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恋は、時にはやってくる。時には運ばれてくる。
リリリリリ……
スマホが抑揚のあるリズムで音を鳴らす。
反応的に周囲に危険がないことを確認し、漕いでいた足を止め自転車を停車させる。
自転車に取りつけている、スマホからは相変わらず一定の間隔で音を放っている。
画面にはデリバリーの文字。
「遠いな……」
俺は今、デリバリー業をやっている。
商品をお店で受け取り、それぞれ注文した人の自宅へと出向き商品を配達する仕事だ。
元から自転車に乗るのが好きだったということと、好きな時間に働くことができるというのが魅力的で小遣い稼ぎにでもなればと最近はじめた。
スマホのデリバリーボタンを押すと、商品を受け取るお店までの道が表示される。
つまり、お客さんから商品の注文があったということだ。
注文を受けるとお店の近くにいる、僕らのような配達中の人間を自動的に探知して、知らせてくれるという仕組みだ。よくできているものだなと感心する。
マップアプリによると、お店まで約10分。
再びペダルに足を乗せ、踏み込んだ。