東京ベース
先月まで皇居だったところにアメリカ軍の基地がある。
『東京ベース』と言われて、関東一帯をここで管理している。
敷地も広く天皇陛下が住まわれたところであって建造物もすばらしい。
お堀は灰が流れ込んでいるので水は溜まっていないが溢れるところまではいっていない。
門が何か所もあるので車両の出入りに都合がいい施設になっている。
周囲の道路は重機をヘリで運び入れたので綺麗に整備されているが、せいぜい東京駅までしか届いていない。
「京都会議」の翌日の昼、東京ベースに四機のヘリコプターが次々と着陸した。
それぞれが九州から来た中国の代表、沖縄から来た台湾代表、北海道から来たロシア代表、そして京都から来た日本代表の四人だった。
迎えたのは東京ベースのアメリカ軍代表。
五人は食堂を兼ねたような広い部屋に集まった。中央に約二メートル間隔で五脚の椅子と大きな丸テーブルが置かれている。
それぞれがおもむろに椅子に座り、給仕にドリンクを注がれる。
アメリカ軍代表がグラスを手に取り、
「みなさんとは二週間ぶりになりますね、再会に乾杯!」と言って掲げた。
全員が一斉にグラスを掲げて口をつけた。
「さて今日は正式な会合ではなく、いわゆる親睦を兼ねた気安い昼食会としてセッティングしましたから楽にしてください。
私は日本大使館勤務経験のあるCIA出身ですから日本語は一級程度のレベルですし、他のみなさんも同じレベルと聞いております。
前回のように正式なものですと共通語の英語を各国の言語に訳して文書を作成しましたが今回はそんな必要はありません。
日本代表とも楽に通じ会いたいと思っていますので、日本語で進めたいと思いますがいかがでしょうか」
他の代表達も「問題ない」「日本で日本語は久しぶりだ」「得意なくらいです」と。
「皆さんありがとうございます、助かります」
日本代表の青年は頭を下げた。
「実はアメリカさんを除いた三人は昔からの知り合いなんですよ。直接会うのは数年ぶりになりますかね」
中国代表が台湾、ロシア代表に顔を向けた。その二人はお互いに目配せをして片手を挙げた。
「たしかロシアさんと日本さんは最近仲良くなったと聞きましたが」
中国代表が日本代表に話を振る。日本代表は笑顔で答える。
「実は北海道侵攻時に直接対応してくれていたのです。この侵攻の本意といいますか裏事情を日本の誰よりも早く知ることができたのも彼のおかげです」
「そうでしたか、だからあなたが日本代表としてここにいるわけなんですね。私たちもあなたのような方で本当に良かった。
高齢の政治家が現れたら引っ掻き回され、まとまるものもまとまらなかったでしょう。
まあ私達もけっして若くはないですが、七十五歳以上ではありませんから。
たしか日本では高齢者施設に入居する際に保証人といいますか緊急連絡先で七十五歳以上ですと認められないようですが、日本の現役の政治家はそういった年齢の男性ばかりじゃですか。
国民には高齢者の権利は与えなく自分らは例外だという日本の政治家では我々が考えていることは到底理化できないことでしょう」
「私なんか若いといっても四十歳になりますから、ただ運よく政権中央のベテラン政治家に気に入られ、党の看板として役に立つと思われただけです」
「いやいやご謙遜を、知っていますよ、大物政治家の息子で見た目がいいだけでタレントと結婚しトンチンカンな発言ばかりして呆れられている若い政治家がいますけど、彼に比べたらあなたは筋が通っているうえに決断と行動が早く的確だということを」
日本代表の青年は苦笑いをしただけだったが否定はしなかった。
アメリカ代表が話題を変えた。
「さて食事が来ましたから食べながら話をつづけましょう。
これからの日本と我々の役割を大まかですが詰めていきましょう。
もちろんここで決定ではありませんから、いろいろな案を遠慮なくだしてください」
アメリカ代表が話を勧めた。
「東京都と神奈川の一部、埼玉など灰で埋まってしまった地域はアメリカ軍が責任をもって管理しますが、まだ全ての都民が移動してはいません。
そうですね、病院や施設は当分の間はどうにかこちらで維持しますが限度はあります。
なにせ水道が来ないですし、食料の配布も大量に毎日容易しなければなりません。
しかもメニュー内容に気を使いますから余計に負担となっています。
アメリカ軍の装甲車でさえ簡単には移動できない道路状況ですから、全てヘリでの落下配布が主流です。
もちろん着陸できるスペースがあるところはそうしますが、大病院の屋上にあるようなドクターヘリの発着場は着陸に時間がかかるんですよ。
目視してから三十分くらいはかかるでしょうか。効率が悪すぎる。
ですから長くても三か月以内には完了させるようにしますが、受け入れ先になっている近隣の施設が満床なので、リレー方式で北海道、九州を含めた全国に送ろうかと考えています。
みなさんどうでしょうかね」
「ロシアとしても人道的なことは全面的に協力します。そうですね、仙台か三沢まで送ってくれればどうにか対処は可能かと思います」
「中国としては船がたくさん用意できますから大船団を東京湾に向かわせます。
今現在の我が国が保有している艦船はアメリカ軍より多いですから余裕で回せるとおもいます」
「日本としてもありがたいですね。僕の実家は東京でして、実は親戚に対象都民がいるんですよ。
できればそれぞれの希望をとって、どこに移されたいか調整してくださるとありがたいですね」
「それじゃあアメリカ軍としては現場での調整を主にして、運んでくださるのはロシアと中国でお願いします。
途中何か問題が起きればその都度連絡をしてください」
こうして日本のこれからが決まっていくのであった。




