表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/104

オオタケサン

 八戸の自分の部屋でパソコン画面でユーチューブを観ていた。

 何やら重大な発表があるという会見。

 画面の隅に出る情報サイトのポップアップが何度も予告してくるので、お気に入りのチャンネルを一旦後回しにして行ってみた。

 十人ほどがヒナ壇に座っている。中央は大池知事だな、隣に北海道知事の大海がいるが、元ストームの佐倉がいるのはなんでだろう。まあⅯCなんだろう。


 大池が話している、途中からしか聞いていないが政策集団を知事たちが集まってつくるのと、なにやら連合国と協力して新しい国をつくるといことらしい。

 新しい国ね。

 日本は今回で崩壊したのだから、新しいというべきなんだろうけど期待するのは無理な話だ。

 国は耳障り良い言葉を並べ、やってます感を与え、できなかったらさもありなんな言い訳を作り出す。

 地震は予知できます、できない。原発は安全です、事故になった。

 復興五輪です、最初の聖火が駅前をグルグル周っただけ。

 民営化は成功します、JRは東海だけが儲かる。

 郵政は不祥事の連発。煙草は民営化になったのだから競争原理が働いて安くなるどころか倍額。

 大麻も相変わらず薬物指定なので禁止だが、酒のほうが被害者多いと思うが。

 そうだよ煙草の煙も健康被害とか言っているけど排気ガスのほうがよっぽど危険ではないか。いつでもどこでも換気しても空気に排ガスは混ざっている。

 空気のきれいな山奥で百歳が煙草を吸いまくっているけどね。

 エコ対応の車は別に空気をきれいにするために乗っている人はいないだろう。

 ガソリン代が節約できればいいだけ。

 電気自動車は火力発電ですから、原発なら空気はきれいだけど一度でも事故になったら空気だけの問題じゃなくなる。

 プリなんとかという代表的な車種は何故か新しいタイプしか走っていないし中古車の台数が殆どない。

 

 コロナ対策だって日本は世界に比べ容易な条件だった。

 島国だし死者も少ないのにかかわらず、水際対策と言って赤外線センサーで体温をチェックしただけ。

 大騒ぎになった客船が注目されたが、そこから全国に広がったわけじゃない。

 台湾、ニュージーランドという参考にすべきところがあるのに五輪優先の対策スケジュール。

 ほんとだったら昨年中に収まっていてもいいはずだった。

 コロナの病死者数は減ったとしても、病床がひっ迫し他の病気の死者が増えたり自殺も多く、生活困窮者が激増したのに元に戻るためのエネルギーと希望さえも奪った。


 人は例外なくいずれ死ぬ。死は遺族にとっては悲しいことだ、でも本人は死んだことには気づいていない、死んでいるのだから。

 昔は死の恐怖を宗教で克服しようとしたが、医療が発達した現代はお金があれば治療は容易で延命も期待できる。金があればだ。

 いずれ死ぬのに医療の意味とは?は昔からよく考えた。何度か精神を病んでいたし死にかけた経験も少なくないからだろう。

 今の医療は人の尊厳よりもビジネスとしての側面が強い。血圧関係と癌はあらゆるところが儲かる病気だが、難病は儲からないから認定さえも厳しい。

 たぶん難病患者が増え治療も確率されない限り無理だろう。

 

 言いたいことは山ほどあるけど、つまり政治に期待するより神に祈ったほうが確かだということ。

 今回の災害も国民の多くが密かに祈って神が叶えてくれたのかもしれない。

 前の日本が滅亡したのは良かったことだが、次の日本が政治家の言うとおりになるとは思えない。

 生配信は最後までは観なかった。時間の無駄と思ったからだ。


 他のチャンネルを転々としながら時間をつぶした。

 さーて無職となったけどどうしたもんかな。

 日本を出てみようかな、台湾は昔から住みたいと思っていたんだよな。観光ビザが切れるまで滞在したくらい好きだし知人も多くできたからな。

 中国もいいな、ロシア美女も捨てがたい。

 

 

 そんなことを考えていると携帯の着信が鳴った。

 こんな時間にと思ってしまうのは昔の人間だからか、といってもかけてくる友人など思い当たらない。

 画面を見ると驚いた。


 「ウエイウエイ、もしもし、どうしたのさこんな時間に、といっても時差があるか。だとしてもどうしたのさ」

 

 電話の相手は中国人の李さんだった。

 たしか富士山噴火の時に最初に連絡をしてくれた友人の一人だ。

 

 「何言っているのですかオオタケサン、何度も電話したんですよ」


 「いや悪かったね、あれから東京を出てねずっと充電してなかったんだよ。今実家の八戸にいるんだけど、着いたのは一昨日だからさ」


 「まあそれはいいとしましょうか、それよりユーチューブ観ていましたか」


 「ああ、いつも観ているよ。なんせ暇でヒマでさ、テレビも東京が無くなったから番組も関西モノばかりだし、よく観ていたEテレもやっていないしさネットで動画を観るか古いゲームしかやっていないよハハハ」


 「いやいや違いますよ、さっき観ていましたかですよ。日本で政治の会見が生配信でやっていたじゃないですか」


 「あー観ていたよ、途中からだったけど。それがどうかしたの」


 「どうしたもこうしたも、あれは僕と連合国が後押しした結果なんですよ」


 「そうなんだ、すごいね李さんは。いつのまにかすごいことをしたんだね」 


 「だからそうじゃなくて、オオタケサンが言ってたんじゃないですか。

 『どこかがこのまま日本をこわしてくれないかな、どうせ東京はだめなんだから』とかなんとか。」


 「確かにそんなことを言ったような言わなかったような。だってそれはあの時東京が被災したから、誰だってそう思うんじゃないの。愚痴だよグチ」


 「僕らはそうは受け止めませんでしたよ。オオタケサンを中心にロシア、台湾がいるんですから。

 それもみんな高い立場にいるのです。しかも昔からの国際問題を解決す絶好のチャンスではないかと。

 でも例え僕が立案したとしても、各国は動かなかったと思いますよ。

 中国だけ得するだろ、約束を守られる保証はないとか言われて終わりですし、多少は災害援助ができても所詮外国ですから見守ることで終わっていました。

 でもオオタケサンが言ったことで各国は結束できたのです。

 僕らが動けば必ず実現するのではと。

 アメリカと自衛隊にもそれぞれがルートを持っていましたから、予定した以上に事が早くまとまり実行できたのです」


 「そうなんだ、たいへんだったね。ありがとう日本を壊してくれて、と言うべきなのかな」


 「いやお礼はいいんです。それより、

 これからオオタケサンは大変なことになるかもしれません」


 「何故に?」


 「新しい日本政府の裏には連合国がいるのは当然の事実ですが、なぜ連合国はあんなに素早く結束して侵攻できたのか。結果的に日本を支配したのは誰かがリーダーとなってまとめたのに違いない。

 これまで敵対関係だった各国がまとまった奇跡はどうして起きたのかを探っているマスコミが多数いるんですよ。

 だからといって秘密裏に処分するわけもいかないですし、少しは情報をリークさせようかとなったんですけど。

 最初は日本人は各国共通の友人だから自然にそういう流れになった。たまたま中心にいた僕らが昔から知り合いだったからうまくいった、ということにしたんです」


 「それでいいじゃないの、いい話だ」


 「ところがそれの裏をとるようなことを始めたんですよ。するとオオタケサンが浮かんできているようなんです。

 最近何か周囲で変わったことは起きていませんか」


 「いや別に特に何もないと思うけど、気づかないだけかもしれないしわからないな」


 「そうですか、まだ居場所は特定されていないんですかね。でも実家は判明しているでしょうから恐らくそのうち接触があるかもしれません」


 「僕に会ったとしてもどうなるものでもないでしょう。なんの心配をしているのさ」


 「いやオオタケサンは新しい日本のキーマンなんですよ、ほっとくほうがどうかしてます。

 マスコミは利用するでしょうし、利権をもっていた昔の政権関係者は取り込もうとするのは確実です。

 オオタケサンさんを味方にすれば連合国はもちろん、新しい政権とも接点を持てるでしょう。

 強引に拉致誘拐などはしないでしょうが、何かしら良い条件を提示してくるにちがいありません」


 「それは僕にとっていいことなんじゃないの?」


 「何言っているんですか、そんなことになったらせっかく壊れた日本が元の日本戻るだけになるんですよ。オオタケサンはそれでいいんですか」


 李さんがそう言ってくれた。僕はハッとした。声にもでた。

 

 「あ、!」

 

 「ようやく理解してくれました。そういうことですからすぐそこを離れてください」


 「いや離れるといっても夜だし、準備もしていないし母親は寝てるし。行くところもないんだけど」


 「まあ確かにそうですね、少し焦ってしまいました。それじゃあ、明日の朝早く、そうですね夜明けに迎えに行きますからそれまでに準備しておいてください。お母さんも一緒でだいじょぶですから」


 「そんな急に。わかったよ、なんとか頑張ってみる」


 「じゃあそういうことで、また明日」


 と、李さんは電話を切った。

 なんだよ突然。

 僕はよくわからないまま東京から背負ってきたバックパックに下着を詰めはじめた。

 

 

 

 



  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ