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道程2

 僕たち丸山家の人々は三日目にしてようやく埼玉の大宮まで進んだ。

 ここまで来ると都内に比べ道の状態はいい。

 車は走ってはいるが未舗装の道がぬかるんだような状態なので各所にスタックしていたりブレーキが効かなかったりハンドル操作が危なっかしい車が多い。

 ほとんどの車が二輪駆動だろうし、とうぜん夏タイヤになる。

 これがスタッドレスなどの冬タイヤやスバルやボルボなら大丈夫だったろう。

 ガソリンスタンドは開いているが価格がおよそ三倍になっている。一リッター当たり五百円以上もする。

 なんでも太平洋側からの輸送ルートが全滅で、タンクローリーも少なく関西から日本海経由の山越えルートのみで、製油設備も関西圏しか稼働しておらず慢性的に不足しているようだ。

 自家用車に家財道具を載せていこうというのも理解はできるが、いったんスタックすると絶望的になるのではないかと思うが。

 インフラはほとんど復旧しているがやはり水道は時間がかかるようだ。

 この辺は都内脱出の主要道らしく、道沿いに無料のスマホ充電とWi-Fiが置かれていた。

 休憩所も兼ねているようで、簡易な炊き出しも行われていた。

 どこも数十人くらいが集まっていたし、数百メートル間隔に設置されていたので、休み休み移動ができてありがたい。テントも設置されている。

 いろんな情報が得られることで休憩所をハシゴする人もいるようだ。

 僕らも情報の真偽を確認するために何人にも訊ねまわった。

 噂の域を出ないようなものから、嘘だろと言いたくなるようなこと。

 直接ネットに繋げてもデマで溢れている可能性もある。

 報道も情報ソースが不明なようで、断言するような口調ではなかった。

 ただ雰囲気からすると、日本は相当すごいことになっていると伝わった。

 整理してみると、まず僕らがいた東京は自衛隊とアメリカ軍が警察権を行使して都民を半強制的に移動させていると。

 援助物資を運ぶのも与えるのもままならずず、それならできる地域まで行ってもらおうということだ。

 賢明だろう。待っているより自分から動く方がいい。

 ただし困難な家庭などは自衛隊とアメリア軍が途中までヘリでピストン輸送をしているようだ。

 もちろん身の回りの貴重品しか持ち出せないが仕方がない。

 その場所では生きていけないのだから。

 

 北海道がロシアに侵略されたことも知った。

 まさかな事実だった。最初はデマだと思ったが本当のようだ。

 そのすきに中国と朝鮮が侵攻してきたことも。

 政府は大阪に移ったが省庁は機能しておらず、内閣どころか代議士の所在も不確かなようだ。

 つまり事実上日本は無政府状態になっている。

 でも政府が無いということは実感しない。

 皆が自らの意思で秩序を保っている日常しか見えない。

 むしろ今の政府はバブル崩壊以降、国を混乱させてきた張本人なのだから、無くなってすっきりしている。

 特に昨年からの失態続き。日本人ということにがっかりしたことばかりだった。

 自分らが選挙で選んだ結果なのだから自業自得、今更なこと。

 日本は大陸の辺境にある島国だからか、古来から外国の影響でそのつど歴史が動いてきた。

 卑弥呼の時代から戦後を経て現在までずっと続いてきている。

 辺境だからこそ大陸を追われた人々や好奇心旺盛なタイプが集まった。

 辺境だからこそ独自の文化が生まれ育った。

 外国からしたら日本は宇宙人と同じ扱いなのは昔からの伝統となっている。

 今回も外国からのきっかけで新しく動くようだ。

 どんな未来が待っているかはわからないが、いつも通り明日も生きていたら生きてみようと思った。


 大宮では銀行ATMが使えるようになっていて、できるだけ多めに現金を引き出した。初めての海外旅行者のように各自に分散して下着の下などに隠して持ち歩くことにした。

 やはり現金が一番役に立つ。

 まてよ、日本が無政府になっているが、この金は有効なのだろうか、と一瞬考えたが問題なく使えたので大丈夫そうだ。

 よく考えれば、銀行から降ろしたのだから安心なはず。


 新幹線は動いていないが東北本線が動いている。しかしディーゼル車両のみで運行ダイヤも田舎のバス並の本数しかない。

 金はあるんだから徒歩で行く必要はない。全員が仙台まで乗ることにした。


 駅のエントランスは疲れた表情の人々で溢れていた。僕らも同じように見られているんだろう。

 乗車券は普通の値段だったが、券売機ではなく駅員が直接対応して販売していた。もちろん現金で。両替も手作業で行っていた。

 乗車ホームは貨物線になっていた。つまり地面から階段を上るように乗り込む。海外では珍しくないが日本ではありえない。

 列車は本数は少ないが客車がやたら多い。一度に大量輸送するのだろう。

 丸山家の子供たちは地方の在来線に乗るのが初めてらしく、しかも電車でない気動車。

 しかも先頭から後方まで先がどこまであるかわからないほどはある長い車列。

 男の子の秀明君は興味深々なようで、硬い四人がけの対面シートに座ってからは落ち着かない様子になっている。

 

 「どうよ秀明君、電車じゃないよ気動車だよ。田舎で電化されていない線路でしか走っていないから珍しいよ。

 僕が住んだことがある北海道なんか札幌圏以外は全部そうだったから珍しくないけどね。

 それも単線の1両だからバスのような感じだったな。

 そうそう、札幌から本州に向かう貨物列車なんかはこれよりもっと長いから、踏切で運悪く停まると開くまでが長い長い。まあほとんど深夜だけなんだけどね」


 「すごいよ、こんな長い電車じゃなかった列車に乗ったことないよ。新幹線や山の手線も長いけどこんなに長いのは初めてだよ」

 

 「だろうだろう、ここまで歩いてくるのは大変だったけど、こういうことでも起きない限りこんな経験できないよね。

 一時間ほどで発車するから、通路を後ろまで歩いて行ってみたらいい。ただし他の乗客の邪魔にならないようにね」


 「わかった、お姉ちゃん一緒に行こうよ」


 姉の手を引っ張り二人して探検しに行った。残った僕と丸山さんは子供抜きでしかできない話を始めた。


 

 

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