忙しくなるな
大竹さんが李さんと部屋を出て行ったあと僕は資料に目を通した。
生配信の後にコメントや僕たちの関係者に連絡を取りたいという代議士達が相当数いるという内容だ。
昨日の今日で行動が早いが、余計に胡散臭さが強い。
それぞれの名前と経歴が書いてあるが、与野党を問わず現役、元職はもちろん、関東の自治体の議員達までも連なっているけど、男性ばかりなんだが。
中には九州と北海道の代議士が書いてあったが、この人たちは地元を捨てたいのだろうか。
僕は北海道知事だったが、地元は東京だから知事の職を失った今はこっちに戻ってきている。
でも彼らは占領されているとはいえ地元ではないか。
新しい日本で政治家をしようと思っているのだろうか。
しかも僕たちと合流したいということは確実に当選をもくろんでいるに違いない。
政治信条も何も無いことがはっきりした連中だ。
旧来からの日本の政治は西日本が仕切っていた歴史がある。
つまり連中の常識が日本を創ったわけなのだから、新常識を立ち上げる僕らと合流することは相容れないはず。
当然僕らも拒否をする。当たり前だ。最も必要としない人間をどうして仲間にするのか。
彼らは僕らの話を聞いていなかったのだろうか。それとも政治家お得意の二枚舌ようなものなのだろうか。
長年権力を握ってくると目の前にのことが見えなくなるのだろう。見えていたらコロナも五輪も現実的な判断ができたはず。
北海道の代議士も落下傘が多いし二世か身内ばかりだ。
二世などは人生のほとんどを東京で過ごしてきている。選挙のときだけだから直接顔を見たことが無い有権者がほとんどだという。
支持層も保守で固まっているので必ず受かる。リベラルな風土もあるが、投票しないことが意思行動となっている。
前知事も総務省からの出向道職員経験者が担がれて長年やっていた。今は代議士という再就職先を斡旋してもらい悠々自適に地元の東京に戻っていた。災害後はどこにいるかはわからない。この資料には書いていないから引退を決めたのだろう。
北海道と九州は新しい政治体制と経済を導入されるのだから、日本の元代議士はリーダーシップをとってもらわないと県民は不安になるのだから、しっかり地元で頑張ってもらいましょう。
この資料は廃棄だな。
次の資料に目を通す。
これには僕らの公約に賛同した政治家希望の女性たちが書かれている。
こちらも昨日の今日なのに早いが、真剣さが感じられる。
元官僚が多いが、大学教授や企業の研究者、弁護士も少なくない。
なかには都議会議員だった人もいる。
不思議なのが与党の女性議員もいることだが、この人たちは真意を聞いてみないといけないな。
それにしてもこの皆さんは漏れなく見えないガラスの天井で煮え湯を飲まされた人ばかりなんだろう。すぐに行動するということは悩む必要がないということだ。
それにしても予想以上に集まっている。
昔だったら男性たちに邪魔をされるか、立候補をしても嫌がらせを受けたり、当選しても広告塔扱いにしかならなかった。
たぶん今日の午前でこの量なら更に応募者が増えることは予想できる。
締め切りは準備の兼ね合いで公示の一週間前にしているが、少し早めて残り三日で終了させよう。
全員に一度は会ってみなければいけない。それも集団面接形式ではなく個人でやらなければいけない。
僕と大竹さんで分担したとしても相当時間を要するだろう。
場所は警備が容易な京都で予定しているが、往復の交通費などはこちらが負担することになっている。
なかには旧体制のスパイのような人も紛れているかもしれないが、そこは大竹さんの観察眼に期待をしてみよう。
大臣には女性を三人で就任してもらうので、候補者として何人かは選んではいる。でも優秀な人材はいくらでも欲しい。
年齢や容姿は関係ない、と言いたいが、どうしても世代の価値観はあるし、大竹さんによれば全てが顔に現れるようだ。
美醜というより、優秀な人間は魅力がにじみ出るものだから仕方がないらしい。
ただ大竹さんによれば、優秀だからと言って恋に落ちるわけじゃないので特別な感情は起きないようである。
部下になる男性官僚たちには忖度関係なくしっかり働いてもらいたいが、上司が美人だと一層励んでしまうのが男のサガなので、そういうのも関係してくる。
ただし男どもに悦びを与えてくれるだけの力量が無いと昔にように馬鹿にされかねない。
だから女はダメなんだとなっては意味が無い。
少なくとも公正にやれば女性のほうが優秀だから心配はしていないが、男の圧力に負けてしまうこともありうるから注視しなければならない。
その辺は僕らがフォローするのでどうにかなるだろう。
さて始まったばかりだが既に忙しい。
大竹さんと佐倉さんにはとても期待している。
佐倉さんには若い層と女性の支持を確かにしてもらう。
少なくとも投票率は爆上がりになることだろう。
その要因が若者たちの票になるはず。
彼らが国を創っている自覚を持つようになることが佐倉さんを仲間にした最大の理由になる。
選挙の表舞台に立ってもらうのが佐倉さんの役目。
僕はあまり目立つことはしないつもりだ。それは昨日で終わりにした。
今日からは佐倉さんが僕らの顔になる。
さて僕はこれから候補に挙がっている女性に会いに行かなければならない。
大竹さんも誘ってみようかな。




