したんだ。

 このままだと死刑を求刑されるがどうすると言われた。

 死刑か、それもいいだろう。

 認められない世の中に生きていても仕方ない。

 裁判で思いのたけをぶつけたら拘束され精神鑑定なるものを受けさせられた。

 政治が悪いから殺したんだ、悪いのは政治家と有権者だと叫んだだけなのに。

 なんという屈辱。

 僕は狂ってはいない、おまえらより頭はいいくらいだ。

 しばらくの間鑑定に付き合わされた。

 裁判は比較的長期にわたった。

 死刑判決を受けたが控訴はしなかった。

 待ち望んでいたくらいだ。

 刑が確定したので拘置所で執行日を待つ日々が続いた。

 外では新型ウイルスが蔓延して高齢者が次々と死んでいるらしい。 

 総理や知事達が口先だけ場当たりなことをやっているようで悪くなる一方のようだ。

 ほら僕の言ったとおりになっただろ。 

 政治家がダメなんだ、大人がダメなんだ。

 でもおかげで年寄り連中が少なくなった。

 まあ今の僕には関係ないことだが。


 外から爆音と振動が建物を揺らした。

 職員が移送すると言った。

 富士山が爆発したようだ。

 この前には地震があったはず。

 もう次の災害か。

 感染症と災害が続くとはこの国も終わっているな。

 僕がやらなくてもそうなる運命だったのか。

 もう少し早く起きてくれれば僕も変わっていたのだろうか。

 でも考えるのを止めた。


 移送先は仙台のようだ。

 初めて来たが別に感想も無い。

 数日後に日本が侵攻されているということが知らされた。

 そして東京が壊滅しておりアメリカ軍の支配になっているという。

 僕には関係ないことだ。


 しばらくすると選挙が始まって新しい政権ができた。

 執行日が近づいたと思った。

 内閣が変わると執行されるのは日本では慣例のようなものだから。

 移送すると言われた。

 なんのことだ、執行ではないのか。

 職員に聞くと東京に行くという。

 どういうことか理解できなかったが、どうもそこで復興作業をしながら生活をしろということらしい。

 よけい理解できない、釈放と言うことなのか。

 

 東京に着いた。

 そこで足首に輪っかを付けられた。

 説明によるとGPS付きの爆弾で、エリア外に出ると警告音のあと五分のカウントダウンで爆発すると。死ぬことは無いがとても痛いだろうと。

 当たり前なことを説明する。たぶんゲーム前のルール説明のようなものだろう。

 そうか死刑でなく生きろということか。

 新政権もおかしな奴らがやっていると想像できる。

 まあいいさ、これが転生というものかもしれない。




 

 

 



 



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