アメリカの思惑
食事会形式にしたおかげで難しい問題も次々と解決していった。
話も弾んでいき腹の探り合いも軽い調子になっている。
「確かアメリカさんは都内に原発を造るそうで、どういった計画にになっているんですか」
中国代表が笑顔でそれでいて探るように訊いてきた。
アメリカ代表はグラスを置いて話しはじめた。
「ご存じかと思いますが、発電所の条件は冷却のための水源と港が必要、そして半径数百キロに人家が無いことです。
今の東京はまさにぴったりと当てはまる。建設地としては東京タワーの当たりが候補に挙がっていますがどうでしょうか。
合計十基以上、できるだけ多く建設しようと思っています。
そして発電した電気をロスの無い送電線距離で使えるようになります。
今までは僻地だったのでどうしても送電距離が長くなりましたが、関東周辺に工場を隙間なく誘致しておけば無駄なく使えるでしょう。
出来上がった製品も港が近いので輸送にも適しています。
名古屋の工場地帯が壊滅していますから、同じ場所につくるより東京に新規建造したほうがいいでしょう。
その方がお得な便宜は与えますよ。例えば関税をゼロにするとか電気料金を半額にするとか、新幹線を早急に復旧させて通勤も容易にするとかいろいろ個別に判断していこうかと思っています。
アメリカ側としての利益は発電した電気を関東以外に今まで以上に安価に供給します。節電とか電気料金とかを考える必要がなくなりますから日本としても得でしょう。
そして日本の電気事業はアメリカが独占することになりますが
もちろん化石燃料を使わないので環境にもやさしい脱炭素の目標もクリアできるでしょう。
水素とかハイブリッドではなく、全て電気で動く車にすることが可能です。
充電時間の問題はありますが、何も今までの常識にとらわれる必要はありません。
ガソリンスタンドのような充電ステーションは現実的ではありませんね。
駐車してれば自動的に充電される仕組みをあらゆるところに設置します。
家庭の駐車場、大型店舗の駐車場、一番いいのは信号待ちをしている時に充電されるのが理想ですね。もしくは道路全てが充電システムになっているとか。
発電所はたくさん建設するので、万が一事故があっても発電量には影響はないでしょう。
個々の発電所は事故対策として外壁を厚く覆い、最低限の人員でリモート操業をします。
人間が必要なのは点検時の目視くらいでしょう。それも最新の技術でチェックできるとおもいます。
このようなことは他の国では実現不可能です。広大なわが国でも無理ですね。
今回のことは大規模な実験といいますか試みになります。
アメリカが最近地下水が不足してきているのはご存じの事実でして、リサイクルなど水で洗浄してのリユースなどプラスチック消費を抑える対策のトレンドになっていますが、作物や飲料の用途にも必要なのに足りません。
ガラス容器や金属容器をつくるのにも電気は大量に使用します。それを化石燃料で発電してはプラスチックをいくら減らしても意味がないのです。
化石燃料は製鉄など限られた用途にしておけば問題ありません。
それに石油消費を大幅に抑えれば中東の国々とのパワーバランスの武器になります。
実はアメリカが関東を求めるのは水資源が一番の理由になります。
日本は豊富な水資源がありますが、ほとんどはあっというまに海に流れていってしまいます。
なんてもったいない。
地下水や川の水など一滴残らず回収してタンカーで本国に運びます。
河川は海の栄養源になることは承知していますが、噴火によって陸も東京湾も灰の影響で生物は今後数十年は回復しないでしょう。
中東の国々は石油は売るほどありますが真水は輸入しているのです。
ですから今後は水が世界の勢力を決めるかもしれません。
豊富な水資源を持っている国は日本以外に南米のアマゾンくらいです。
日本の未来にとって有効な資源となるでしょう」
集まった面々はそこまでは考えていなかったようで、
「それに中国も関わってもよろしいですかね」
「ロシアもお願いしたい」
皆が急に色めきだった。
「そうですね、もちろん大歓迎ですよ。詳しくは計画が実行されてからその時の実情で割り振りを決めていきましょう。
そうそう言い忘れましたが、FUKUSIMAの放射性廃棄物と水は埋没した地下鉄を利用して埋めてしまいます。たとえ東京湾に漏れたとしても日本政府は影響がないとお墨付きを与えたものですから安全でしょう。
ついでに使用済み核燃料も埋めてしまいます。プルサーマルなど非現実的ですから」
全員がアメリカ代表の話は壮大だが実現不可能ではないと信じた。
もちろん各国が協力したほうが確実だし自国にも利益がある話。
廃棄された東京がリサイクルされることになった。




