5.ラフワー子爵家にて
今日、少し体を動かそうと思って外に出るとバスケのコートに3密を防ぐようにと貼り紙がありました。9月入学なども囁かれていますが次、学校が始まるのはいつになることやら…
先行きの見えない毎日に徐々に不安になってきます
敷地内に入ると母上は庭でお茶を飲んでいた。
「お帰りなさい。あなた、シムレクトはどうでしたか?」
「うん、それがだな…」
「そうでしたか…、残念ですが…」
「いやいや、魔法適正あったんだが、歴史上初の全属性適性者だった。」
「へっ?」
母上が間の抜けたような顔で僕を見る。いや、母上からそんな声が出るとは…。
「そ、そうでしたか。それはよかったですね、シムレクト。」
正直良いのか悪いのかようわからないが、とりあえずお礼を言う。
「ありがとうございます、母上。」
「まぁ、マリーン、君も聞きたいことは山ほどあるだろうが、ジョナスから夕食に招待されたので、今から子爵邸に向かう。支度を済ませてくれ。」
「分かりました。その夕食会はラフワー家と当家のみの参加ですか?」
「そうだ。」
「では、支度して参りますね。」
10分ほどで母上の支度が終わり、先ほどの馬車に乗ってラフワー子爵邸に向かう。
父上とジョナス様は昔馴染みらしく通常は主従関係にあるので敬意を示す必要があるが、今回のパーティーはあくまでも友人としての招待。だから、父上も先ほどジョナス様を呼び捨てになさったのだ。母上が招待客を尋ねたのもそうだ。もし、これが正式な社交パーティーならば、正装で行く必要がある。まぁ、正式なものなら少なくとも1週間前には招待状が届くので念入りに準備することができるのだが。今日の母上は簡素なドレスを身につけてアクセサリーも簡単なイヤリングしかつけていない。
ラフワー子爵邸に到着。ラフワー子爵家家令で父上の秘書も勤めている好々爺マルク=シャルセンさんが出迎えてくれる。
「カムリール様、マリーン様、シムレクト様、ようこそ、ラフワー筆頭次席子爵邸へ。旦那様方がホールにてお待ちでございます。どうぞこちらへ。」
「マルク、ありがとう。」
「いえ、私は自分の職務を果たしているだけでございます。」
僕たちはホールに案内された。
「ようこそ、サーティカン準男爵家当主カムリール殿、マリーン夫人、シムレクト殿」
「お招きいただき光栄です。ラフワー筆頭次席子爵家当主ジョナス閣下、ラミナス夫人、ボーダン殿、レーナス嬢。」
今回は友人としての招待だが、両家とも貴族なので、貴族間の定型の挨拶を交わす。
「やぁ、いらっしゃい、カム。それにしても先ほどの結果は凄かったなぁ。まさか、シムが全属性適性者だったなんて。」
「僕も同じことを思ったよ、ジョナス。うちは魔法適性者が出ること自体稀なのに、歴史上初の存在にシムレクトがなるとはなぁ。」
「久しぶりですわね、マリ。お身体の調子はいかが?」
「本当久しぶりですね、ラミナス。私は元気ですわ。あなたはどうです?」
「シム、おめでとう。君の友人として僕も鼻が高いよ。」
「シム兄様、おめでとうございます。」
ボーダンは2人だけの時は砕けた口調になるが、両親がいる時には真面目口調になる。そして、ボーダンの妹であるレーナスは僕たちの一つ年下だが、兄の幼馴染みである僕のことも「兄」と呼んでくれる。兄弟が前世も今世もいない僕にとってはとても嬉しいことだ。
「ありがとう、ボーダン。お互い諸島学院でも頑張ろう。」
「そうだな!」
それぞれが思い思いに話す。楽しい時はあっという間に過ぎて行った。
「そろそろ、食事にしよう。折角の祝いの席の料理が冷めてしまっては勿体ない。」
ジョナス様のその発言で全員ダイニングに移動し席につく。
「では、改めて、シムレクトの歴史上初の快挙を祝って、乾杯〜!」
「乾杯〜!」
こうして楽しい夕食会が始まった。
ふぅ〜、美味しかったけどもうお腹いっぱいだ。にしても、高々友人の息子の祝いごとの食事会でこんなに良いものを食べさせてもらっても良いのだろうか?
「シム、僕の部屋で話そう!」
そう言ってボーダンは僕の手を引いて自室へと向かっていく。僕は慌ててその場でジョナス様に一礼してボーダンの後について行く。
「子供同士が仲睦まじいのは、嬉しいことだな。」
「同意だな。」
子供達の背中を見送った後、2人の貴族は酒を酌み交わしながら、かつての自分たちの姿を先ほどの背中に重ねていた。
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