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新しい仲間

東京を離れた元北海道知事の大海は大阪に向かった。

 アメリカ軍のヘリコプターでの移動も慣れてきた。

 実質一時間ほどの搭乗で目的地に着いてしまうので、もうほかの移動手段では耐えられないかもしれないと思うくらいに。

 伊丹空港に着くとすぐ車に乗り込み、待ち合わせの場所へと向かった。

 そこで会う人物は初対面になる。

 大海は昔から一方的に知っているが向こうはどうかは知らない。

 年齢的には同世代になるはずだが圧倒的に有名な人物なので失礼をしてはいけないと思いながら車中で資料を読み返していた。

 

 待ち合わせのホテルに着いた。

 案内された最上階の部屋、相手はすでに待っているようだ。

 ドアを開け椅子にから立ち上がった人物と目が合った。

 お互い笑顔で近づいて握手を交わす。


 「お待ちしていました大海知事」


 「いやこちらこそお呼び立てをしておきながらお待たせしてしまい申し訳ない」


 「いや、僕のほうこそ落ち着かなく早々と出てきてしまったんですよ。

 なんかすごい話になりそうなことをマネージャーから聞いた時はドッキリかと思ったくらいです」


 「ドッキリですか、まあ確かにそう思われてもしかたないですね。僕もこうしてここにいますが、最初の頃は夢の中の出来ことじゃないかと思っていたことですから。

 まさに非現実的なことが始まっています」


 「そうですか、じゃあ僕も心してお話を伺おうとしますか。それじゃあ始めましょう」


 二人はスイートルームの中央に設えたテーブルに向かい合って座った。

 部屋の隅には秘書とマネージャーがメモを取りながら待機している。

 おもむろに改めて挨拶を交わす。


 「それでは来ていただきましてありがとうございます、大海です。

 知事ではなくなったのでそのまま名前で呼んでください」


 「そうですかそれでは改めて、佐倉 一生です。よろしくお願いします」


 見た目はとても若く見える。大海も年齢より若く見られる方だが佐倉は二十代と言っても納得するほど若い。


 「佐倉さんは現状どういった活動をしているのでしょうか。少し僕にもわかるような感じで教えてくれませんか」


 「そうですね、東京があの通りでテレビも何もかもなくなってしまい、大阪で新しい番組がすぐ企画されるわけでもなく、正直時間を持て余しています。

 昨年の緊急事態宣言時での自粛の時と比べ物にならないくらいです。

 たぶんどの芸能人もそうじゃないでしょうか。

 事務所もスタッフもバラバラになりましたから、元に戻るのは不可能じゃないかと思っています。

 新しく事務所を作るか、それとも僕は海外でも知名度がありますから、そっちに移住してしまおうかとも考えています。

 まだ決定ではありませんが、仲間や身内と話し合っている最中です」


 佐倉は解散したアイドルグループに所属していた。

 最近は冠番組を持つ司会者として活躍している。以前はニュース番組のキャスターも経験している知的タレントになる。確か有名私立大学も卒業しているはず。

 大海は佐倉が今話したことは事前に知っていた。知っていたからこその会談だ。


 「佐倉さん、率直に言いますが、一緒に日本を作っていきませんか。

 僕らは有志が集まって着々と準備を進めています。

 たぶんと言いますか、次の選挙は与党が関東の代議士の救済のために全国区比例に有力な候補者を立てていくと考えています。

 つまり知名度が高いほど有利なわけです。

 僕らのメンバーは関東の知事が中心になって新党を作ろうとしていますが、どうしても知名度が弱い。

 都知事はどうにか有名ですが、彼女だけでは足りません。

 僕も北海道では当選したでしょうが今はありません。

 そこで有名でなおかつ有能な候補者を立てたいと思っていました。

 実は以前から佐倉さんは政治家に向いているというか政治家になって欲しいと密かに思っていました。

 是非とも佐倉さんに立候補をお願いしたい。是非とも」


 大海は額をテーブルに擦り付けるように頭を下げた。

 佐倉は黙ってそれを見つめていた。


 「お話はわかりました。つまり未曽有の国難に僕のような未経験のタレントを代議士にしようということですね。

 でもそれはあまりにも国民をバカにした無責任なことじゃないでしょうか。

 いわゆるタレント候補ですよね。

 確かに僕なら票は集まることでしょう。うぬぼれでもなんでもなく事実そうなるでしょう。

 そうなると確実に当選してしまいます。

 未熟な僕が政界に入ってまともな活動ができるとは思いません。

 見てください今の政治構造を。

 利権と忖度が蔓延して、官僚も有権者も金に群がっている。

 後期高齢者の重鎮議員がしぶとく居座っている。

 僕と同じ世代の政治家はほとんどこれといったことをしていない。

 一人だけいましたか、元総理の息子さんが大臣になりましたね。トンチンカンなことばかり言って目立っていますが。

 国民の誰もが知っている悲しい現実です。

 もしまともな政府なら今頃コロナの感染は終息して打ち上げパーティーのように五輪を祝っていたことでしょう」


 佐倉は険しい表情をしながら語った。

 大海は「確かに」とうなずきながら聞いていた。


 「佐倉さんの言う通りです。思っていた通り全てを見通している方だ。

 確かに未経験な政治家は無力です。それはこれまでの日本だったからです。

 これからは未経験でも佐倉さんのように問題意識があり日本に不満のある意識が高い人が必要なんです。

 古い常識を壊し新しい常識を作っていくには、むしろ経験者の常識は邪魔でしかありません。

 つまり新しい日本には佐倉さんが絶対必要な人材なんですよ」


 大海はまっすぐ佐倉を見つめて話した。

 佐倉はその強いまなざしを避けるように一度視線を下に落とした。

 そして数秒後顔を上げて答えた。


 「わかりました大海さん。あなたがそこまで言うなら僕も腹をくくりました。

 やりましょう政治を、やりましょう新しい日本のために」


 佐倉の決断力の強さを浮かべた瞳を見た大海は、


 「ありがとうございます、ありがとうございます。

 これで日本の新しい未来の半分は確約されたことになります。

 本当にありがとうございます」


 大海は少し目が潤んだように見えた。それを佐倉は大海という男の正直さと信頼度の高さを知ったと思った。


 佐倉は疑問に思った。


 「なぜ大海さんは元知事ではありますが国政には関わっていなかったじゃないですか。

 どうしてこんな壮大なことを始めようと思ったんですか」


 もっともな質問だ。

 大海はこれまでの経緯を話した。ロシアの侵攻時のこと、京都で知事たちを集めたこと、東京で連合国との会談のこと、そして全てを一任されたこと。

 もちろん後ろ盾に連合国が何かにつけて協力してくれることも。

 その協力内容には法に触れるかどうか明言できない暗部なことが含まれていることも。


 「そうでしたか、それなら最初から説明してくれたら僕も悩まないで済んだじゃないですか」


 佐倉はちょっと愚痴っぽく冗談めかして言った。


 「いやそれじゃ佐倉さんをバカにしているようなものでしょう。ケツ持ちの大小で判断する人間だと思われますよ」

  

 大海は笑って答えた。


 「確かにそうでした ハハハ」


 二人は笑い、これから自分たちはどう行動していくべきか話あった。

 


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