トウキョウ原発
大竹は大海とピーターを連れてトウキョウ原子力発電所の建設現場に来ていた。
メンバーはこの三人だけではなく、連合国の関係者が各国から数人以上と施工企業八社からそれぞれ二名が集まっていた。
なんだかんだ総勢五十名ほどのツアーメンバーとして訪れている。
施工企業が二基ずつ計十六基の原発をつくるが、今回の視察は日本企業の三社だけになっている。
外国企業はロシア、フランス、韓国、とアメリカからだが、アメリカとフランスは日本企業と同じグループなので日本側になっている。
建設場所は旧東京の二十三区と近隣自治体との境界を基準とし、水源と高速道路や鉄道輸送の都合で選定された。
当初は地下鉄の駅の中で候補地を選んでいたが、見込んでいた予算より安く建設できる目途がたったので倍の建設となり、二基を建造できるそれなりの土地が必要となったことで変更になった。
それぞれの原発に供給先の地域が割り当てられているが、全て合わせても日本全体の三分の一程度にしかならない。
震災後に稼働停止になっている原発は現在も止めている。十年以上も稼働していない原子炉を再稼働することはリスクがあるうえに寿命もあとわずかだからだ。
このまま廃炉になるだろうが、廃棄物は全てトウキョウの地下に永久保管することになる。
今回建設する原発は一二基だが、四十年後の廃炉に向けて増設を続けていく。
最初の原発が廃炉になる頃に新しい原発が稼働するサイクルになる。
廃炉が完了する頃には二巡しているはずだ。
その頃のトウキョウには隙間なく原発が建っていることだろう。
原子炉と冷却は地下に建設し、事故の際は蓋をするように対処する。
廃炉が完了した際も同様にしていく。
建設場所が生活圏から遠いことで賠償保険が格安になっていることもトウキョウに建てるメリットになっている。しかも廃棄物保管もすぐ近くにある。
セキュリティ面でも最初から軍施設並みなので別途の費用もかからない。
ついでに使える施設が残っているので世界中から研究者を集めた街を作ることも簡単に用意できる。
大量に出る残土はトウキョウでの作物栽培にために灰の上から敷き詰め再利用する。
これらのサイクルが何百年続けられるか、計算上は五百年ほどにしかならない。
全ての土地を使い切ったときに関東平野は文字通り平らな平原が出来上がっている。
ただし富士山の噴火や地震は想定外での話だ。
しかし人間の生活圏でなくなっている関東にいくら灰が積もろうが麻痺するのはせいぜい長くて数か月ほどであろう。
数百年後には核分裂以外のエネルギーを得ているかもしれない、宇宙に進出しているかもしれない。
それとも地球全てが放射能汚染されて生物が絶滅しているか、感染症で人類だけが激減して文明が後退している可能性もある。
「なんかパット見は普通の工場にしか見えないですね」
大海は見たままの感想を言った。
「重要な施設は全て地下にありますから、地上部は制御関係しかありません」
同行している日本側の施工企業H製作所の担当者が答えた。
「ということは煙突のようなものも地下にあるんですか」
「そのとおりです、全ては廃炉作業を想定して設計をしています。できるだけ短期間に終了させるようにしませんと経費が膨らみますから」
核燃料などを取り除いた残りの施設はそのまま埋めるので、地上部はせいぜい三階になっている。
「近隣には施設職員はもちろん、各電力会社の取締役が交代で住んでいただく住宅も建設しております。安全性が担保されている証として国民の皆さんも納得されるでしょう。
コンビニや生活に必要なものはアメリカ軍基地を参考に揃えていますし、それらの労働力も電力会社の社員です」
工事作業員のための施設はすでに揃っている。たまに皇居周辺のアメリカ軍施設を利用することで大概のものはまかなえている。
「電気エネルギーが無い人類社会は絶対に存続できないまで依存してしまいましたね。人類滅亡は戦争や隕石なんかより世界中の発電所を全て破壊したほうが簡単ですかね、ゼロから電気を創るとなると理科の実験レベルから始めないといけないでしょうし」
ピーターが大竹にそう言って話しかけた。
「ほんとそうだね、スマホや便利家電も電気が無いとどうしようもないし、冷房が無くて熱中症で亡くなったり薬や酸素も作れない、輸血もそうだな。
工場も稼働できないし鉄も作れない衣料品も作れなくなるからアダムとイブのようになるかもな。
でも便利な文明社会になって数千年しか経っていないと考えれば逆に数千年後には、いやもっと早く回復する可能性があるな、だから別にそうなってもいいんじゃないかな」
「そうですね、戦争も殴り合いだけになるでしょうし。ある意味平和な地球になるかもしれませんね」
「そうそう、人類なんて地球上の生物の一つに過ぎないんだから」
「じゃあ遠い未来のために現在の人類が化石になって発見されたときの為に情報を一緒に残しておくのもいいかもしれませんね」
「おお、そりゃいいアイデアだな、宇宙人が見てもわかるようにしてみるか」
それから二人は時間があったらその計画のことばかり話し合うようになった。
そこに大海と佐倉たちが加わることで話が膨れあがり国レベルで流行ることになるのは少し先のことになる。
ちょうど100話で一区切りしました休止ということでいずれ復活します 2000字程度の短編をちょくちょく書いています




