会見3
話は続いた。
「ここまで変えるのですから従来の刑務所も変えていきたいと思っています。
少年法の理念を大人にも適用します。
つまり社会経験を得ながら懲役刑を与えます。
ここで再び出てくるのが東京です。
東京の何か所かに「村」を造ります。
そこで男女の区別をつけることなく生活してもらいます。
復興作業はしません、前職の経験か新しい職種を選んで労働をしてもらいます。
一見すると罰にならないかもしれませんね。
ですが刑務所内で世間と隔離しても反省や後悔はしません。我慢でしかないので後悔はしても反省も更生も期待できません。
人間性の向上には社会生活と知識が必要ですから、疑似社会のなかでそれらを得てもらいます。
東京にはあらゆる施設などが残っていますので、大概の仕事は可能でしょう。
村ですから、村内で使用できる仮想の通貨を発行して、見合った対価を報酬として与えます。
別に車を買うとか家を建てるとかの大金を必要としないので最低限の金額を設定します
周囲には犯罪者ばかりですから一般の人はいません。
その代わり凶悪犯罪者が復興作業をしているところを見ることになるでしょう。
再犯を繰り返したり凶悪犯罪を犯すと一生あの生活になるんだと目の当たりにすることになります。
これ以上の抑止効果はないかもしれません。
東京での生活に満足して再犯して戻ったとしても、復興作業に従事するのですから可能性は低いでしょう
もちろん足にはGPSを付けますが無理に外さない限り爆発しないものを付けます。
家庭を持つことも可能です。刑期が短いのであれば子供が小学生になるまでには日本に戻れることでしょう。
ですが刑期途中でトラブルを起こし満了が延びてしまい、子供が先に就学年齢を迎えるようなことになった場合は子供だけを東京から出して国で保護をします。
もちろん最初から戻れそうにない場合は結婚も出産も許可しません。ですが同居は可能です。
東京はアメリカが原発を数基以上の建設と福島の放射性廃棄物を地下深くに埋め、周辺に電気を大量に使う工場を集中して誘致する計画のようですから、そこでの労働の可能性もありますね。
日本から正規の専門労働者を派遣しますが、当然足りません。
東京の管理は全てアメリカ軍に任せていますから、向こうの善意で日本人の囚人を預かってもらい、有効に利用できる権利をもっていますので自由に使ってもらいます」
そういうことだ。アメリカ軍が東京にだけ適用する法律というかルールのようなものをつくろうとしている。
なにしろこういったことは前例がないことなので、既存の法律では対応できない恐れがある。
一応はルールブックを作成するが、軍がやることなので戦場で兵士が対応することに似ている。
基本的にその都度の状況を柔軟に鑑みて常識の範囲で判断していく。
東京をアメリカ軍に預ける見返りの一つに労働力の提供がある。
自国や他国の囚人、専門職をわざわざ輸送してまで確保する必要がない。
日本は囚人を放り出せる、アメリカは労働力を手に入れる。両得なやり方になる。
この案は、アメリカとの折衝のなかで生まれたものだ。
僕が思いついたことにしないように秘密にさせている。
大池さんもアメリカ軍が好意で提案してくれたと思っているはずだ。
何十年先になるかわからないが、東京の泥がすべて除去された時、災害時にあった建物、インフラは全て使い物にならないはずだ。
東京は災害前に高度経済成長期に突貫でつくった道路、橋、ガス水道などの耐用年数が切れかかっているので改修工事をやっていた。
つまり五十年ほどで入れ替えなければならないが、予算不足と人材不足、それに急増した住宅と車両、地下鉄の存在が工事を困難にさせていた。
今回の災害でその必要がなくなったわけだが、復興した時には新しく造らなければならない。
しかし、これまでと同じようなものができるかどうかはわからない。
科学や文明は想像できないほど発達しているだろうから、昔のSF小説のような世界になっているかもしれない。車は空を飛んだり、宇宙旅行が当たり前だったり。
だから結果的に復興のための作業労働は無駄になる可能性があるが、死刑囚や無期刑の囚人にとっては関係ない。その頃には生きていないのだから。
毎日、自分がやっていることが将来の日本人のためになると信じていれば贖罪になるだろう。
実際、除去された場所には短期刑の村を作るのだから無駄にはならない。
彼らと接触する機会はあるだろうから、逆に感謝されることになるかもしれない。
そして更に頑張だろうし、生きることへの見えない糧を得ることができる。
さて大池さんの話はこれで終わりではないから続きを聞こう。




