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投票日 大阪

 佐倉一生は大阪にいた。

 投票場の近くで車の中から外を伺っている。

 佐倉自身は期日前投票を地方の更に郊外の道の駅で済ましている。

 

 「なんかすごく人が集まっていますね、大海さん」


 近くにいる大海に小さな声で言った。


 「そうだな、想像以上だな。期日前も増えていたから予想はしていたけど、これほどまでとは思わなかった」


 「ですね、しかも若い人が目立ちますね。僕が期日前に行ったところは若い夫婦が多かったですけど、高齢者も同じくらいいましたから、ここまでじゃなかったですね」


 「たぶん、普段の生活では時間が取れないんだろうな。今日なら多少仕事に遅れたとしても、投票に行っていたのなら問題ないと思ったのかもしれない」


 「それにアレですよ、当日に行ったことで選挙に参加してる感が出るからじゃないでしょうかね。

 つまりライブ感を味わうというか、みんなが同じ日に同じ時間に集まっていることが一体感といいますか、誘って連れ立ってということができて、大きなイベントにみんなで来た思い出にもなるでしょうし」


 「そうだよな、今日が日本を変える日になるんだから、ある意味記念日をリアルタイムで経験したことになる」


 「今回の選挙は全国区で比例だけだから、個人名を記入する必要もない。印を一つだけ付けるだけの簡単なものだし、最高裁判所判事の審査もないですし」


 「ああ、最高裁判事は一時的に連合国が解任したからね。国が崩壊したので憲法も停止しているからそうなったんだけど、再任は僕らが考えなけれならないんだよ」


 「そうでした、でもほとんど変えるんですよね」


 「そうだ、女性を半数以上にする。そして法曹界以外の人選も多くする。

 最高裁は法律に照らし合わせるというより、世間の正義との整合性が問われなくちゃいけない。

 法は下級裁判で何度も争っているのだから必要ない。

 本当の正義とは国民のためにあるのだから。

 法解釈はその時の政権で変えられることが少なくなかったからね。

 三権分立とはいっても、立法は代議士だし、検察や警察も内閣の影響はどうしても受ける。

 しかも旧政権は検察のいいなりだったから。

 知ってたかい?司法修習生は上下縦横のしがらみが強いってこと。

 裁判では敵味方に役割を分担しているけど、結局は同じ穴のムジナなんだよ。

 自分らの世界を守るために法とか正義は棚の上に上げるのが常識だから」


 「なんですかそれ、それじゃあ日本には正義なんて無いじゃないですか」


 「そうだよ、だから色々あったじゃないか。でもマスコミも同じだからすぐ火を消した。

 誰でもいいから悪人を作り上げて、そいつの責任にする。

 腐っていたよね。だから僕は決断したんだけどさ」


 「なんでそうなっちゃったんですかね。いつからか知っているんですか」


 「いつからかって?昔からだよ。そうね日本の歴史が始まってからだな。

 細かく言えば中国と交易を始めて豊かになり、その富を独占しようとする人が現れてからかな。

 今のような利権構造は明治維新からだな、そしてオイルショックからバブル崩壊が拍車をかけた。

 金の臭いをかぎ分けるスキルが重要になってきてからは恥も外聞も倫理も道徳も無くなった。

 一度手にした利権を離すことはしないから、よけいにしつこくなる。

 まあ人間のサガ、いや男のサガだな」


 「恐ろしいですね、でも僕も男ですけどそこまで酷い考えは持っていないですけど」


 「それはそうだよ、だって芸能界は実力も大事だけど、ほとんどは『愛され力』でしょう?

 どれだけ人気がありスタッフに愛されるか、一緒に仕事をしたい思われるだけで出演数も変わるし、認知度や人気にも影響するでしょう。

 でも一般社会は飲食店は別として、ほとんどが仕事を請け負っている。つまり取引先という存在が企業を左右する。

 それには自分たちは取引様の僕ですような関係がなめらかに運ぶコツなんだよ。

 それが長い時間が経つにつれ強固になる、それが利権構造というものなんだよ。

 芸能界もタレント演者は直接無くても広告代理店や事務所なんかはそうとう苦労しているはずだよ。

 もちろんタレント自身も多かれ少なかれあるだろうけど」


 「そうですね、でも僕の事務所は幸いに業界では強いのであまり感じませんでしたが、さすがに若い時はいろいろありましたね。でも人気が出るようになると無くなりましたが」


 「そうそう、つまり実力、権力がある人が世の中を動かすことができるということ。

 僕らは権力を握ることになる。

 その代わり、その力を『陽の当たらないところに陽を当てる』だけに使うことになるから、利権は生まれない。

 福祉はそもそも利益が出ないものだからね。

 だから本来は『国家』がやることじゃないんだよ。

 元はキリスト教など教会の仕事の一つだったんだ。

 教会は寄付で賄うから儲けは考えないからね。

 でもそれは政治と宗教が別の権力だったからできたんだよ。

 でも日本は神道だからね無理だった。神道に穢れはあっても布教とか福祉の概念はないから。

 でも欧米式の生活や宗教観が浸透してきたから国も無視することができなくなって現在のようなことになったんだよ。

 戦後に占領され新憲法ができたことも大きかったね。

 でも所詮付け焼刃、ボランティアや寄付の概念が正しく浸透していないし、働かざるも食うべからず精神が勝っているからどうしようもない。

 なんで働いていない人間を自分らの税金で賄うのか本気で怒っている普通の人の多いこと。

 そんな人でも震災とかで寄付をしたりして「いいことをした」感を味わって満足しているような国民なんだよ。 

 でも復興五輪とか言っている政権を支持しているからね。

 結局その人の自由なんだけど、理解できないことばかりなんだよ、日本って国は」


 二人の話は止まることがなかった。







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